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勇者は感染してました ーThe Beasted eMpireー  作者: 鶴見ヶ原 御禿丸
間章 魔王編

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13/37

13話 バッドエンドのその前の

実質0話です、勇者が魔王を倒すまで。あくまで番外なので文章形式はだいぶ違いますが、後々重要になる回なので温かい目で見守ってください。



 セルシ=アルバイエン、俺が魔王より人格を与えられた際に授かった名前だ。

 何も考えなくても良かった、ただ人間を狩って自分を創造した主君の恩義に報いる、それが何もない自分に辛うじて残った生きる意味。


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◼️月◼️日


 人格を貰った時点より俺は弓の才能があったらしい、自分が放つ矢に魔力を込めるなどの工夫をすれば城壁も軽く吹き飛ばす威力が出せるし、軌道も自在に曲げられる。

 しかし燃費が良くないため命中率を魔力補正なしで上げる必要がある、そのため物理学も並行して学ぶようにしよう。 そんな事して意味があるとは思えないが、どうせやることも無いのだからものは試しだ。


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◼️月●日


 しばらく経った頃、魔王アンタクティカより直々に侵攻の命令が下る。マナタン帝国をたった1人で落とせとの事。いやいや流石に無理があるぞ魔王様、俺まだ(人格を得て)2歳だぞ、本で読んだ事があるがマナタン帝国はこの大陸でもっとも魔法や魔道具の技術が進んでいる国で魔王軍を除くこの大陸で大戦争が起きたらまず一人勝ちできるレベルの強国だ。

 要するにこれはアレだ、一種の死刑宣告のようなものだ、最悪、遺書書いとこ。


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◼️月▲日


 生きて帰ったぞ!!やったぞザマァみやがれマナタン帝国。地底に存在している国というから入り口を爆破して塞いでやろうーーーとしたがそれは流石に阻止された、大量の爆撃を喰らって瀕死、敗走という形になるがなんとか生きて帰って来た、この戦いで俺は一皮むけた気がする。

 魔王は生きて帰った自分にドン引きしていた、向こうの戦力を確認したかったため俺を捨て駒にしようとしたらしい。


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▲月◼️日


 何十年たっただろうか、あの死ぬ思いをしてから気分が妙に楽だ、どのような戦いにも軽く乗り越えられるようになったしどいつもこいつも弱い敵ばかりだ。

 いや、弱いというよりは俺が強くなったという事なのだろうか。

 アレから数ヶ月が経ち、俺は背丈が伸び一軍を任されるようになった。いまだに死を覚悟するような任務は無い、小さな国や村を焼き払うだけの簡単な仕事。途中戦士や魔法使いと戦ったりもしたがどれも一撃で殺せる貧弱なものばかり。

 マナタン帝国で戦った機構星騎士(ステラ•マキナ)に比べれば火力が足りない。


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●月◼️日


 他の魔物を従えて人間という食糧を調達するため村を襲う日々、ある時魔王の住む王城へ招集がかけられる、この頃には魔王軍幹部の地位に上り詰めていたが全ての幹部を招集しての会議は100年ぶりだ。

 どうやらとてつもない力を持った戦士がチルド王国で召喚され、仲間を集めてこちらに向かっているらしい。

 王の間に緊張が走る、何故ならすでに幹部の1人がそいつに殺されているのだから。以降我々はそいつを愚かにも魔王に挑む勇ましき者、「勇者」と呼ぶことにした。

 

 会議の後、魔王に呼び止められる、研究室で話がしたいと。そこは魔王しか立ち入ることのできない極秘中の極秘の部屋、そこに招かれるのは魔王に信用されているということであり我々にとっては至極の喜びなんだそう(俺は興味無かったけど)。


 研究室は研究資料と思われる紙で覆い尽くされており、その紙を掻き分けて魔王がこちらに見せたのは、召喚の儀式についての書物。今日の魔王なぜかウキウキだ。

 そこにかかれていたのは異世界より眷属を呼び寄せる禁断の魔法、成功すれば強大な力を持つ従僕を手に入れられるのだという。

 つい先月に無限の魔力を得る炉心の研究をしていた事を指摘したら窓の方向を向いて無言を貫いた、これは頓挫した時の態度だ。

 


 ...まぁ、結局その実験は失敗に終わるんだが。


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●月▲日


 落ち込む魔王を慰めると原因の解明の任務を言い渡される(自分でやれよ...とか言ったら消し飛ばされる)

 どうやら召喚するにあたって術式の構築が甘かったそうだ、結果儀式は成功したものの顕現の時間と場所は完全ランダムとなり場所も不確定な所で召喚されるというシステムだ。(なんで?)


 ...魔王は泣いた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


●月▲日


 あれから研究室は出入りするようになったが、一つ気になるものがあった。

 それは人を「獣」に変えてしまうポーションだという、人だけでなく魔物や魔族、ありとあらゆる種族に対応しており、これを投与すると対象は際限のない「飢餓感」に襲われ知能も著しく低下してしまうとの事。

 さらに言えばこの成分は「病」の一種であり()()()()という特徴を持っている、魔王曰くこれができたのは偶然らしい。

 もしこれを使えば軍事力の大幅な強化に繋がる、書いている内容も実用的なものであり魔王軍の技術で再現は容易い、しかしこれの実現を魔王に提案すると...


「駄目だ」


 ーーーと恐ろしい形相で断られてしまった、魔王が魔王らしいオーラを放ったのは実に50年ぶりくらいだ。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


★月★日


 ついにこの時が来てしまった。

胸騒ぎがしたため侵攻を切り上げ魔王城に戻るとそこはすでに戦火に包まれていた。勇者が魔王城に辿り着いてしまったのだ。

 次々に挑んでは死んでいく同胞、幹部達、しかし魔王が俺に下した指示は戦闘ではなく研究室の焼却。

 死にゆく同胞のために俺も戦いたかったが魔王の命令は絶対だ、俺は泣く泣く研究室へとひたすら走った。


 しかし辿り着いた頃にはすでに研究室は炎に包まれていた、誰かが入ったかどうかはわからない、戦闘に巻き込まれて引火したかもわからない、とにかく俺の任務は完了だ。すぐに戻って戦いに加わらなければならない。

 そう思ってまた走る、こんなに動揺するのは何百年ぶりだろうか。


挿絵(By みてみん)

...



 戦いは終わった、魔王は死んだ。俺も戦いに加わったがアーシアという「老公」には手も足も出なかった。

魔物は殆どドリンク=バァに殲滅された、幹部の殆どはマンダカミアという魔法使いと老公に殺された、魔王は勇者が1人で倒してしまった。

 王城は瓦礫の山と化し、俺は魔王城からたった1人逃げた。


 魔王の最後の言葉は「しくじった」だ。あぁ、確かにしくじったよ、俺も...アンタも。


 だが残された者達のやる事は仇討ちだ、それが魔王の部下としての責務、俺は廃城を後にしチルド王国に向かって歩き出した。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


次回投稿はこの後 23:00!!

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