第26話 あなたと帰りましょう
『婚約破棄からの溺愛生活 竜人皇太子の番に選ばれました』
一迅社文庫アイリス様より6月20日に発売です。
イラストはなんと小田すずか先生!
今日から3日間、1日2話投稿しますので、よろしくお願いいたします!
想いが通じ合った私とシリウスは、互いに手を取り合いながら静かに部屋を後にした。
扉を抜けた先には、薄暗く長い廊下がある。
人の気配のないそこは、今は使われていない離宮のものだった。
どうやらあの魔方陣は、ここに繋がっていたらしい。
「よくここが分かりましたね」
そう言ってシリウスを見上げると、とろりと熱をはらんだ目で私を見たシリウスは、そっと首元のネックスに手で触れた。
「このネックレスが君の居場所を教えてくれた」
装飾となっている銀の鱗はシリウスのものだ。
私はずっと、シリウスに守られていたのね……。
感謝の気持ちをこめて、シリウスの手ごと、銀の鱗を両手で包む。
「ありがとう、シリウス様 」
微笑み合って、再び歩く。
長い廊下を抜けて外に出ると、そこには心配そうに待ち構えていたシャロンとアダムの姿があった。
離宮に漂う薄暗さとは対照的に、外の光が彼らの輪郭を鮮やかに映し出している。
私の姿を確認した瞬間、シャロンの表情が一気にほころぶ。
いつもは落ち着いて優雅な彼女も、この時ばかりは感情があふれ出しているようだった。
ドレスをたくし上げながら駆け寄ってきた彼女が、私の手をぎゅっと握りしめる。
「クリスティアナ様……本当に良かった……! 無事なお姿を拝見できて、これほど嬉しいことはありません!」
大きな薄青の瞳に涙が浮かんでいるのを見て、私の胸にも温かなものが広がる。
どれだけ心配をかけてしまったのか、彼女の震える声から痛いほど伝わってきた。
「シャロン、ありがとう。心配かけてごめんなさい」
私がそう言うと、シャロンは涙ぐみながらも安心したように微笑み、私の手を離さないまま振り返った。
「アダム、クリスティアナ様は無事ですわ! 本当に良かった……!」
シャロンの呼びかけに応えるように、近くで警戒を続けていたアダムが歩み寄る。
そのこげ茶の瞳が、無言のまま私をじっと見つめる。そして短く息を吐き、頭を深く下げた。
「殿下から頼まれていたのに、お守りできず申し訳ございません。この罰はいかようにでも」
アダムの言葉に、私は慌てて否定する。
「何を言うの。あれは不可抗力だわ。ねえシリウス様もそう思うでしょう?」
私はシリウスの袖を引いて訴えた。
確かに罠があるのは分かっていたけど、まさか王宮内にいて魔法陣で飛ばされるとは誰も思わなかったもの。
「防げなかったのは私も同じだ。だが二度目はない。精進しておくように」
「はっ」
番であるアダムが処罰されないことに安心したシャロンはようやく落ち着いたらしく、涙をぬぐいながら私の肩を優しく抱く。
「とにかく、お怪我がないようで本当に良かったですわ。さあ、もう離宮なんて不気味な場所からは離れて、宿に戻りましょう」
私が無事だと分かり、喜んでくれる仲間たちがいる。こうして手を取り合ってくれる人たちに支えられていることが、何よりも嬉しかった。
もういい加減決着をつけるべきだろう。
これからの、私たちのために。
でも今は……。
「帰りましょう、シリウス様」
あの、居心地の良い部屋へ。
「ああ、帰ろう」
私はシリウスの差し出す腕につかまる。
それだけで、絶対的な安心感に包まれた。
もしも「面白かった」「続きが気になる」などと思って頂けましたら、
広告下の【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にして応援いただけると嬉しいです。
どうぞよろしくお願いします!
いつも誤字報告をしてくださってありがとうございます。
感謝しております(*´꒳`*)




