列強国の意地2前半
長すぎたので、前半後半に分割します。後半は、今日中に投稿予定です。
先日漫画も更新されました。是非コミックウォーカーか、ニコニコ漫画でご覧ください。
ニコニコ漫画のコメント欄も吹き出すほど面白いので、是非見ていただいて、コメントしてくれると嬉しいです。
日本国 首都 東京 防衛省
第1護衛艦群からの報告を聞いていた防衛省幹部は、三津木と話をしていた。
「まったく、信じられん。空自による攻撃で簡単に撃破できる相手に艦隊決戦。しかも単艦で突入するなんて……」
戦争の常識とはかけ離れた神聖ミリシアル帝国艦隊からの申し出に、防衛省幹部は困惑する。
世界で多くの影響力を持つ帝国の意思は強いため、日本国政府も外交での問題として捕らえ、帝国の意向になるべく沿うような形をとるとの方向性を出した。
「神聖ミリシアル帝国本国の意向があると聞いています。
彼等はグラ・バルカス帝国の戦力は知っているはず……。
おそらく相当な自信があるのでしょう。
神聖ミリシアルの新鋭戦艦の戦力を見定める良い機会、護衛艦を1隻観測用に付けられないか、交渉してみましょう。
本来隠すべき奥の手でしょうが、どうも我々に見せつけたいように思えますし、可能であれば後ほどしっかりと分析したいですね」
防衛省は、護衛艦1隻の同行を要請した。
◆◆◆
ムー大陸西側海域 神聖ミリシアル帝国 混成魔導艦隊デス・バール 旗艦
オリハルコン級魔導戦艦コスモ
「司令、日本側から、観測用に1隻の護衛艦が同行したいと連絡が入っております」
艦隊司令タキオンは眉間にしわを寄せる。
「……今回は本国からも、日本へ強さを見せつけるように指示が出ている。
しかし、『日本国がいたから勝てた』と、他国に判断される可能性も排除したい。
日本へ、
本戦いは決して手を出さない。
他国に対しても、本戦闘に日本国は手を出していないと公言する。
50km以上離れる、この3点が守れるならば1隻のみなら来ても良いと伝えろ」
「はっ!!」
タキオンの言は日本側へ伝えられた。
当然目視で艦隊自体が見える距離ではないが、護衛艦は各種観測機器を備えており、どんな戦闘が行われているのかは50km程度であれば手に取るように解る。
連絡を受けた日本国では、自衛隊から政府へ迅速に情報伝達され、日本側も了承する。
海上自衛隊第1護衛隊群 第5護衛隊 イージス艦こんごう 1隻が戦艦コスモの50km後ろを追尾する事となった。
魔導戦艦コスモ 艦橋
「イレイザ艦長!!」
タキオンは艦長イレイザに話しかける。
「はい」
タキオンはにやりと笑う。
「………やっと雪辱を果たす事が出来るな」
思いを巡らす。
神聖ミリシアル帝国は最強だった。
把握されている世界の内、3つの文明圏の頂点に立ち、古を魔法帝国の研究を加速した結果、他国と隔絶した力を持つに至る。
蛮族が戦をしかけてくる事はあったが、連戦連勝を重ね、国際社会で圧倒的な地位を築いていった。
しかし、西の大地より転移国家、グラ・バルカス帝国が現れる。
彼等はあっさりと第2文明圏列強レイフォルを降し、瞬く間に支配領域を広げていった。 あげくの果てに、神聖ミリシアル帝国の主催する世界会議を奇襲、我が国最強の艦隊であった第零式魔導艦隊でさえ相打ちとなり、実質的に破れ去った。
国の威信を駆けた反攻作戦は古代兵器まで投入するも失敗。
グラ・バルカス帝国は誰もが勝てない相手だと考え始める国も現れた。
そんな不安が蔓延する中、東の島国、日本国が現れてグラ・バルカス帝国に連戦連勝し、他国の不安を払拭、期待と信頼を一気に集めた。
多くの国は神聖ミリシアル帝国に期待しなくなっていき、日本国の存在感は日々強くなるばかりである。
そんな中、帝国で最新鋭艦であるオリハルコン級戦艦が完成した。
オリハルコン合金を使用したそれは船体から兵器に至るまで酷く高価であり、艦隊が買えるのでは無いかと思われるほどの金が投入された。
連敗と国家の威信低下が軍と経済界、そして皇帝陛下を動かし、従来案より遙かに強化されるに至る。
繰り返される試験の中、その強さは海軍将校の度肝を抜き、絶対の信頼を得た。
当初の想定性能よりも大幅に強化されたオリハルコン級戦艦は、神聖ミリシアル帝国の期待を背負って本作戦に投入される事となる。
「イレイザ艦長、10隻もの敵が相手だが……出来るな?」
「はい。このオリハルコン級魔導戦艦の力は今までの戦艦を圧倒しております。
必ずや圧倒的勝利を皇帝陛下にお届けし、そこで見ている日本国の度肝を抜いてやります」
「楽しみだな」
神聖ミリシアル帝国の期待を背負い、魔導戦艦コスモは西へ向かう。
◆◆◆
グラ・バルカス帝国 中央第2艦隊 旗艦 オリオン級戦艦 コルネフォロス
艦隊司令アケイルは残存艦隊を見渡し、歯ぎしりをしていた。
普段は美しい海と艦隊の優美さにほれぼれとするところだが、先ほどまでの戦闘とこれから戦うであろう相手の事を考えると美しい海も、天国へ誘う魔の海のように見える。
艦隊としては戦艦3、巡洋艦4、駆逐艦4を残しているとはいえ、空母は壊滅しているため、空母機動部隊としての戦力は損失したと言って差し支えない。
さらに、駆逐艦1隻を沈められた艦を救助用に残してきたため、実質的戦力は10隻。
対して敵は日本国と神聖ミリシアル帝国の連合艦隊33隻。
今までの日本国軍の強さを考えると戦力比は明らかだった。
死の行軍……。
「お……おのれ……」
万全の体制ならば良いが、戦力を欠いた状態での行軍。
特に日本国の誘導弾を撃たれたらあっさりと終わる現実に、アケイルは怒りと恐怖がこみ上げて来ていた。
「失礼します。敵から通信が入っております」
「通信……だと??」
かつて敵空中要塞と戦った者達が、戦いの前に通信が来たと言っていた事がある。
返信するとこちらの位置を晒してしまう可能性があったため、無視することにした。
繰り返される敵からの無線は、やがてこちらの座標を特定し、そこを航行しているグラ・バルカス帝国海軍10隻とまでの注釈まで着く。
こちらの位置が完全に特定されており、話しを聞くことにする。
「……通信をつなげ」
「はっ!!」
戦場における無線のやりとり。つくづく異世界だと考えながら、艦隊司令アケイルは通信を開始する。
「私はグラ・バルカス帝国中央第2艦隊 艦隊司令アケイルである。
何の用だ?」
アケイルはぶっきらぼうに話す。
『やっと繋がったか。
私は神聖ミリシアル帝国 混成魔導艦隊デス・バール 艦隊司令タキオンである。
航行中のグラ・バルカス帝国艦隊に告げる。
我とお前たちの戦力比は明らかである。艦隊ごと降伏せよ。
降伏せぬ場合、逃げる事すら許さずにお前たちを全滅させる。
一人残らずな……これは神聖ミリシアル帝国皇帝陛下から、お前たちへの最後の御慈悲だ』
戦った後の降伏は許さないという強い意思表示だった。
「貴様らの艦隊に、我が栄えあるグラ・バルカス帝国艦隊が負けるとでも思っているのか?
日本との混成艦隊が相手であっても、我らはお前たちが思っているほど簡単に負ける事はない!!」
『何を言っている?日本国はこの海戦に参加しない。神聖ミリシアル帝国のみで簡単に片が付く程貴様らとは、どうしようもない戦力比が生まれてしまったのだ』
日本国は参加しない。この言葉にコルネフォロスの艦橋はざわついた。
敵は何故か神聖ミリシアル帝国艦隊だけで戦おうと申し立てている。
それが本当か嘘かは解らないが、本当ならば勝機が見えてくる。
「神聖ミリシアル帝国艦隊のみで戦うだと?日本に泣きつかなくて良いのか?
負けそうになったらすぐに泣きついて、日本に助けを求めるのだろう?
全世界に、負けそうになったら日本に助けを求めましょうと宣言してはどうだね?」
アケイルは神聖ミリシアル帝国のプライドを刺激し、挑発した。
日本国さえ参戦させなければ、例え数で向こうが圧倒していたとしても、神聖ミリシアル帝国艦隊程度ならば戦える。
決して舐めてはならないが、絶望するほどの相手ではない。
それなりにダメージを与えたら、撤退しても本国から文句は出ないだろう。
生き残る道へ艦隊を導くため、あえて敵のプライドを刺激する。
『挑発しているつもりか?阿呆め、お前たち如きに帝国艦隊は出ない』
「何だと?」
意味不明な言動にアケイルは不審に思う。
『我が国、最新鋭艦かつ混成魔導艦隊旗艦である、このオリハルコン級魔導戦艦コスモたった1隻でお前たち如きの相手は十分だと言っている。
繰り返す。この1隻だけでお前たちの艦隊をたたきつぶすには十分なのだ。
我が神聖ミリシアル帝国の技術力を身をもって知る事になるかもしれない事を幸運に思え。
コスモ……これは降伏せぬ場合、貴様らを殺す事になる超戦艦の名前だ。
死の寸前まで覚えておけ』
艦隊司令アケイルは一瞬何を言っているのか理解出来ずに艦長イライガを向く。
「イライガ艦長、私は敵の行動が全く理解出来ないのだが、敵は狂ってしまったのか?」
「たったの1隻で我が艦隊10隻に突っ込んでくるなど、いくら単艦として強力であったとしても自殺行為です。
しかも、艦隊が後ろに控えているにも関わらず、旗艦が突っ込むなど信じられません」
「敵は上司から責められすぎて狂ってしまっているのか?」
グラ・バルカス帝国の常識からもかけ離れた行動に、彼等は理由を理解出来ずに議論を続ける。
「敵艦隊が参戦すれば、卑怯者と国際社会に発信するとしよう。
仮に1隻で本当に来るならば、これは好機だ!!!」
艦隊司令アケイルは、無線を手にする。
「このグラ・バルカス帝国艦隊に、1艦での突入や潔し!!
降伏は無い。
我が帝国の強さを誤認したことを悔いて死ね!!!」
『お前たちはやり過ぎた。
我らに殺される事を光栄に思え。
この最新鋭かつ超戦艦に負けたのであれば、後世まで言い訳が効くだろう。
我が艦と戦った事をあの世で自慢すると良い』
通信は途切れる。
グラ・バルカス帝国艦隊は艦隊決戦に向けて準備を開始するのだった。
◆◆◆
神聖ミリシアル帝国 オリハルコン級魔導戦艦 コスモ
「総員戦闘配置、総員戦闘配置」
無機質な女性オペレーターの声が艦橋に響いた。
遙か未来を思わせる艦橋には、様々なディスプレイが何も無いはずの空間に映し出される。
「魔導機関出力安定、魔光呪発式2段燃焼サイクルエンジン起動」
各システムのチェックが行われる。
「装甲強化システム異常なし」
「主砲管制システム異常なし」
「誘導魔光弾発射筒魔力注入システム異常なし」
「誘導魔光弾管制システム異常なし」
「魔法力電力変換システム異常なし。誘導電波準備完了」
異常なしの号令と共に、艦長席前の各システムを表示した部分が青く輝く。
「敵との距離、100kmを切りました」
艦長イレイザは海の先を睨む。
「『天の火』の準備を行え!!目標、敵戦艦3!!」
「了解、対艦誘導魔光弾『天の火』、3発発射準備開始。
発射筒への魔力回路開放、コアへ魔力充電開始。
魔法種別、電1、空2、炎3、爆4……。
エネルギー充填70%……80%……100%!!!」
誘導魔光弾を示す光点が準備完了の緑色に光り輝く。
「対艦式誘導魔光弾でこのエネルギー充填速度とは……なんという出力か!!」
主砲や装甲強化に比べても多くの魔力を使用する誘導魔光弾。
艦長の横に立つタキオンは充填速度の速さに驚きの声を上げる。
「エネルギー充填完了!!続いて対象座標入力……入力完了!!」
「相対速度計算開始………計算完了」
概ねの敵艦の位置、速度、相対速度が入力されていく。
「全システム異常なし、誘導魔光弾発射準備完了!!!!」
艦長イレイザはタキオンを向く。
「タキオン司令、敵を殲滅してよろしいですな?」
「もちろんだ」
イレイザは前を向き、大きな声で言い放つ。
「これより、歴史的な戦いが始まる!!我が神聖ミリシアル帝国は愚かなる悪の帝国へ神罰を降す!!
天の火を……悪魔に落とせ!!!」
「天の火、発射!!!」
ガッ キィィィィィーー!!!
魔導戦艦コスモに備え付けられた誘導魔光発射筒の上部に青い爆発が起こり、甲高い音と共に魔光弾が発射された。
中心に魔力をとどめるコアを持ち、コアの周辺が青く輝く。
コアの下からは青い光りの尾を引いた。
神聖ミリシアル帝国が天の火と称したそれは、空に向かって駆け上がっていった。
前回から今回投稿までに、ブログは2回更新してます。
くみちゃんとみのろうの部屋 もよろしくお願いします。




