第751話 アイテムボックス探索隊6 ――アレクの私物
引き続き、ナナさんと一緒にアイテムボックス探索である。
そして目指すは――さくさく探索。僕とナナさんという脱線コンビではあるけれど、それでもあくまでさくさく探索を目指していこう。
「じゃあナナさん、ひとまずこの部屋の調査はこれくらいでいいかな?」
「そうですね。そうなのですが――ひとつだけ聞かせていただいてもよろしいですか?」
「うん? 何かな?」
「これはなんでしょう?」
そう言って、ナナさんが指さした棚の上には――
「ああ、ヒカリゴケだね。僕が生成したヒカリゴケ」
「やっぱりそうですよね、ヒカリゴケだとは思いました。マスターが収納したのですよね?」
「そうだね」
まぁヒカリゴケの見分け方とかわかんないし、僕が生成した物かどうかの判別とかもよくわかんないけど、それでもここは僕の保管庫っぽいし、その中にあるヒカリゴケなら僕のヒカリゴケで間違いないだろう。実際僕も以前にヒカリゴケを生成して収納した記憶がある。
「……何故ヒカリゴケを溜め込んでいるのですか?」
「ふむ」
ナナさんの疑問はもっともだ。それは確かに疑問に思うだろう。僕ならば、いつでもどこでもどんなヒカリゴケでも生成することができる。それなのに、何故わざわざアイテムボックスに溜め込んでいたのか。
過去を振り返ると、検証のためにヒカリゴケを収納したこともあったけど、このヒカリゴケはそういうわけでもなくて、ちゃんと別の理由がある。
そして、その理由というのが――
「このアイテムボックスに溜めておけば――誰でも使うことができるでしょ?」
「……はい?」
「アイテムボックスにアクセスできれば、誰でもすぐにヒカリゴケを取り出すことができるんだ」
僕以外の、ミコトさんやヘズラト君でも、アイテムボックスに手を伸ばしてヒカリゴケを取り出して、すぐさま使うことができる! そのために溜め込んでおいたのだ!
「……何に使うんですか?」
「…………」
まぁそれは知らんけど……。
◇
通路の十字路まで戻ってきた。
十字路を右に曲がると、さっきの保管庫につながっている。なので次は、真っ直ぐ進むか左へ進むかの二択である。
「さて、どうしようか?」
「ひとまず左に曲がってみましょうか」
「よし、じゃあ左で」
というわけでナナさんと一緒に十字路を左に曲がる。ここからは未探索エリアだ。ちょっとドキドキしながら通路を進む。
そして、しばし進むと――
「新たな部屋ですね」
「そのようだ。入ってみよう」
そして、部屋の入口をくぐると――
「木材ですね」
「木材だね」
「大量の木材ですね」
「大量だねぇ」
部屋を埋め尽くすように、とんでもない量の木材が並べられていた。見渡す限りの木材である。
「……というか、部屋広くない? なんだか学校の体育館みたいになっているんだけど」
「そうですね……。どうやらこの部屋には木材しか置かれていないようですが、それでも大量の木材を保管するため、部屋自体が大きくなっているようです」
「荷物に合わせて、部屋自体が変わるのか……」
「非常に興味深いです。部屋のサイズもそうですし――見てください、棚の形状も変わっています」
「うん? おぉ、本当だ」
先程の部屋の棚は、腰くらいまでの高さがあったはずだ。しかしこの部屋では、棚と呼ぶにはあまりにも低く、注視しなければ気付けない程度のちょっとした段差になっていて、その上に大量の木材が積まれていた。
確かに興味深い。とりあえず木材はひとまとめにして大部屋に保管して、木材だから棚に高さはいらないと判断したらしくて――しかし、それは誰が? その判断は誰がしたんだ? やはりアイテムボックスの精霊さんが……?
「ちなみにこれは、マスターが収納した木材ですか?」
「うん、元々持っていた木材は、全部アイテムボックスに入れたから――あ、でも僕が入れた物だけではないのかな? 木材はヘズラト君も入れていたはずだし」
ヘズラト君の分がどうなっているかはわからない。さすがに木材は木材だし、まとめて置かれているのかな? それともヘズラト君の分は別の部屋があったりするのだろうか?
「いろいろと興味深くはありますが――とはいえ、結局木材が並んでいるだけですからね。少し見たら早めに通路へ戻りましょうか」
「ふむ……」
それはナナさんの言う通りなのかもしれないけれど……でも、その反応はちょっと寂しくもある。
これらの木材は、今まで僕が溜め込んできた木材で、いわば僕のコレクションなのだ。それをさらっと流されるのも少し寂しい。せっかくだし、多少はナナさんにも興味をもってもらいたい気持ちがないこともなくて……。
「一応、解説とかはできるよ?」
「はい?」
「良い木材と、そうでもない木材の解説とか、どの木材がどんな木工品に合っているとか、そういう解説もできるけど」
「はぁ……」
どうかな、これだけの木材があって、木材を解説できる僕もいるのだし、ここはあえてじっくり時間を掛けて見物するというのも、ひとつの手ではなかろうか。
「――さくさく探索ですよマスター」
「む……」
「それはもちろん私もマスターのお話を聞きたいです。じっくりマスターの木工論を拝聴させていただきたい気持ちでいっぱいなのですが、さくさく探索のためには諦めなければならないこともあります。――というわけで、今回ばかりは諦めて通路まで戻りましょう」
「そうかぁ……」
さくさく探索を口実に、さくっとあしらわれた感がすごいな。
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