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揺らぐ大帝国3

1 くみちゃんとみのろうの部屋では、数話先行配信してます(誤字有)

2 小説は1~5巻発売中、大幅加筆及び文字修正してます

3 コミック1巻発売中

 よろしくお願いします

グラ・バルカス帝国海軍東方艦隊及び、監査軍の幹部達、この世界においては彼らの決定によって、何カ国も滅ぼせる力を持つ者達の会議が始まる。


「そ……それでは、本国艦隊第52地方隊の全滅に関し、現在までに判明している情報と、日本国に関する現時点での情報について、資料をお渡しします」


 カイザルの招集によって急遽始まった会議、海軍本部職員にとっては急遽レイフォルに呼び出された形で始まったそれは、通常では当然あるはずの「根回し」等は無く、海軍本部の説明形式で始まる。 

 現時点判明していた資料が各人に配られた。

 東方艦隊幹部達は、資料に目を配った。


「日本国の巡洋艦に対する今までの認識についてですが、過去にはカルトアルパス沖海戦を元にした分析がなされていましたが、ここにおいて新たな事実が判明いたしました」


 眼光鋭いカイザルに睨まれ、本部の人間は冷や汗をかきながら話し始める。


「過去、日本国巡洋艦の対空火砲の命中率の高さは脅威として認識されていましたが、口径は機関砲レベルのものであり、海戦においてさしたる脅威は無いと考えられてきました。 しかし、日本国にはさらに強力な砲を搭載した巡洋艦が存在することが、多方向からの情報により、明らかになりました」


 命中率が高い大口径艦が存在するという事実。

 鉄壁の対空能力に加え、強力な対艦能力も備わる事になってしまう。

 大きな脅威の出現に、場が静まった。

 職員は発言を補足する。


「ご説明いたします。

 資料の4ページの第3に記載をしていますが、ムー国に潜入していたスパイが、日本国の使用する兵器に関する本を入手致しました。

 欺瞞情報か、真実なのか本部では図りかねていたところ、先の本国艦隊地方隊の全滅という悲劇が発生致しました。

 同艦隊の全滅に関し、当初神聖ミリシアル帝国の空中戦艦が投入された可能性が指摘されましたが、ムー国要人から、日本国による攻撃であったという情報を得る事が出来ました。

 多角的情報から分析したところ、海軍本部として日本国は命中率の高い大口径艦が存在するという結論に至りました」


「どの程度の口径か解っているのか?大口径の戦艦は存在するのか?

 砲撃の威力は口径の3乗に比例する。

 もしも、巡洋艦だけではなく、戦艦も日本に存在するなら……それが先のカルトアルパス沖海戦に登場した巡洋艦クラスの命中率があったならば、大きな脅威となるだろう」


 カイザルの問いに、他の東方艦隊幹部も続く。


「なるほど、航空攻撃に対して大きな対空能力を有し、艦隊戦でさえ高い命中率の砲撃で来られると……数で押すしか無くなる。

 潜水艦による攻撃も、艦隊戦を決するほどの働きは期待出来ない。

もしも戦艦クラスを持っていたとすると……やっかいですな……」


 幹部達は、敵のあまりの脅威度の高さに青ざめた。


「現時点、日本国の艦で戦艦クラスの艦はどの情報筋からも確認できていません」


 戦艦の存在を否定され、場の緊張が和らぐ。


「し……しかし、未確認情報なのですが……」


 本部職員は、言いにくそうに切り出した。


「何だ?申してみよ」


「これは、少し荒唐無稽でもありますが、一応信用できるとされる情報筋から得られた情報です。

 今から申し上げる情報は、現在その確度を分析中であり……」


「いいから早く言え!!」


「は……はっ!!

 し……資料の最後のページに掲載しています。

 ムーの本屋で得られた日本国の情報、及びムー国要人から入手した情報によりますと、えー、上から5段目をご覧下さい……」


 カイザルは、指定された場所に目を通す。



「な……何だと!!?」


 歴戦の猛将カイザルの背中に、今まで感じたことの無い汗が伝う。

 日頃沈着冷静な彼が、思わず声を発してしまう。


 護衛艦主要装備

 ○ SSM1-B(90式艦対艦誘導弾)

   飛翔速度1150km/h

   射程150km以上

   弾頭重量260kg(HE)

   誘導方式 慣性航法装置(中途)アクティブレーダー誘導(終末)

   システム重量……

   搭載艦艇………


 読めば読むほど信じられない性能が記載してあった。

 沈黙にたまりかねた幹部が本部職員に質問を開始した。


「これはどういう事だね?」


「文字通りの意味です……」


「では何かね?日本の巡洋艦は、射程150km以上もの距離を飛ばし、誘導爆弾のために必ず当たり、当たれば巡洋艦ですら1発で大破に追い込まれるほどの兵器を配備していると?

 さらに、対空用の誘導爆弾もあり、100km以上先から航空機を迎撃出来るというのか!!

 日本国は魔法のようなデタラメな兵器は無いと聞く。

 科学でそこまで出来ると言うのか!!……そんなSF小説のような事があってたまるか!!!」

 

「はい、ですので、本件についてはあまりにも情報そのものが荒唐無稽であり、現在精査中です。

 ただ、本国艦隊が日本国の艦隊を前に全滅したのは事実であると考えております」


 本部職員は適切な回答を伝える。

 しかし、興奮した東方艦隊幹部は収まらない。


「しかも何だ!?このイージス艦というのは!!同時に何百もの目標を追尾し、12以上を同時攻撃可能?

 しかも、艦同士を連携させるとさらなる能力を発揮するだと?

 このSF的兵器の対艦誘導弾の大規模同時攻撃ですら防ぐことが可能だと?

 そんなものが……そんなものがあったら……」


 幹部はまくしたてる。彼にとって、艦隊を実際に運用している者にとって、この情報はあまりにも衝撃であった。

 渋い顔のカイザルが、ゆっくりと口を開いた。


「もしもそんな兵器があったら……小規模でもある程度の数がそろっていた場合……負けるぜ、この戦」


「!!!!!」


 軍神とも言われたカイザルが発したその言葉に、一同衝撃を受ける。

 

「仮にこの記載が本当だったとしよう。戦艦を所有しているか、いないかなど、全く関係は無い。

 敵は戦艦の主砲を遙かに超える射程を持つ兵器を、遙かアウトレンジから放つ事が出来る事になる。

 しかも命中率が高い……。

 航空攻撃もほぼ防がれる。

 しかも、対潜能力も異常に高いとの記載がある。

 完全無欠ではないか……。

 補給基地や生産設備を叩くしかなくなるだろう。

 だが、敵の生産設備は当然無防備では無いだろう」


 話は続く。


「もしも、奴らが技術をムー国や神聖ミリシアル帝国に輸出し、数の多い奴らが同技術を習得してしまったら……いかに生産規模で押したとしても、分が悪すぎる。

 ムー大陸が落ちれば、日本も技術流出に気を遣っている場合ではなくなるからな。

 この戦い、長期化すればするほど不利になるだろう。

 奴らの数によっては……短期に圧倒的物量で押せばまだ勝機はあるかもしれぬが」


 1回の大規模戦闘に耐える部隊があれば、それを繰り返し使用されるだけで帝国は疲弊していく……恐怖以外の何物でも無い。


「ほ……本部としても、さらなる情報精査に努めます!!」


「頼んだぞ。

 欺瞞情報であってくれる事を願う」


「ははっ!!」


 会議は終了し、カイザルは一人部屋を出た。

 だれにも聞こえぬ声でそっとつぶやいた。


「なんてことだ…」



◆◆◆


 神聖ミリシアル帝国 帝都ルーンポリス 情報局


 情報局長室において、2人の男が座る。

 局長アルネウス、そして局員であるライドルカである。

 局長室に臨時に設置された机上には、多くの資料が並べられている。


「以上が、今回ムーで発表されたグラ・バルカス帝国とムー国海軍、そして日本軍の交戦記録の、現時点判明している事項です。

 なお、こちらの資料が外務局出向の、情報局員が入手した自衛隊の兵器性能における資料になります。

 同資料は日本国内で過去に入手され、偽文書なのか、真の資料なのか、日本国の技術で制作可能なのか、精査してまいりましたが、今回の戦闘結果を見るに真実であろうと思慮されます」


 ライドルカは、局長アルネウスに報告する。


「我が国と日本国の国交樹立以降、部分的に我が軍の性能を上回る兵器を所有していることは解っていましたが、その兵器群が組織的に使用されたときの攻撃力が……まさか……これほどまでだったとは」


 ワナワナと震えながら話すアルネウス、その様子を疑問に思いながら、ライドルカは発言した。


「局長、たった数隻を全滅させただけです。我が国も、空中戦艦パル・キマイラや海上要塞パルカオンを起動すれば、日本国と同じ事は可能なのでは無いでしょうか?」


「確かに……可能でしょう。しかし、これらは古の魔法帝国の兵器群、別格であることは当然なのです。

 これらが我が国に作ることが出来るのであれば、良いのでしょうが、我が国は作れない。 そして、我が国の魔導戦艦では、日本国と同じ事は出来ないのです。

 悔しいが、兵器単体の性能は日本国の方が上と言わざるを得ない。

 この……魔法文明の頂点たる我が国が、強さにおいて負けるというのですよ!!」


 少しだけ感情的になるアルネウス、彼は続けた。


「ライドルカ、今回の交戦戦績を見て、君は何を思う」


「え?はっ!!日本国は兵器単体性能において、グラ・バルカス帝国艦艇を超えている……という事でしょうか?」


「半分正解といったところです。

 このキルレシオ、日本国艦艇の被害はゼロです。ゼロと言うところがすごく大きい。

 仮に、1隻でも日本国がやられていたら、強さを図る事も出来たでしょう。

 しかし、被害ゼロだと、強さの上限が読めない。

 これは極論ですが、日本国にとって、文明圏外の船も、列強だったパーパルディアの魔導戦列艦も、そしてグラ・バルカス帝国の艦、そして神聖ミリシアル帝国魔導戦艦でさえも、等しく……何隻集まろうが、関係無く、退ける事が出来るのかもしれません」


「そんな……」


 沈黙……。


「さらに、今回はムー国のラ・カサミが日本国で改修を受け、大幅に性能アップしていることも気になります。

 かつてのムーならば、あっさりとやられていたはず……それが、死闘を繰り広げ、満身創痍になりながらも、実質たったの1隻の艦で多数を退けています。

 日本国から、ムー国へ、どのような技術移転があったのか、全力で調べる必要があります。

 仮に、技術移転後にグラ・バルカス帝国の手にムーが落ちれば……帝国が日本の技術を吸収してしまえば、我が国をも本格的に脅かす……とんでもないことになります!!」

 

 日本国の兵器は敵国だけではなく、友軍においても深刻な脅威として受け取られていた。

 情報局長室での分析は深夜に及ぶ。



◆◆◆


 グラ・バルカス帝国 占領地 アルー(元ムー国国土)


 疲弊した街で、衛兵や住民達が跪く。

 石畳の上をゆっくりと車列が通る。


 グラ・バルカス帝国皇太子グラ・カバルは車列の中から外の景色を見ていた。

 戦闘によって壊れた建物、跪く住民達の引きつる顔、幾度も見てきた力なき光景、これが戦争……いつ見ても気持ちの良い物ではないが、帝国のさらなる繁栄のためには必要な犠牲だった。


「ちょっと止めてくれ」


 運転士は皇太子の命により、すぐさま停車した。


「ちょっと見てみたいものがある」


 カバルは突然車を降車し、歩き始める。


「で……殿下!!まだ占領したとはいえ、アルーの街は敵国、危険でございます!!!」


 お付きの者が一生懸命止めようとする。


「良い、大丈夫だ」


 一切聞かない皇太子。

 警備上予定外の降車、警備責任者は顔を青くする。

 カバルは、とある路地の方に歩く。

 跪いていた住民は、起用にも頭を下げたまま皇太子の道を空けた。


 予定警備ルートより外れる事150m、やがて子供達のはしゃぐ声が聞こえてきた。


「ほう?やはり、戦争中でも子供は元気だな」


 カバルは子供へ近づき、彼らに話しかけた。


「おい!!何をして遊んでいるんだ?」


 唐突に話しかけられた子供達4人、相手が誰なのかなど、解らない。

 子供は正直であるため、殿下に対して失礼な事をしないか、心配のあまりにお付きの者たちの顔が青くなる。


「遊び疲れたから、お菓子を食べたいと話してたの、あそこで買おうとしてたの」


「ほう?」


 グラ・カバルは子供達の指さした方向を見る。

 小さな趣のある店がそこにあった。


「おにいさんも一緒にいいか?」


 目線を子供に合わせる。


「おじちゃんも来るの?」


「良いよー」


 何も解らぬ子供達、そして帝国においても想定外の動きをするグラ・カバルは、日本国でいうところの駄菓子屋に向かった。


「なにが美味しいのだ?おにいさんに教えてくれ!」


「やっぱりこのアイスかな?」


「ほう?」


「日本のアイスだよ、すごい美味しくて、お父さんとお母さんは、素朴な味が大人向きって言ってた」


「そうか、敵国の菓子か、おい!老婆、これを俺と子供達にくれ!!」


「はいよ」


「で……殿下!!アイスなど、しかも現地民の庶民の食事など!!おなかを壊しては大変です!!」


「良いでは無いか、占領地の庶民がどのような菓子を食しているか興味がある。

 ほれ、喰え!!」


 グラ・カバルは子供達にアイスを配った。


「ありがとう!!おじちゃん!!」


 袋を開け、アイスをナメ始める子供達、その傍らで彼もまた袋を開け、口を大きく開けた。


「あ!!おじちゃん気をつけて、これは硬……」


 バキッ!!


「ぐっ!があっ!!!」


 歯に走る激痛。

 ただ痛いだけではない。何か取り返しのつかない間隔が、グラ・カバルを襲う。

 あまりの痛みに悲鳴をあげそうになるが、ぐっと男らしくこらえた。


「ま……前歯が!!」


 口を押さえるグラ・カバル。

 手の先からは赤い液体がしたたる。


「で……殿下あぁぁぁぁ!!」


 グラ・バルカス帝国の次期皇帝たる者に怪我を追わせてしまった。

 顔面蒼白になる付き人。


「ぐ……車に戻るぞ」


 そそくさと、車に戻るグラ・カバル、そして後ろ姿を心配そうに見守る子供達。


 カバルは車に乗車した。


「ででで殿下!!大丈夫でございますか!?」


「歯が折れた……視察の前だというのに!!おのれ……おのれぇ!!日本の菓子だと!?まさか食品までもが敵だというのか……ゆるさんぞ!!」


 増悪の対象である袋を見る。

 どこか和風を感じさせるその袋、カバルには読めなかったが、その袋にはこう記載されていた。


『井戸村屋史上硬さMAX!!スーパー小豆入りバー』


 日本最強の堅さを誇るアイスの姿がそこにはあった。



◆◆◆


「まもなく殿下が到着いたします!!」


 破壊尽くされた最前線基地バルクルス。

 皇太子殿下が急遽来訪する事となり、基地の復旧よりもまずは空港の復旧が急がれた。

 なんとか空港と、空港から見える位置の体裁を整える事に成功し、軍団長ガオグゲルはほっと息をつく。


 日本国と思われる圧倒的攻撃があった。

 正直再度攻撃があった場合は防ぐことは出来ない。

 そんな危険な領域に、皇太子殿下が来られるという。

 彼は、「現状の警戒態勢では安全を保証できない」旨、軍部に上申する。


 軍の回答はいたってシンプルであった。

 本国から応援部隊を出すことによって、陸軍兵力を大幅増強、対空、対地施設を強化して陸と空に対応する。

 さらに、バルクルスへ飛行可能圏内の基地航空兵力が大幅に増強するものであった。


 ガオグゲルは、攻撃が日本国の戦闘機によるものであれば、その対空性能は刮目すべき圧倒的性能であり、数の増強を行ったとしても基地の警備体制は確保できない旨伝えたが、軍幹部達は、そんなはずは無いの一言で片を付け、今に至る。


 ひたすらに敵の攻撃が来ない事を心の中で祈り続けるガオグゲル。

 眼前に、皇太子を乗せた航空機が、ゆっくりと着陸した。




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ばかやろう、無茶しやがって
へたな兵器より硬い小豆バーに草を禁じ得ない
[一言] 舐める噛んではならない、最後の方になったら噛む
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