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チートルーレット!~転生時に貰ったチートがとても酷いものだったので、田舎でのんびりスローライフを送ります~  作者: 宮本XP


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第711話 リュミエス人形


 ――僕一人でお皿作りである。

 いっそのこと、お皿作り要員としてジェレパパさんを招集しようかと考えたのだけど、それはさすがにどうなのかとジスレアさんから苦言を呈されてしまったため、一人で粛々とお皿作りを続ける僕なのであった。


「とりあえずお皿が完成したら、私がメイユ村まで届けに行く。そこは安心してほしい」


「はい、ありがとうございますジスレアさん」


 うん。それはありがたい。本当にありがたい。

 お皿作りにも時間が掛かるし、ここからメイユ村への輸送も時間が掛かるからな。そこをジスレアさんが単身でササッと届けてくれるのはありがたい。

 じゃああとは作るだけだ。とりあえず一人で作ることが決まって、年末までに作ればいいことが決まって、前回と同じで四百枚くらい作れば――


 ……なるほど。たった一人で四百枚のお皿を孤独に作り続ければいいのか。そして僕は、みんながお皿を貰って喜ぶ姿すら見ることはできないのか。


「……なんだか疲れたので、少し休もうかと思います」


 改めて状況を整理したところ、そのあまりにも絶望的な状況を目の当たりにしてしまい、へにゃへにゃと力が抜けてしまった。お皿作りは一休みして、別のことをしよう。


 で、そんな僕が何をするかというと――


「…………」


「あ、はい、リュミエス人形ですね? 作りますよー。今から再開しますねー」


 今まではゆったりゆるゆると部屋でベースを弾いていたリュミエスさんが、スススっとこちらへ寄ってきた。

 作業の見物なのだろうけど、ちょっとだけプレッシャーを感じる。はよ作れということなのかもしれない。


 というわけで、最近はこんな感じの流れで作業を進めることが多い。黙々とお皿を作り続けて、疲れたらリュミエス人形製作に切り替えるというルーティーン。

 木工の息抜きに木工という、木工エルフの鏡のような生活である。


「とはいえ、これだとどうしても人形の完成までは時間が掛かってしまいますよね」


「…………」


「リュミエスさんも楽しみにしてくれているようで、申し訳ないのですが……」


「…………」


「ただ、僕的には良い気分転換になっていまして、楽しく作業できているのも事実であります。それは作品にも良い影響を与えているはずで、そのあたりをご理解いただき、何卒ご容赦いただけますと……」


「…………」


「そうですか、ありがとうございますリュミエスさん」


 てな感じで、リュミエスさんも快く了承してくれた。

 ……うん、まぁわからんけどね。たぶん許してくれただろうっていう、僕の予想でしかないんだけども。


 もしかしたら、リュミエスさんも本心では『皿はええねん、はよ作れや』って考えている可能性も……。

 いや、たぶんないとは思うんだけど……。というか、とりあえず関西弁ではないと思うのだけど……。


 まぁそんな感じで作業は続く。

 はてさて、リュミエス人形完成まであとどれくらいかかるのやら……。



 ◇



 一ヶ月かかった。

 あれから一ヶ月が経過して、ようやくリュミエス人形が完成した。


「時間は掛かりましたが、我ながら良い物を作れたと自負しております」


 ついに完成したリュミエス人形。漆黒のドレスに身を包み、荘厳で静謐な美しさを放つ女性のフィギュアとなっている。

 良いね。良い出来だ。あるいはお皿作りの合間に作ったのが本当に良い効果を生み出したのかもしれない。時間を掛けて毎日ちょっとずつ作業を進めたのは間違いないわけで、この製造工程が功を奏した可能性。


「うん、良いんじゃないかな」


「キー」


「…………」


 この出来栄えに、ジスレアさんやヘズラト君も絶賛してくれている。

 そしてリュミエスさんも…………うん、まぁリュミエスさん本人だけは反応がいまいち掴めないままだけど、普段の様子から完成を楽しみにしていてくれたことは間違いないはずだし、とりあえず渡してみようではないか。


「ではリュミエスさん、お待たせしました。こちらをどうぞ」


「…………」


 そうして僕はリュミエス人形を手に取り、リュミエスさん本人に手渡した。

 すると――


「ありがとうアレク」


「…………!!」


 リュミエスさんの声! 久しぶりの声! 久しぶりにお声がけいただいた!


 あー、もうズルいなー。それはズルいよリュミエスさん。

 そんなんされちゃうと、むしろ僕の声が出ないってもんだ。その一言をもっといただくために、もう僕はなんでもやってやろうって気持ちになってくる。

 いやはや、恐ろしいね。恐るべし魔王様の人心掌握術。


「あれ?」


「はい? どうかしましたかジスレアさん」


 無事に人形を渡し終えて、僕が魔王様に忠誠を誓おうとしたところで、ジスレアさんから疑問の声っぽいものが漏れた。どうしたというのだろう。


「確かその人形は――指名依頼なんじゃなかった?」


「……指名依頼?」


 ――あ、そっか。そういえばそうだ、指名依頼だ。

 なんかもうすっかり忘れていたな……。元々の始まりは、ギルドポイント不正受給作戦の一環として指名依頼をこなす予定だったんだ。その依頼内容として、リュミエス人形を作ることになったんだ。


 そして僕はギルドで依頼を請け負った。なのでこの人形は、リュミエスさんに直接渡すのではなく、ギルドに納品しなければいけないわけで……。


「あの、えっと、リュミエスさん……。誠に申し上げにくいのですが、その人形は一旦返していただけると……」


「…………」


 ごめんて……。本当にごめんて……。





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― 新着の感想 ―
指名依頼アイテムボックスの検証の間ほったらかしだった疑惑…
「」に点々以外が入ったのすっごい久しぶりだからアレクがヒャッハーするのわかるわ。
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