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チートルーレット!~転生時に貰ったチートがとても酷いものだったので、田舎でのんびりスローライフを送ります~  作者: 宮本XP


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第74話 異世界転生者力と主人公力


 名前:アレクシス

 種族:エルフ 年齢:9 性別:男

 職業:木工師見習い

 レベル:10(↑1)


 筋力値 6(↑1)

 魔力値 4(↑1)

 生命力 6

 器用さ 15(↑1)

 素早さ 2


 スキル

 弓Lv1 火魔法Lv1 木工Lv1


 スキルアーツ

 パラライズアロー(弓Lv1) ニス塗布(木工Lv1)


 称号

 剣聖と賢者の息子



「あ」


「あ」


 マジか……。主人公だわ……。


「やりましたねー! おめでとうございますー!」


「いやぁ、ありがとうございます!」


 レベル10達成を祝福してくれるローデットさんに、僕は笑顔で応えた。


「アレクさんすごいですー。……正直なところ、私は無理じゃないかと思っていたんですー」


「えぇ、まぁそれは……」


 うん。ローデットさんが期待していなかったのは、薄々勘付いてはいたけどね……。


 というか、正直僕もちょっと無理だと思っていた。異世界転生力とか主人公力とか言って自分を鼓舞していたけど、内心無理だろうと諦めかけていた。


「一昨日は確かにレベル9でしたから、この三日間で上がったんですねー」


「そうですね――ん?」


 いや……違う、違うな。


 普通のレベルアップならそう考えるべきだけど、今回はレベル10に到達したレベルアップだ。

 それならば、レベルが上がったその日の夜、僕が眠った時点で例の会議室に転送されたはずだ。

 そして、一昨日も昨日も僕は会議室に呼ばれなかった。


 だとすると……今日の朝からさっきの鑑定まで――そのどこかで僕はレベルが上がったのだと推測できる。


「どうしたんですかー?」


「え? あぁ、いつレベルが上がったのかなぁと思いまして」


「あー、レベルアップって実感ないですよねー。いつの間にか上がっている感じでー」


「ですねぇ」


 やっぱりみんな気づけないものなんだな。……もしかしたら、みんなもファンファーレを求めているのかもしれない。


「アレクさんは毎日真面目に訓練されているそうですから、その訓練中に上がったんでしょうけどー」


「はい、たぶん……そうですかね」


 レベルが上がったのは今日で確定した。そして今日は木工しかしていない。となると――


「ユグドラシルさんの人形――ユグドラシル神像を彫っていたので、それで上がったんですかね?」


「へー、ユグドラシルさんの」


「もしかして、御利益みたいなものがあるんでしょうか? なんといっても僕らの神様ですから、普通の人形を作るよりも経験値を多く貰えたり?」


「別に経験値は普通の人形と変わらないと思いますけど……。あ、私の人形でも貰える経験値は同じだと思いますよー?」


「そうですか……」


 ローデットさんがチラッチラッと僕を見ながら、何やらアピールしてきた。また自分の人形が欲しいのかもしれない。


 いやしかし、仮にも教会の人間が『ユグドラシル神像も、ローデット人形も変わらない』と言ってしまっていいのだろうか……?


「そういえば今日ユグドラシルさんが、僕の家に来ましたね」


「ユグドラシルさんが?」


「なんだか明日の応援に来てくれたみたいで――――あ」


 ……あぁそうか、アレだわ。


「どうかしたんですかー?」


「えぇと、ユグドラシルさんにフラフープで腕と側頭部を攻撃されたのを思い出しまして……」


「フラフープ? あー、あの竹の玩具でしたっけ? ……え、なんでフラフープで側頭部を?」


「まぁそれはいいんですが」


「いいんですか……?」


「いえ、別によくもないんですが……」


 そりゃあよくはない、よくはないよ。僕だって、別に喜んで側頭部を差し出したわけじゃない……。


「とにかく、ユグドラシルさんのフラフープを受けたことでレベルが上がったんだと思います」


「あー、前にもありましたねー。ウッドクローでしたっけ?」


「ええ、はい」


 そう呼ぶと、ユグドラシルさんは怒りますけど。


「あ、そういえば私もあのウッドクローでレベルが上がってたんですよねー」


「へぇ、そうなんですか、おめでとうございます」


「ありがとうございますー」


 ローデットさんは無料ですぐに鑑定できるんだよな……。従業員特典ってやつか。ちょっと羨ましい。


 ところで、『レベルいくつになったんですか?』とは、やっぱり聞いたらまずいのだろうか?

 他人のステータスは聞かないのがマナーらしいけど、レベルもダメなのかな? そこらへんの感覚が未だに掴めない。


「じゃあ今回も、ユグドラシルさんのおかげだったんですねー」


「はい。『生命力』が上がっていないので、そこまで多くの経験値ではなかったようですが、最後の追い込みというか、最後のひと押しを」


「なるほどー」


 ふーむ……。結局は世界樹式パワーレベリングの効果だったのか。


 主人公らしくギリギリで奇跡を起こしたとか、ご都合主義が発動したのかと思ったけど、よくよく考えたら必然と呼べるものだったんだな。

 初狩り直前でレベルが上がったのは、初狩り直前でユグドラシルさんが来てくれたから――ってだけだったんだ。


 なんだか少しガッカリかもしれない。もちろんレベルが上がったのは嬉しいし、ユグドラシルさんには感謝しかないけど……僕の異世界転生者力や主人公力が発揮されたわけじゃなかったのか。


 まぁそうか、そうだよな……。初っ端からタワシを引いている時点で、僕の異世界転生者力は諸先輩方よりもだいぶ低いのかもしれない……。


 うわっ、僕の異世界転生者力、低すぎ……。


「アレクさん……?」


 僕が自分の異世界転生者力と主人公力の低さを嘆いていると、ローデットさんに心配そうに声を掛けられた。


「ああいえ、どうにか頑張ってレベルを上げることができたかと思ったのですが、結局ユグドラシルさんに助けられただけなんだなぁと……」


「そうですかー……」


「頑張って、目標を達成できたと思ったんですけどねぇ……」


「んー……。けど、今まで頑張ってきたから、ユグドラシルさんの最後のひと押しでレベルが上がったんじゃないですかー」


「それはまぁ……」


「ユグドラシルさんだって、アレクさんの頑張りを知っていたから、初狩りの応援に今日来てくれたんですよね? ……やっぱりこのレベルアップは、アレクさんが今まで頑張ってきた結果なんだと、私は思いますー」


「…………」


「だから、アレクさんはもっと自分を誇っていいと思いますー」


 ローデットさんが、良いことを言っている。とても良いことを言っている……。

 なんだか、初めてこの人のことを、教会に仕える修道女なんだと思うことができたような……。


 ……いやー、けどなー。そんな良いことを言い出しちゃったら、ローデットさんのキャラがブレちゃうんじゃないかなー?


 ローデットさんは、もっとやる気がなくて、だらしない感じじゃないとなー。

 とりあえずまぁ、励ましてくれたし、一応感謝はしますけどねー――


「あ、ありがとう…………ございばず……」


 ……後半、涙声になってしまった。


 頭の中で、散々茶化してみたけれど、やっぱりダメだった……。なんだか感情を抑えきれなかった……。


 だって頑張ってきたんだもの……。その頑張りを認めてくれたんだもの……。





 next chapter:木こりには、なりませんけど……

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