表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
チートルーレット!~転生時に貰ったチートがとても酷いものだったので、田舎でのんびりスローライフを送ります~  作者: 宮本XP


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

93/748

第93話 VS歩きキノコ


 結果的に、一人での森歩きを許可されて早々、こっそり隣村の幼女に会いに来た僕。


 予想外の結果に、なんだか釈然(しゃくぜん)としないものはあるけれど、ディアナちゃんと話したいと思っていたのは確かだ。ひとまずは良しとしよう。


「何してんのアレク? あれ? 一人?」


「うん、まぁ」


「え、すごくない? もう一人でここまで来れんの?」


「うん。ボアを一人で倒して……一人で倒したのかな? まぁ一応倒したんだけど、そうしたらルクミーヌ村までは一人で出歩いてもいいって言われて」


「へー、すごいじゃんアレク」


「ありがとうディアナちゃん」


 ディアナちゃんが、僕をペシペシ叩きながら()(たた)えてくれた。


 このようにディアナちゃんは、少々言葉遣いが特徴的な幼女だ。そして年上に対する敬意が微妙に足りない気もする。

 けどまぁ、エルフなら二歳差なんてほとんど誤差なのかな?


「あー、だからアタシに会いに来たんだ? 二人っきりでお話したくて頑張っちゃったんだ?」


「えーと、そうだね」


「お、おう……」


 自分で振っといて照れるディアナちゃん。さすがに相手が九歳の幼女では、からかわれてもドギマギしたりはしない。したらまずい。


「じ、じゃあ、とりあえず遊ぼうよ。家でリバーシしよ?」


「リバーシ……」


「うん。今日も無敗記録を更新する」


「まぁいいけど……」


「じゃあ行こーよ」


「うん、そうだね。僕もディアナちゃんに話したいこともあったし」


 初狩りでナイーブになっているはずのディアナちゃん。僕としてはなんとか励ましてあげたい。

 エルフの(おきて)で、初狩りについての詳しい内容は言えないけれど、それとなく安心させてあげたい。


「えー? なにそれ? 真面目な話?」


「うん。とても真面目な話」


「えっ? そうなの?」


「僕からディアナちゃんに、大事な話があるんだ」


「えっ、えっ」


「ディアナちゃんに、伝えたいことがあるんだ」


「えっ……」



 ◇



 昨日は結局、ディアナちゃんの初狩りを応援しただけで終わってしまった。


 まぁ応援できたこと自体は良かったと思う。

 ……だがしかし、なんだか僕はディアナちゃんを勘違いさせてしまったらしく、話し終わったあと『なんだよもー、もー』と言われながら、ディアナちゃんに小突かれてしまった。


 最初、ディアナちゃんが何を不満そうにしているのか、僕はわからなかった。

 しかしながら僕は鈍感系主人公ではないので、告白だと勘違いさせてしまったことに、すぐ気が付くことができた。


 けれど、『あ、僕が告白すると思ったのか』と、うっかり口に出してしまったのは大失敗だったと思う。それはもう、鈍感系主人公以下の振る舞いだ。


 僕はディアナちゃんから本気の肩パンをくらって、『アレクはほんと、そういうとこあるよね』と、ガチ目の説教を受ける羽目になった。


 そんなディアナちゃんとの交流を終えた僕は、その後メイユ村に帰った。

 結局帰りの森でもモンスターに会うことなく帰還してしまった。どのモンスターとも出会わない――昨日はそんな日だったんだろう。


 こうして僕のソロハンター初日は、なんだか肩透かしをくらったまま終わってしまった。


「再チャレンジだ」


 今日はそのリベンジ。今日こそ大ネズミで実験してやろうと思う。


 決意を新たに森を進む僕。とりあえず昨日と同様、このままルクミーヌ村に着くのは避けたい。

 さすがに二日連続でこっそり一人で幼女に会いに行く事態は避けたいところだけど――うん?


「キノコが歩いている……」


 歩きキノコだ。

 右斜め前方に、身長一メートルほどの――身長? ……体長かな? まぁどっちでもいいか。体長一メートルほどの、二足歩行でテクテク歩くキノコを僕は発見した


 確かレリーナパパが好きなんだっけ? 目的の大ネズミじゃないけど、モンスターだ。討伐しよう。


 素早く決意を固めた僕は、矢筒から矢を取り出し、弓を構えて――


「『パラライズアロー』」


 安定の初手『パラライズアロー』だ。

 僕の声に気付いた歩きキノコがこちらに振り向いたが、もう矢は目前まで迫っている。歩きキノコは何もすることができず、その胴体部分に矢を受けた。


 しっかり『パラライズアロー』の効果が出たようで、歩きキノコは声も上げずに地面に倒れた。


 ……まぁ、歩きキノコは口がないから声は出さないんだけど。

 というか、耳もないよね? どうやって僕の声に気がついたんだろう……?


「あ、まだ動いている。やー、やー」


 倒れたまま痙攣(けいれん)する歩きキノコに、とりあえず追加で矢を二本放つ僕。


「……うん。倒したかな?」


 僕は歩きキノコが動かなくなったのを確認してから、そろりそろりと近寄る。近くでじっくりと観察するけど、歩きキノコはピクリとも動かない。


「倒したみたいだ」


 矢でツンツンと歩きキノコの足を(つつ)いてみるけど、歩きキノコは動かない。

 もう歩くこともないだろう、歩きキノコなのに……。そう思うと、なんだか少し切ない気持ちになった。


 僕は周りを警戒しながら、歩きキノコの解体に取り掛かった。と言っても歩きキノコは全身キノコなので、内臓や骨もない。全身キノコなので、全身を持って帰る。

 解体作業は、マジックバッグに入れられるくらいのサイズにナイフで切断する作業となる。


「よし、先に進もう」


 無事に歩きキノコを討伐、回収した僕は、再び大ネズミを求めて歩き出す。


 ……よく考えると、さっきの歩きキノコが、ソロハンターとして最初のバトルだったのか。

 次のバトルはどのモンスターが相手だろう? 大ネズミが出るといいな――



 ――その日、僕は合計五体の歩きキノコを討伐してからメイユ村に帰還した。

 なんだか歩きキノコばかりと出会う日だった。きっと今日はそんな日だったんだろう。


 とりあえず未だお子様の僕は、キノコがそんなに好きではない。

 仕方ないので自宅に戻る前、レリーナ宅に寄って、レリーナパパに五体全部押し付けてから自宅に戻った。


 明日は大ネズミに会えるだろうか。





 next chapter:VS大ネズミ

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ