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チートルーレット!~転生時に貰ったチートがとても酷いものだったので、田舎でのんびりスローライフを送ります~  作者: 宮本XP


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第729話 総集編16 ――エルフの掟達成のご報告


 ――ひとまずユグドラシルさんと一緒に、自分の部屋まで移動してきた。

 ユグドラシルさんと二人で話したいこともあったので、ちょうどリビングにやってきた父に、妹の子守りを交代してもらった。

 ちなみにだが、セルジャンガラガラもしっかり父に受け渡した。セルジャンガラガラの笑顔に対し、やはりセルジャン氏本人はちょっぴり渋い顔をしていたが、とりあえず渡しておいた。


 さておき、そんなわけで自室へと戻ってきた僕とユグドラシルさんであったが――


「というか、こうしてちゃんとお話するのも久しぶりですよね」


 かれこれ一年ぶりで――あ、いや、ユグドラシルさんは途中まで旅に付いてきてくれたので、大体十ヶ月ぶりとかになるのかな? それでもずいぶんと久しぶりだ。


「そうじゃのう。一応アレクが帰ってきたときに、軽く声だけは掛けさせてもらったが」


「あのときは一言(ひとこと)二言(ふたこと)の挨拶程度でしたからねぇ」


 ユグドラシルさんも僕の凱旋パレードには来てくれたのだ。そして、おめでとうと声を掛けてもらった。


「なので僕としては、家に帰ったらユグドラシルさんも居るものだと思っていました」


「ふむ。実際アレクが帰ってくるまでは泊めてもらっていたのじゃが――とはいえ、アレクも一年ぶりの実家じゃろう? ここは家族水入らずで過ごした方が良いと思い、わしは先にお暇させてもらったのじゃ」


「おぉ、そんなことが……」


 さすがである。そういった細やかな気遣いもできる、さすがのユグドラシルさん。


「いやでも、ユグドラシルさんに限ってはそんな遠慮いらないですって」


「む、そうか」


「家族水入らずとのことですが、たぶん母とかユグドラシルさんのことも娘だと思っていますよ」


「それはそれでどうなのじゃろう……」


 なんなら不敬とも言える。

 でもまぁ、それくらい僕達はユグドラシルさんに対して親愛の情を抱いているのだと、そこをわかっていただきたい。


「まぁそんなわけで、僕としても久しぶりにゆっくりユグドラシルさんとお話ができて嬉しいです。改めてになりますが、こうして無事に戻ってまいりました」


「うむ。お疲れアレク」


「ありがとうございます。一年間の旅を――いや、途中でチートルーレットの天界滞在があったため、合計一年十ヶ月ですね。それだけの期間旅をしてきたわけです」


「む? うむ。そうじゃな、長い間よく頑張ったのう」


「ありがとうございます。そして見事にエルフの掟を達成して――一時はもう無理なのではないかと噂され、最後の最後まで予断を許さない辛く険しい試練の旅路ではありましたが、決してひるむことなく不撓不屈の精神で立ち向かい、ようやく念願であったエルフの掟を達成し、立派に故郷へと凱旋した僕なのであります」


「う、うむ。そうか、大変じゃったな。えらいぞアレク、よくぞ成し遂げた」


「ありがとうございます」


 やはりユグドラシルさんだな。ナナさんの1.8倍褒めてくれる。しっかり(ねぎら)ってくれるし、アメもくれる。これでこそ頑張ってきた甲斐があるというものだ。


「しかし、確かにここまで長かったのう。発端となったのが――瘴魔の刻に倒したワイルドボアか、あれがいつのことじゃ?」


「あー、懐かしいですね。あれは確か十四歳でしたか」


「そうか、そういえば『十五歳までにワイルドボアを倒す』という条件じゃったな」


「そうですね、条件ギリギリのタイミングだったはずです」


 その一ヶ月後には十五歳の誕生日を迎えていたと思う。つまりあと一ヶ月遅ければ、これまでの世界旅行はなかったのだ。

 あのときは『もう一ヶ月遅ければ、世界旅行なんて行かずに済んだのに』とタイミングの悪さを呪った記憶があるけれど――今は逆だな。世界旅行での経験や出会いを考えると、今はむしろあのタイミングに感謝せずにはいられない。


「うむ。そもそもの目的が、十五歳までにワイルドボアを倒せるほどに優秀なエルフならば、若い内から外の世界を知っておくべきという……若い内から……」


「ええまぁ、若い内から……」


「それでいうと、アレクはもう成人を迎えているわけじゃが……。もう二十一歳なのじゃが……」


「…………」


 まぁエルフってことを考えると、まだまだ全然若いんだけどね……。でもたぶん想定しているのはもっと若い内だよね……。成人して、青年と呼べるまで年を重ねたら、もうあんまり若い内とは言えないのかな……。


「……あー、とはいえ、それでも若い内から旅に出て、しっかり世界を見て回ったことは間違いない」


「あ、はい、それはそうですとも、ちゃんと見てきましたとも」


 記念すべき第一回世界旅行は、僕が十六歳の頃だったかな。それなら確かに若い内と言えそうな気もする。

 まぁそれで世界を見て回ったかと言うと……やはりそこに関しても『隣村と隣町しか見ていないじゃないか』という厳しいご意見が飛んできそうなものだが……。

 でもほら、一応は外の世界だから。エルフ界を飛び出して頑張ってきたのは本当だから……。


「というわけでアレクよ、これを受け取るがよい」


「はい、こちらは――」


「世界樹の枝じゃ」


「おぉ、ありがとうございます」


 いつものやつだね。いつものご褒美の枝。

 なんだかんだで僕も頑張ったのだと自分を納得させて、ありがたく頂戴しようではないか。


「しかも二本じゃ」


「え? 二本?」


「さっきのは掟達成のお祝いで、これは世界旅行の記録更新のお祝いじゃ」


「なるほど……ありがとうございます」


 これは予想外。なんと二本もいただけた。まさかの二本目。二倍感謝せねば。


「それから二十一歳の誕生日を迎えたということで、もう一本」


「おぉ……」


 まさかまさかの三本目。エルフの掟達成と、世界旅行の記録更新と、誕生日プレゼントで合計三本。なんという大盤振る舞い。


 ありがたい。非常にありがたいが……でもなんだろう。なんとなくだけど、教会での僕に似ているような……。

 教会で、お布施とか迷惑料とか応接室使用料とか、適当な理由をでっち上げて貢いでいる僕に似ているような気がして……。いや、たぶん違うのだろうけど、さすがに一緒にしてはいけないのだろうけど……。





 next chapter:教育上、好ましくないのではないか

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― 新着の感想 ―
もう完全に貰い慣れてるけど、本来垂涎の的なんじゃ…? それで杖だの弓だの矢だの作ったら伝説級のチート武器になるんじゃ…?
ユグドラシルさんは親心とか孫にプレゼントとかそういう純な気持ちだからそのアレクと一緒にするのは、ね?
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