16話 魔法のすゝめ ー始・魔力編ー
この世界の魔法システムがちょっとわかります
...
「はぁ...はぁ...」
「もう少しでつきますぅ...」
「お前もう直ぐなんだから後は自分で歩けよ!!」
「私体力無いんです〜」
拠点であるダンジョンを出てすぐの山を2時間歩き続けている、ミークが途中でダウンしたためアイザックが彼女を背負う形で斜面を上がっている。
「でもどうして魔法を覚える気になったんですか〜?」
「そんなの...決まってるだろ」
アイザックはあまりにも弱すぎる、前回の遠征でもずっと戦えず足を引っ張っていた、シオンにも戦力外通告され自分にも力があればと何度も思った。
情けなかった、愚かだった、何もできない自分が何かを成そうとする考えが浅はかだったのだ。
「俺は...無力だ、役立たずだ。だからせめてみんなの役に立ちたいんだよ...」
「....」
少し沈黙が流れた後、ミークが口を開く。
「アイザックさん...」
「何?」
「つきました」
「あ...あぁ?あぁ、そうか」
辿り着いた場所にあるのは小さな寂れた小屋、蔦が絡まっておりしばらく手入れもされていないのがわかる。
「師匠〜いますかぁ〜?」
「...」
「いないみたいです...まぁいっか」
ミークが蔦を引きちぎり小屋の扉を開ける、しばらくすると小さな木の箱を持って出てきた。
「それ何?」
「魔法適正を図る測定器です〜、これで適正のある魔法系統を測ってくれます〜」
「でた!そういうの!」
「でた!...とは?」
魔法がメインの異世界ラノベでよくあるやつだ、アイザックが読んだラノベの主人公は自分の魔法の適性を知り、自分の長所を伸ばす特訓を始めたりする(特訓せずとも最初から最強である場合が多いが)、中には潜在している魔力が強すぎて周囲を驚かせたらする展開もあるが。
「でもこれはまた後で」
「え、なんで?」
「この装置は魔力を扱えないと機能しないんです〜、まずは魔力を自由自在に放出できる術を身につけないと...」
「あ、あぁ...成る程」
魔力を近づけることでこの測定器は機能する。
ミーク曰く、魔法使い志望の冒険者が魔力を上手く扱えないか適正の問題で結局諦めて戦士職になる事もザラにあるとか。
補足になるがこの世界での戦闘者は大きく「戦士職」と「魔法職」に別れるそうだ。
戦士職は魔力で自身を強化してその肉体をもって最前線で戦う役職、戦士や盗賊、武闘家や弓兵がこれにあたる。
魔法職は複雑な術式を構築し魔法を行使する役職、僧侶や魔法使い、さらに構築の難しい魔法を使う賢者がこれにあたる。ちなみに割合は8:2だ、複雑な術式を一瞬で構築するのは難易度が高く、それ故に幅が狭いとの事。
「それではここに座ってください〜」
「うん」
小屋の前にある長椅子に跨り、お互いが向かい合わせの状態になる。
「これ見てください」
「ん」
ミークが自身の両手の人差し指をくっつけない程度に近づける、しばらくすると指の間に小さな赤い光が灯る。
「これが『魔力』です〜」
「おぉ」
「魔力自体は誰にでも流れる生命力のようなものです〜、生命力とは違いますが近い存在であり魔力の行使のしすぎは生命力にも影響を与えるので注意です〜、それを自在に操れるかどうかが魔法使いとしての才能に繋がります〜」
「ふむふむ...」
「これは私に流れる魔力を一点に集中したものになります、これさえできればひとまずは適性検査はできます〜」
「よし...わかった」
「私と同じように指を合わせてください〜」
「はい先生」
ミークと同じ体勢を作り指の間をじっと見つめる、しかしいくら待っても指の間の空間から光が出ない。
「んん...」
「深呼吸ですよ〜、はいっすぅ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜」
「すぅ〜〜」
「はぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜」
「はぁ〜〜〜〜〜ぁ、ぁ、げほっ、ふひー」
ちょっと待てなんだその肺活量、魔法使いってみんなこうなのだろうか。
「はい集中〜」
「ん...!」
「何も考えず精神を落ち着かせて、じっと指の間に集中しててください。感覚としては自分の身体中毛穴全てから煙が出てくるとして、その煙を抑えて指のみから放出させるようなイメージです〜」
「どういうこった」
「人によっては丸一日かかる場合もありますので、私は紅茶飲んでますのでそのまま続けててください〜」
「わ...わかった」
こうしてミーク=キャメル先生による魔法使いになるための修行が始まるのだった。
次回投稿は11/15 18:10!!
次回 クッキーこねこね編
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