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揺らぐ大帝国5

 編集氏が作った外伝2を読んでみました。

 原作者の私が言うのはなんですけど、ガラッと変わっていて、面白かったです

 また、現在6巻の作業に取り掛かりました。


 陸上自衛隊第1空挺団……

 ある自衛隊員はこう語る。


「あいつらは化け物、サイボーグとしか思えない」


 また、ある自衛官はこう証言する。


「航空基地で敵が侵入してきた想定で訓練を実施した。

 敵は第1空挺団数名、こちらは航空自衛隊側は200名、たったの数名相手とはいえ、精鋭のためある程度キル判定されるだろうとは想定していた。

 しかし、実際やってみると、一人も倒せずに基地を制圧されたよ……本当の化け物だ」




 竜が空を舞い、5機の陸上自衛隊C-2輸送機が飛ぶ。

 同飛行機からは、第1空挺団によるパラシュート降下が行われていた。

 地上に動く敵がいれば即座に竜騎士が導力火炎弾で「それ」を焼く。

 やがて、ムー国輸送機多数が到着し、上空に多数の白い花が咲いた。


 陸上自衛隊第1空挺団に所属する八木は、降下後、速やかに移動して自身の安全を確保した。

 訓練に訓練を重ねたその動きは素早く、鍛え上げられた筋肉は重量物を難なく持ち上げた。

 付近にすでに敵は無く、空爆と火炎弾により、大地が焼ける臭いが鼻につく。

 大声を出す事無く、付近の索敵を行う。


 すでに立つ者は無く、想定よりも遙かにスムーズに予定された展開を終えたのだった。


『地下基地への入り口を確認、18秒後に爆破する。A班はB2地点まで前進せよ』


 骨伝導イヤホンにより、外に音を漏らさずに指示が飛ぶ。

 音も無く、彼らは扉の近くまで前進した。


◆◆◆


 司令室に不快な振動が起こり、爆発音がこだまする。


『第12扉、破壊された!!!』


『敵が来るぞっ!!気をつけろ!!』


『なっ……なんだ!?これはぐっ!!まさか毒ガ……』


 司令部内では無線が鳴り続ける。


「第6小隊通信途絶!!!」


「第7小隊に警戒指示しました!!」


「何だ!!何が起こった!!!」


 グラ・カバルは心配そうにガオグゲルを見る。

 

「今情報を集めています」


 明らかに指令の足を引っ張る皇太子グラ・カバル。

 基地指令ガオグゲルは苛立ちを隠せない。


「第7小隊通信途絶!!」


「第9小隊通信途絶!!」


「くそっ!!進軍速度が早すぎる!!何故これほどまでにあっさりと!!!」


 司令室上部では時折銃声が聞こえ始めた。

 明らかに敵が侵入しており、死の恐怖が加速する。

 帝国陸軍兵は、弱兵ではない。

 皆練度が高い精鋭兵といって差し支えない。


 航空機や戦車ならば、技術による圧倒は理解出来る。

 しかし、歩兵は所詮銃を持つか持たないか……それほどまでに力の差はつかないはずだった。

 敵は何名出来ているのかすら解らないが、制圧は続く。

 

「第19小隊通信途絶!!」


 暗い部屋に潜んでいる帝国兵もいるにも関わらず、そこに誰もいないかのように突き進んでくる。


「何故だ!!何故歩兵レベルでも負けるのだ!!!」 


 理解が追いつかない。


「グラ・カバル殿下、ここにいる数名の兵をつけます。今すぐに非常用脱出口から避難してください!!

 おい!!お連れしろ!!!」


 グラ・カバルの返答を聞く間も無く、ガオグゲルは決断する。

 兵達ははじかれたように、カバルの手を引き、脱出口に走り始めた。


 基地指令ガオグゲルは、目を閉じ、誰にも聞こえない声を発す。


「これまでか……俺の人生ついてないな……」


 次の瞬間、司令室の扉が轟音と共に吹き飛び、中に何かが投げ込まれる。

 猛烈な音と光が発生し、その場にいた者達は無意識に頭を抱えた。


 ガオグゲルも、たまらず倒れ込む。

 視覚と聴覚がやられた……ぼんやりとした現実、尻餅をついたガオグゲルが気づく。


「っっ!!」


 緑の服、ヘルメットをかぶった者が彼に銃口を突きつけ、冷たい声で一言発す。


「手を上げろ」


 今までに感じたことの無い死の恐怖。目の前の男は、降伏しなければ容赦なく引き金を引くだろう……そう感じさせる気迫があった。


「これまでか……降伏する。撃たないでくれよ……化け物どもめ」


 ガオグゲルは、手を上げた。

 この日、グラ・バルカス帝国最前線基地バルクルスは司令部を制圧され、基地としての機能を停止した。


◆◆◆


「はあっ!!はあっ!!何故だ!!何故精鋭帝国兵が負ける!!!」


 避難用の洞窟、暗闇の中でグラ・カバルは走り続ける。

 心臓は張り裂けんばかりに強く鼓動し、息も絶え絶えになった。

 息苦しい。

 しかし、敵に捕まる事を想像する……帝国に恨みを持つ国は多い。

 皇太子と解ると八つ裂きにされるかもしれない。

 

 死の恐怖が彼を限界以上に走らせる。

 息は切れ、汗にまみれる。


 彼は思考を巡らせた。


『最前線は何が起こるか解りませぬ、御再考を!!』


 バルクルスへ行く事を必死で止めようとするお付きの顔が浮かんだ。


『行くのは止めておけ、皇族が行くとその準備のために兵を割くことになる』


 父、グラ・ルークスも止めようとしていた。

 それを振り切って、自分の考えを押し通し、今に至る。

 

 引き返す機会はあった。

 進言も何度もされた。

 しかし、自分は来てしまった。

 来ることが兵のため、国の為になると信じて……しかし、現実は足を引っ張り、仮に自分が敵国へ捕らえられたら虐殺される可能性すらある。

 いや、殺されなかったとしても、外交カードとして使用される事は間違い無いだろう。

 連戦連勝、異界の蛮族と、敵を侮っていた。


 聞く耳を持たなかった自分、悔やんでも、後悔しても時間は戻らない。


「はあっはあっはあっ……」


 息は切れ、汗にまみれ、足は動きにくくなり、もう走るのは限界だと訴えてくる。

 それでも足を止めると死ぬかもしれないという恐怖で……精神力で無理矢理動かす。 

 精鋭兵が負けた。

 敵の部隊の中には、我が方を上回る練度と装備を有する者がいる証拠。

 今までの自分、そして軍部を含めて帝国がそもそも同数の兵で負ける事を想定していない。

 敵の再分析をしなければ、とんでもない結果になる。

 

 苦しいながらも頭の片隅で、冷静な分析が行われる。


「殿下!!こちらです!!」


 やがて、階段を上がり、1つの扉を兵が開けた。


「くっ!!!」


 暗闇と懐中電灯に慣れていた目、太陽の光が差し込み、視界が光に包まれる。

 まぶしいながらも少しづつ光に慣れ、グラ・カバルは扉の外に出た。


 基地から直線距離にして約3km離れた森林の中、辺りを見渡すが敵

はいない。

 木で視界が遮られ、上空や基地の様子を伺い知る事は出来なかった。

 山の方を見ると、小高い岩山があった。


「あそこなら、辺りが見渡せるか……」


 グラ・カバルは岩山に登り、基地の様子を確認しようと行動を起こす。

 帝国陸軍兵達はあくまで兵であり、心では解っていても皇族の行動に危険を助言、もしくは皇族の行動を抑制するような言動は、とても出来なかった。

 陸軍兵も岩山を上り、あたりを見渡した。


「え!?なんだこれは!!!」


 基地は炎に包まれて燃え上がる。

 彼は基地上空を見上げた。

 

 数十機のプロペラ付き中型航空機が空を飛ぶ。

 数百の複葉機が乱舞し、数百の竜が飛ぶ。

 そして超大型の鳥類が千を超える数飛び回り、鳥類から落下傘を着けた部隊が基地に向かって降下していた。


 あらゆる文明の兵器が入り交じり、空一面に敵が広がる。

 正にカオスであった。


「敵は、本気か!!」


 基地の面積から考えると過剰とも言える人員投入、敵の本気がうかがえた。


「よし、まずは生き延びねばな」


 グラ・カバルと帝国陸軍兵数名は、生き延びるために動き始めた。


◆◆◆


 マギカライヒ共同体 ムー国派遣部隊 


 第32師団所属の1兵卒、バラスターは、大型火喰い鳥の上で、恐怖に震えていた。

 兵として突撃することが怖い訳では無い。


 彼は高所恐怖症だった。


「セター先輩、恨みますよ……」


 元々高所恐怖症であることを公言していた彼は、空挺降下の部隊からは外されていた。

 もちろん、必要な訓練時間も積んでおらず、あくまで陸軍兵力としてカウントされていた。

 しかし、作戦続行の2日前に事件は起こる。


 突如として空挺部隊である彼の先輩、セターが自分の持ち込んだ食べ物、しかも嗜好品を食べて食あたりを起こす。

 細菌性の食あたりでもあり、高熱を出したセターを実戦に参加させる訳にもいかない。


 そもそも過剰な兵力投下であるため、通常の軍であれば、1名減で作戦を続行しようとするが、今回は連合軍、しかも列強ムー国の気合いがかつて無いほど入った作戦であった。

 外交上の配慮もあり、マギカライヒ共同体として兵を差し出し願いのあった人員から削って出す訳にもいかず、数回降下した事のある彼、バラスターに白羽の矢が刺さったのだった。


 数回は行った訓練、この大きな鳥から飛び降り、紐を引いてあとはうまく方向を調整、敵基地内に降下するだけの作戦、すでに多くの兵が地上に降り立っており、特に危険は無さそうだった。

 しかし、高いところが怖い。

 すでに鳥の上で怖いというのに、そこから飛び降りるなんて……前回の訓練でも恐怖に震えたが、また行わなければならないとは……。


「まもなく降下地点に達するぞ」


 鳥の上から降下する者は3名、分隊長が指揮をとる。


「3.2.1.いくぞ!!」


 順に降下していく。

 すぐに自分の番になり、バラスターは意を決して降下した。


 落下するという恐怖、想像以上に速い重力加速度は、彼の速度を上げ、重力と空気抵抗が釣り合うまで加速する。

 高空で飛び降りたため、地面がゆっくりと近づき、まるで飛んでいるような気分になる。

「あと少し……5.4.3.2.1……今!!!」


 彼は紐を引っ張り、パラシュートを開いた。

 急激に体が空に引き上げられる感覚を覚える。


「あれ?」


 先に行った者達は、まだ降下を続けている。


「し……しまった!!」


 降下後40秒後、分隊長の合図と共に開くという命令。

 彼はあまりの恐怖に、秒数を早く数え、パラシュートを開く事ばかりを考えていた。


「ああ、後で分隊長にどやされる……」


 鬼の分隊長ゲイラ……戦場でのミスは、魂魄に刻み着くまで訓練させられるという恐怖の人物だった。


「え?あれ?何でだ??」


 自分のパラシュートが風で流され始める。

 降下ポイントの方向へ向けて降下しているはずであったが、遠ざかっているようにも見えた。


『マギ5-8!!何をしている、基地へ向かえ!!』


 自分の無線呼称、分隊長の不機嫌な声が無線から聞こえる。


「か……風に流されます!!!」


 自分の意思とは無関係の方向に流される。

 どうしようも無かった。


 やがて、1名風に流されている旨を伝える無線がイヤホンから聞こえてくるのだった。



◆◆◆


『一人流された、支援を要請する』


「新人か……マギカライヒ共同体の練度が低く見られるではないか、馬鹿者が……後で厳しく言ってやる……」  


 マギカライヒ共同体第1竜騎士団分隊長ナニーガは、ワイバーンの上で辺りを見渡す。


「あれか……」


 パラシュートが想定以上の高空で開き、基地の西側へ流されている様子がうかがえた。


「全く……ん!?」


 基地の西側、岩の上に人影がいるように見えた。

 彼は確認の為に降下する。


 高度を徐々に下げた。


「!!!!」


 銃をこちらに向けている。敵!!

 次の瞬間、何かが自分の頬をかすめる。続けて銃声が辺りに響き渡った。

 

 前から後ろに向かって頬に僅かな傷がつく。

 ナニーガは今死の可能性があったことを悟り、全身から汗が噴き出た。

 直ちに急上昇を行い、小銃の射程から逃れる。


 すぐに反転急降下、導力火炎弾発射指令をワイバーンに与えた。

 竜は口を開き、口先に火球が形勢されていく。


「導力火炎弾……発射ぁ!!」


 人間の魔力とは隔絶した魔力を有するワイバーン、その口から粘性を伴った火球が射出された。

 火球は急速に敵に近づき、岩山に着弾。

 爆発を引き起こした。


 小銃を構えていた者は、炎に包みこまれる。

 付近に数名いたようだが、爆発に巻き込まれたようだった。

 反撃は消え、ナニーガはワイバーンを上昇させる。


「今のは……危なかった」


 今後、地上からの攻撃に注意をより強くしようと心に決め、警戒を強めるのだった。


◆◆◆


 マギカライヒ共同体のバラスター、彼は風に流され、基地から西側約3kmの森林に降下した。

 木々の枝でパラシュートが絡まり、布は破ける。


「もう使えないな……」


 装備品を1つ壊した。

 後でいったいどれほど怒られるのか……。

 彼は、そんなことを考えながら、無線機を入れた。


「マギ5-8よりマギ5-1、人員異常なく着地に成功するも、装備品、パラシュート損壊、現在地……」


 彼は、現在の状況を的確に報告する。


『マギ統合戦闘本部から、マギ5-8、現在地より南西約600m付近に敵兵潜伏の可能性、すでに攻撃を加えているが、敵がなお潜んでいる可能性有、調査へ向かえ』


「了解」


 無線が終了する。


「うわっ……最悪だな……一人か」


 流された自分が悪い。それは解っているが、敵兵、しかも列強ムーですら手に余るグラ・バルカス帝国兵が潜伏している箇所の調査、そしてたった1人という兵力。

 命の危機すら感じる命令であった。

 

 彼は命令通りに南西方向へ向かう。

 恐怖と闘いながら……手元が僅かに震えていた。

 

 20分後ーー


 たったの20分であったが、彼にとっては永遠にも感じられる20分、足場の悪い森を進み、茂みをかき分ける。

 敵を警戒しながら進んでいたため、思ったよりも時間がかかる。

 自分の位置がばれたら直ちに銃撃に晒されるかもしれない。


 静かに、静かに前進した。

 心臓の鼓動がはっきりと聞こえ、息が上がる。


 ガサッ!!


 西側で僅かに草が擦れる音、よく見ると野生の動物が駆け抜けていった。


「っ……なんだよ……脅かしやがって」


 ほっとした瞬間。


「う……」


「!!!」


 一瞬聞こえるうめき声、彼は声のする方向へ向かった。

 草が焼け焦げる臭いがする。

 友軍によるワイバーンの火炎弾が直撃したのだろう。

 近い。


 ゆっくりと、音の出ないように進んだ。

 深い森、地面には雑草が生えているが、部分的に草が焼けていた。


「ううっ……」


 焼けた草から少し離れた雑草の上、うめきをあげる男が一人倒れている。


「これは……」


 倒れている男の付近にはグラ・バルカス兵と思われる焼けた遺体が散乱していた。

 1人だけ息があるようだった。

 顔に損傷は認められないが、衣服の一部が焼けてただれている。

 相当のやけどを追っているようだった。


「生存者か……」


 服を見ると、明らかに他の軍人とは異なり、今はすすけているが、装飾品を身につけていた。

 

「位の高い者かもしれないな」


 バラスターはすぐに無線で報告を行うと共に、付近にあるグラ・バルカス帝国の武器を回収した。

 捕虜1名を回収し、応援要請を行った。


 気絶し、傷ついた捕虜1名は、直ちにムー国前線司令部がある鉄道の街、キールセキに運ばれる。

 しかし、思ったよりも傷は深く、回復魔法でどうにかなるレベルではなく、野戦病院の域を超えていた。

 傷ついた者は要人である可能性が高く、ムー国首都オタハイトの病院に運ばれたが同病院でも治療できるレベルでは無かったため、参加国中一番の医療技術を誇る日本国本国へ運ばれたのだった。



◆◆◆


 マギカライヒ共同体 首都エーベスト


 第2文明圏南東部に位置するマギカライヒ共同体、この世界でも珍しい学院制という制度を採用しており、各州がそれぞれ独立した政府機能を持つ。

 それらの政府機能の集合体、マギカライヒ学院連合が、他国から国家として認知され、「マギカライヒ共同体」という国家として機能している。

 

 魔法技術と機械工学の融合、「魔導機械工学」が発達しており、中央世界からも一目置かれる存在だった。


 そんなマギカライヒ共同体の首都エーベストで、各州の学長が一同に会していた。

 時を刻む時計の音が、無言の会議室にこだまし、各人が国の行く末を決めうる作戦結果を待つ。

 強大なる異界の大帝国、グラ・バルカス帝国。

 神聖ミリシアル帝国主導の世界連合艦隊ですらも退けた。

 敵は強大であり、もはや侮る者はいない。


「もしも……負けてしまえば、いったいどうすれば……」


 弱音が出る。

 第二文明圏、列強ムーが気合いを入れたかつて無いほどの反攻作戦。

 これには第2文明圏の総力と、ムーを超えるほどの科学力を持つ日本国も参加している。 これで負けてしまえば、マギカライヒ共同体に打つ手は無くなってしまう。


「勝つと……信じましょう」


 会議室は静まりかえる。


「ん?魔信入電!!」


 皆が会議室に置かれた通信士の方を向く。


「読み上げます!!第2文明圏連合軍は本日、グラ・バルカス帝国陸軍基地バルクルスに攻撃を敢行せり。

 敵の多くを地上撃破、空挺降下作戦は成功し、バルクルスを制圧した。

 なお、新人兵が位の高い捕虜を確保した模様。

 我が国独自に帝国の武器の一部を稼働可能な状態で回収した」


「よしっ!!!」


 沸き立つ会議室。


「よくやった!!!我が国の兵が位の高い者を捕虜にしたことは実に誇らしい。新人兵には恩賞を取らせる。武器については、すぐに本国研究機関に移送せよ!!必ず分析して我が国でも量産するぞ!!!」


 マギカライヒ共同体の新人バラスターは処分を受けること無く、恩賞を受けるのだった。

◆◆◆


 日本国 首都 東京 首相官邸


 各大臣が集まり、緊急会議が行われていた。

 最近は国の行く末を決める会議が多すぎたため、「緊急」に慣れてしまっていた。


「と、言うことで、キールセキから飛び立った連合部隊によって、グラ・バルカス帝国の最前線基地とも言えるバルクルスは完全に掌握、同基地で発生した捕虜1623人中、1名を除いてムー国の捕虜収容所に移送が完了いたしました」


 続いて、残りの1名は現在日本の病院で治療中である旨が告げられる。


「移送された捕虜は、明らかに他捕虜と服装が異なっており、要人である可能性があります。

 なお、身分を証明出来る物は何も持っておらず、他の捕虜に確認するも全員が語りません。

 同捕虜の回復を待って、身分確認は行いたいと考えています」


 各大臣は、特に興味を示す事無く、議題は移る。

 グラ・バルカス帝国に対する今後の方針、自衛隊幹部による作戦予定が報告され、会議が終了を迎えようとしたときだった。


 一人の外務省担当者が会議室に入り、外務大臣に耳打ちする。

 ただでさえ日頃から顔色の悪い外務大臣の顔が、さらに青くなる。


「ほ……ほ……本当か……それは!!!」


 つい大声で聞き返した。


「外務大臣、どうしました?」


 首相が聞く。


「日本に収容中の捕虜が目を覚ましました」


「ほう、では身分確認がとれたのですね?」


「は……はい……捕虜の身分は、グラ・バルカス帝国の皇族「グラ・カバル」、皇太子と判明致しました」


「!!!!!!!!!!!!」


 衝撃を受ける各大臣。

 衝撃の情報、外交的には圧倒的有利になるかもしれない。

 敵の性格によっては全力攻撃に晒される可能性もある。


 強烈な外交カードを手にした日本国政府、大きすぎるカードに会場は沈黙する。

 

「猛烈な外交カードだな。使い方を誤れば、とんでもないことになる。しっかりとあらゆる可能性を検討し、最適解を出していかなければ……」


 日本国政府は頭を悩ませる。

 同情報は各省庁に持ち帰られ、今後の案を出させる事となった。


 政府の苦悩は続く。



 

◆◆◆


「ここは……どこだ?」


 グラ・カバルの意識が徐々にはっきりとしたものになる。


 白い天井、白いベッド、おまけに自分の来ている服まで白い。

 天国へ来てしまったのだろうか?

 意識がはっきりとしない。

 先ほど礼服と思われる服装で現れた人間、日本国外務省と名乗ったか……丁寧な口調で話しかけてきたため、つい自分の身分を伝えてしまった。

 軽率だったか……少し後悔する。

 頭が痛く、脳はあまり回転していなかった。


「ここは何処か聞きそびれるとは……」


 カチャ……。


 扉が開かれ、白衣に身を纏った女が現れた。

 女はこちらを見てハットした顔をする。


「気づかれましたか?」


 女が話しかけてくる。

 助かったのは理解できた。

 彼は自分の状況を把握するため、頭をフル回転させるのだった。

 

 


ブログ「くみちゃんとみのろうの部屋」では、数話なろうよりも先行配信しています。

(話の展開で大幅なミスをした場合の方向修正や、誤字対策です)

 完全版ではありませんが、興味のある方は覗いてみて下さい

 また、今月漫画版日本国召喚2巻が発売されます。よろしくお願いします。




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― 新着の感想 ―
怪我人とはいえ敵国人、迂闊に看護師一人で近づかせるのは危険じゃない? 絶対、警備の人付いてくると思うけど・・・
このまま、皇太子を洗脳して彼の国を乗っ取りましょー(笑)
[一言] 航空自衛隊基地祭に行った時に体格の違いに驚いた
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