揺らぐ大帝国2
ブログくみちゃんとみのろうの部屋で、数話先行配信中(誤字あり)
書籍1から5巻、コミック1巻発売中!!手に取った事の無い方は、ぜひお願いします。
グラ・バルカス帝国レイフォル地区 空港
グラ・バルカス帝国がレイフォルに作った空港。
同空港に、中型のレシプロ機が着陸する。
外観は通常の航空機であるが、内装は豪華絢爛な装飾で溢れていた。
レシプロ機は滑走路からエプロンへゆっくりと移動し、やがて停止する。
機の出入り口にラッタルが取り付けられる。
階段の先には赤色のマットが敷かれ、その先に外務省幹部、そして軍の幹部がおり、幹部後方には、精鋭陸軍兵3000人が片膝をつく。
あまりにも盛大な光景である。
軍の音楽隊が優雅な音楽を奏でた。
ゆっくりと扉が開かれ、中から男が現れる。
眼光は鋭く、帝国人より大柄、身長は185cm以上はあるだろうか……威厳をもって、栄えあるグラ・バルカス帝国の皇族……その中でも第一の皇位継承権を持つ男、グラ・カバルが現れた。
彼が後の世界の王になることに疑問を持つ帝国臣民は存在しないだろう。
陸軍兵達は眼前の男が皇太子である事に感激し、その威光が眼前にある事実、うれしさに涙を流す者もいる。
「出迎えご苦労!」
皇太子グラ・カバルは一言発し、絨毯を歩き始めた。一段一段とラッタルを降り、眼前に用意された高級車に乗り込む。
「さてと……向かおうか!」
グラ・カバルを乗せた自動車は外務省庁舎へ向かう。
同庁舎で説明を受けた後、第二戦線基地に着陸、その後車両で帝国が落とした元ムー国のアルーの街を経て、最前線基地バルクルスへ向かう予定となっていた。
アルーの街へ行く事は、敵基地があまりにも近いため、反対意見もあったが、皇太子の強い意志により実行されることとなった。
◆◆◆
ムー国 首都オタハイト
とある酒場で1人のムー国軍幹部と1人の女性記者が話をしていた。
「キャニーちゃん、本当に、実はこのオタハイト、危なかったんだよ!!」
「ラクル将軍、本当?怖ーい、どんな風に?」
軍へ良く来る大手新聞社の記者、キャニーは度重なる訪問、そして人間関係を構築し、幹部ラクルは友達感覚でキャニーに話をする。
「そのうち軍が発表するよ」
「えー早く聞きたーい!!気になるーー」
甘い声でキャニーは話す。
徐々に酒は進んでいき、ラクルは平常心と軍幹部としての心がけを失っていった。
2時間後ーー
「そういえば、ラクル将軍、さっきのオタハイトが危なかったって話、聞きたーい」
「ええぇぇーー」
「どうせそのうち報道発表するんでしょー言わないから教えてよぅ、私と将軍の仲でしょ?」
「ああ……キャニーちゃん、人には言うなよ……」
ラクルは、軍規を破り、情報を漏らすのだった。
◆◆◆
翌日ー
グラ・バルカス帝国領 レイフォリア
空港から皇太子が乗った飛行機が飛び立つ。
見送る軍の幹部達。
外務省シエリア、ダラスは、レイフォリアにおいて特段問題が無く、無事飛び立った飛行機を見て、ほっと胸をなで下ろした。
車に乗り、残りの仕事を終わらすために外務省庁舎に向かう。
庁舎に着いた彼女らは、執務室に足を運んだ。
「もう昼か」
昼休みにさしかかり、各々が用意していた弁当を開き、昼食を食す。
ふとテレビを付けた。
「ムー国のチャンネルに合わせてくれ」
シエリアの指示の元、職員がテレビのチャンネルをムー国から飛んでくる電波に調整した。
レイフォルの状況は良く理解しているため、敵国の情報を探る意味もあって、昼食時のテレビはムー国のテレビチャンネルを見ることが最近の日課となっていた。
ニュースが始まる。
『本日は特別ニュースがあるため、時間を延長してお送りします!!!』
いつもはのんびりと話しているキャスターが、真剣な表情を浮かべ、話し始めている。
傍らでは、美人の女性が真剣な表情で頷く。
『読読新聞一面に掲載された内容を、こちらでも繰り返しお伝えします!!』
キャスター2名で繰り広げられる問答形式のニュースはわかりやすい。
『世界連合艦隊とグラ・バルカス帝国海軍が衝突したバルチスタ沖大海戦直後の中央歴1643年2月7日、グラ・バルカス帝国艦隊が、我が国の首都オタハイトを殲滅するため、8隻からなる艦隊を派遣、さらに帝国は同時作戦のため、商業都市マイカルを火の海とせんとするために別働隊の空母機動部隊を派遣していたことが判明しました!!』
ニュースを横耳で聞いていたダラスは、飲んでいたコーヒーをふきこぼした。
バルチスタ沖海戦とムー国東海岸の同時攻撃……過去、本国へ報告のために戻っていたとき、たまたま食堂で会った外務大臣に自分が話した案だ。
雑談程度の話だった。
ダラスは食い入るようにテレビを見つめる。
『今朝の新聞記事ですね。どうやって、これら帝国の脅威をムー国は排除したのでしょうか?』
『はい、ラ・カサミはご存じですね?』
『ええ、ムー国の象徴的で最強とも言える艦ですね。日本国で改良を施され、ムーに返還されたとニュースになっていました』
『実は、オタハイト防衛には、首都防衛艦隊が出撃、ラ・カサミ改は補給をしていたため、少し遅れて出撃していたんです!!』
『では、首都防衛艦隊が、グラ・バルカス帝国による首都攻撃の脅威からオタハイトを救ったのでしょうか?』
『いえ、首都防衛艦隊はグラ・バルカス帝国の航空攻撃で壊滅的打撃を受けます。
しかし、最後にラ・カサミ改が、戦闘海域に到着するんですね』
『ええ、それで?』
『ラ・カサミ改の対空能力は極めて上がっており、迫り来る帝国航空機をバッタバッタと落とします!!
そして、1対8という、艦隊決戦にもつれ込んだそうです!!』
『ええぇぇ!!!』
『グラ・バルカス帝国の超大型戦艦は、神聖ミリシアル帝国のミスリル級魔導戦艦にも匹敵する強さを持っています!!
その超大型戦艦をも含んだ8隻相手に、ラ・カサミは死闘を繰り広げました』
『どうなったんでしょうか!!!』
『実は、一部現場艦橋の……音声テープを関係筋から我が社の社員が入手いたしました。聞いてみましょう!!』
『はい!!』
ムー国朝刊ですっぱ抜かれた政府の秘密情報、時が来たときに公開する予定でいたが、朝刊で大々的に報道されたため、政府は一部のテープをマスコミに意図的にリークしていた。
テープが流される。
『「敵艦発砲!!」
「弾道を報告!!回避せよ!!!敵砲の口径は35cm以上ある!!1発でも食らったら終わりだぞ!!!」
「はっ!!敵弾まっすぐこちらに飛んできます!!」
「取り舵一杯!!」
水を叩くような轟音が鳴り響く。
「敵駆逐艦、距離25kmまで接近!!敵巡洋艦距離28、まもなく敵の射程に入ります!!」
「速い……出し惜しみしている状態では無いな……」
「あまり近づかれると射撃密度が上がる!敵の砲撃威力は高すぎます。一撃でも当たると……我々が敗れると我が国の首都は焼き払われます!!新兵器を使用しましょう!!」』
『テープは一度ここで途切れます。
続きは少し時間が経ってからです』
『「くそっ!!なんて堅さだ!!」
鳴り響く轟音。
「か……艦首被弾!!!」
「前部主砲湾曲、使用不能!!」
「後部速射砲、撃ち続けろ!!」
再度、爆音と共に、大きな金属と金属がぶつかる音が鳴り響く。
「後部砲塔……使用不能!!」
「な……なんてことだ!!」
「あきらめるな!皆が絶望しても、俺たちだけは決してあきらめてはならん!!ムー国は……俺たちが守るんだ!!」』
『入手出来た音声部分は以上になります』
『な……なんて凄まじい……私たちが平和な日常を享受している間に、命をかけた男達がいたのですね!!』
『ムー国政府関係筋によりますと、この後ラ・カサミ改は日本国より付与された新兵器を使用し、敵戦艦及び巡洋艦を含む数隻を撃沈、その後、内陸よりかき集めた航空戦力で、歴史上最大規模の航空攻撃を実施し、敵をオタハイト沖合で殲滅したそうです。
ムー海軍の被害としては、首都防衛艦隊10隻が全滅……全艦撃沈され、ラ・カサミは大破し、現在ドックで修理中との事です』
『神聖ミリシアル帝国でも相当手こずったグラ・バルカス帝国の艦隊を、ラ・カサミは、ただ1隻で足止めし、その後ムーの航空攻撃によって全滅させたのですね?』
『そうです!!』
『では、マイカルを攻撃していた敵部隊は、どうなったのでしょうか?』
『グラ・バルカス帝国艦隊は、マイカル攻撃を本隊とし、オタハイトよりも大規模な艦隊が差し向けられた模様です。
入手できた情報は限られており、詳細な数については政府発表が待たれます。
概要について、朝刊によれば、敵艦隊については、日本国海上自衛隊第4護衛隊群と交戦し、全滅したとのことです。
日本国がこの海域にいたのは、戦闘状態にいた我が国に対し、ラ・カサミをムー国沖合まで確実に送り届けるために随伴してきたとの事です。
敵艦と日本国が交戦した時、艦対艦誘導弾による攻撃というのが行われたとの情報が入っています』
『どんな攻撃なのでしょうか?』
『詳細は不明です。この事について、夕方から特集を組んで放送致します。
お昼の放送には間に合わなかったのですが、日本の軍事に詳しい軍属の方をお呼びして特集を放送致します』
『解りました。日本国自衛隊の被害はどうなっているのでしょうか?』
『日本国自衛隊の被害は……なんとゼロです!!!』
『神聖ミリシアル帝国でさえ、先の大戦では多大な被害を被り、敵と同じくらいの量の艦が被害に遭っています。
日本国の被害がゼロというのは、ちょっと信じられないです』
『本件朝刊による記事により、ムー国政府は15時から記者会見を開く予定です。
記事の真偽が明らかにされることでしょう。
繰り返しお伝えします。
2月7日、ムー国軍及び日本国海上自衛隊は、首都及びマイカルに侵攻してきたグラ・バルカス帝国艦隊を殲滅致しました。
この艦隊は、関係筋によりますと、本国から派遣された艦隊であるとの事です。
世界連合艦隊でも為し得なかった快挙を、2国間連合で達成したのです!!』
テレビから、聞いたことの無いニュースが流される。
唐突に飛び込んできた、あまりにも想定外の情報、欺瞞情報なのか……それとも……。
衝撃的情報に食事の箸は止まり、立ち上がりテレビを見る。
呆然と立ち尽くすダラス、そしてシエリア……。
衝撃が大きすぎて沈黙が続いた。
「ま……まさか……この事をギーニ議員は知っていた?」
「ば……バカな……こんなバカな事があってたまるか!!これは、戦争に良くある欺瞞情報ではないのか!!!」
問いかけとも独り言ともとれるダラスの言、答えれる者はおらず、沈黙が続く。
日本国からの「技術」に関する情報提供、そして繰り返し伝えられた「海上保安庁
は非戦闘員である」という情報。
そして今ムー国のニュースで流されている情報。
これらが正しければ、日本国は間違いなく強い。
しかも先日、陸軍将校ランボールから「海軍が怯えている」という情報を得たばかりであり、ニュース情報が正しい可能性が高まる。
しかし、今までの帝国不敗という常識、日本国が、周辺国家を支配していないという事実、戦争を仕掛けてきたはずのパーパルディア皇国すら支配していないという、帝国の常識からすると矛盾した現実が、ムーの報道を弱者の欺瞞情報ではないかと疑わせる。
これが正しければ、皇太子殿下への危機となる可能性がある。
直ちに皇内庁を飛び越えて、帝王府に報告をしなければならない。
しかし、欺瞞情報だった場合は、踊らされた無能のレッテルが貼られてしまう。
脳内を情報が駆け巡る。
「まずは状況確認が必要だ」
あまりの衝撃からか、シエリアの声は震えていた。
「ええと……今流れた情報について、本国に問い合わせます」
気を利かせた部下がシエリアへ報告し、席を立つ。
シエリア達は呆然と立ち尽くすのだった。
◆◆◆
ムー大陸から西側に約500km離れた位置に、北海道ほどの大きさの島がある。
かつて、この土地はイルネティア王国と呼ばれていた。
イルネティア王国はグラ・バルカス帝国から侵略を受け、滅ぼされた。
同王国の王都諸侯ビーリーと王子エイテス一行は帝国の脅威が迫った時、国を救うため、外交の旅に出る。
ムー国、そして神聖ミリシアル帝国に積極的に働きかけた彼らは、先進11カ国会議の場で国際社会からのグラ・バルカス帝国に対する非難決議を導き出すに至る。
文明圏外国家の働きかけでの先進11カ国会議での非難決議、とてつもない外交成果
といえるが、決議が行われた時は国がすでに滅びてしまっていた。
神聖ミリシアル帝国 港町カルトアルパス とある酒場
世界の情報が集まる港町カルトアルパス。
その中でも特に各国の情報が飛び交う有名な酒場では、いつものように酔っ払い達が話をしていた。
その一角で、元イルネティア王国の王子エイテスと、王都諸侯ビーリーは失意の中、話をしていた。
「では世界連合艦隊は……世界の覇者とも言える神聖ミリシアル帝国は、第一線戦力を投入し、さらに古の魔法帝国の超兵器、空中戦艦を投入したにも関わらず、痛み分けに終わったのですか?」
「はい、グラ・バルカス帝国がここまで強いとは、想定外以外の何者でもありませんでした。
せめて列強ムーであれば勝てるかと考えていました」
文明圏外国家、イルネティアにとって、文明圏内国はとてつもない強国、さらに列強ムーは雲の上の国家であった。
神聖ミリシアル帝国にいたっては、古の魔法帝国に準ずる強さがあると、魔法帝国復活の際に、唯一戦えるであろう、神の領域ともいえる強さがあると、そう信じていた。
その、神の領域の国が本気を出したにも関わらず、痛み分けという事実。
グラ・バルカス帝国による世界征服は阻止出来るかもしれないが、イルネティア王国を
取り戻すなど、夢のまた夢。
二人は失意のどん底に落ちる。
「はい!ビールだよ!!」
「ああ、ありがとう」
元気の良い娘がビールと、旨そうな料理を運んできた。
「まずは食べましょう」
こんな酒場でも国の話をせずにはいられない。
グラ・バルカス帝国がムーへ陸上侵攻したというニュースも聞いた。情報をまとめればまとめるほど、イルネティア奪還への道は限りなく険しい事が理解できる。
ずっと断酒してきた2人は、とりあえず気持ちを落ち着けようと、この日、酒場へ来ていた。
二人はうまい酒と料理に手をつけようとした時。
「おいおい!!始まったぞ!!」
大柄のドワーフが、大きな声で映像が映し出される画面を指さす。
ふと、2人も声につられて画面の方を見た。
ニュースが始まる。
いつも思うが、魔信に映像を付け、運ぶというとんでもない情報量を処理する魔導技術はすばらしい。
神聖ミリシアル帝国に来て、ニュースは見慣れていたが、今回はなんだか様子が違うようだった。
『臨時ニュースをお伝えします!!』
美人のエルフキャスターが、画面に向かって真剣な表情で語りだす。
『ムー国政府の発表によりますと、中央歴1643年2月6日、ムー国海軍及び日本国海上自衛隊は、ムー大陸東側海上において、グラ・バルカス帝国本国艦隊と交戦し、これを撃滅したとの事です!!
グラ・バルカス帝国軍本国艦隊に所属すると見られる空母機動部隊は、首都オタハイト及び商業都市マイカルに対する同時攻撃を試みましたが……』
酒場がいっきにざわつく。
衝撃的なニュースが続いた。
「おいおい!!本当かよ!!」
「空母機動部隊を撃滅だと!?我が神聖ミリシアル帝国でさえ為し得なかったような大戦果だぞ!!!いったいどれだけ戦力を投入したんだ?
ムー国、戦艦単体では大した事は無いが、物量は凄まじかったのか?」
「し……信じられん!!さすがは列強第2位のムー国だ!!」
「しーーっ!!しーーっ!!聞こえない!!」
酔っ払いたちは、流される映像に釘付けになり、各々の感想を述べる。
ニュースは進み、ムーでも公開された音声テープも流された。
海戦の概要、敵の損失数、そしてムー国の被害が流される。
やがて……
『……ムー国は首都に戦力を集中させたため、商業都市マイカルが手薄になっていたのですが、グラ・バルカス帝国は虚をつき、マイカルに艦隊主力を集中させました。
日本国は、各国の民並びに自国の国民を守るため、現地に来訪していた海上自衛隊に対し、このグラ・バルカス帝国艦隊の撃滅を指示し、日本海軍単独でグラ・バルカス帝国本国艦隊主力との艦隊決戦にもつれ込んだ模様です』
ニュースキャスターの表情は堅く、緊張感が見ている方にも伝わってくるかのようだった。
『なお、日本国海上自衛隊の護衛艦の損害についてですが、損失は……え?この数字は本当ですか?』
うろたえる。
テレビを見ていた者達は、何事かと画面に集中した。
『本当に間違って無いんですね?……解りました。ええ、失礼いたしました。
改めてお伝えいたします。日本国海上自衛隊と、グラ・バルカス帝国本国艦隊は、マイカル沖合において交戦いたしました。
同海戦に参加していたグラ・バルカス帝国艦隊は……壊滅いたしました。
全艦撃沈したとの事です。
一方日本国海上自衛隊の損害はゼロです。
1隻の損害も、1発の着弾も無く、グラ・バルカス帝国艦隊を殲滅したとの事です。
帝国大学軍事専門家のタイガー氏に話によりますと、信じられないような大戦果であり、……』
イルネティア王国王子、エイテスはニュースを見て震える。
日本国の力をもってすれば、蹂躙され、現在も屈辱的統治下にある自国を救えるかもしれない。
「び……ビーリー候!!」
「ええ、明日朝一で神聖ミリシアル帝国日本大使館を尋ね、その後すぐに日本国行きの天の浮き船便を取りましょう!!
忙しくなりますぞ!!」
「ええ!!構いませぬ。
国民のために全身全霊を捧げます!!」
二人は料理に手を伸ばす。
希望の光が見えた。
冷え切ったビール、祖国を救う僅かな希望の火がともる。
久々のアルコールは疲れ切った二人にとって、悪魔的においしい飲み応えだった。
◆◆◆
グラ・バルカス帝国 レイフォル海軍基地
「何故今まで黙っていた!!!迅速な情報の共有は戦の基本だろうがぁつ!!
貴様ら儂をなめとるのかぁつ!!!」
帝国東方艦隊司令長官カイザルの怒号が幹部室に響きわたる。
海軍幹部達は皆凍り付くが、一番凍り付いているのは今責め苦を受けている、海軍本省から派遣されてきた本部の者達であった。
「いえ、あまりにも内容が荒唐無稽であったため、まさかこのような……」
本省から派遣されて来た職員は、軍神とも言えるカイザルに怒鳴られ、生きた心地がしない。
グラ・バルカス帝国艦隊本国艦隊所属、第52地方隊「イシュタム」は、世界連合との決戦時、別働隊としてムー国の首都オタハイト並びに、商業都市マイカルに攻撃を仕掛けた。
結果本国艦隊は主に日本国海上自衛隊と交戦し、全滅する事となる。
当初、全艦が未帰還という事もあって、理由が判明せず、神聖ミリシアル帝国の空中戦艦によってやられたのではないかと、帝国海軍は全力で調査に乗り出していた。
やがて、ムー国に潜入していたスパイから、日本国海上自衛隊によってあっさりと葬り去られてしっまったという事が判明する。
本省に勤務する海軍上層部に衝撃が走った。
しかし、得られた情報源を確認すると、要人たったの1人からの情報であり、誤った情報である可能性が指摘され、情報の精査とさらなる情報収集を行っていた矢先、ムー大陸南東側に展開していた潜水艦のうちの1隻が、非常脱出装置で漂流していた乗組員数名を発見する。
同人達はひどく弱っており、回復を待って語られた真実は、スパイからの情報と同一であった。
激震が走る。
敵の使用した兵器、情報を精査し、対策を考え、ある程度まとめてから東方艦隊司令長官には報告しようと考えていた。
しかし、報告を前にして、ムー国からのテレビ情報で、本国艦隊が全滅していた理由をカイザルが知ってしまった。
しかも運の悪いことに、海軍本部は日本国が原因でイシュタムが全滅していたかもしれないという可能性を把握していたにも関わらず、カイザルに黙っていた事も伝わってしまう。
何らかの原因で本国艦隊が全滅したことは、カイザルは知っていた。
しかし、可能性の段階で自分に知らされていなかった事に対して怒りが収まらない。
一通り、烈火の如き怒りが吹き荒れた後、静かに会議は始まった。
編集氏が外伝2も頑張って書いてくれているみたいです。
話していると、面白くなりそうな予感がするので、個人的に超絶期待してます。いつ発売になるか解りませんが、外伝2もよろしくお願いします。(=゜ω゜)ノ




