第681話 目指せレベル45!
「この、この」
「あぁ、そんな! ダメです! やめてくださいエルザちゃん!」
ラフトの町の教会に、単身乗り込んだ僕であったが――今はこれでもかとエルザちゃんにスペード尻尾で膝小僧を責め立てられていた。
こうなった理由としては――
「何故なのアレク? 何故魔王様をお誘いしなかったの?」
――とのことである。
やはり魔族のエルザちゃんからすると、魔王リュミエスさんは特別な存在であり――というより、神なのだそうだ。
エルフ族にとってのユグドラシルさんとか、人族にとってのディースさんのように、魔族の人にとってリュミエスさんは神のような存在として認識されているらしい。
まぁそう聞くと、ますます魔族のエルザちゃんが人族の教会で修道女をしている状況の複雑さを感じてしまうわけだが……うん、それはさておき、そういうわけでせっかくなら敬愛する魔王様もお連れしてこいと、ご立腹の様子なのだ。
教会に着いて、僕からエルザちゃんに『さっきまでは一緒に居たんですけどねー、もう宿へ帰ってしまいました』と伝えたところ、この有り様である。
「何故そこで、『一緒に来てくれたらエルザちゃんも喜んでくれると思いますし』と言うことができなかったの?」
「あ、それ言いました! 僕も一応はそう伝えたのですよ!」
なんなら一言一句同じセリフである。軽く奇跡。
「本当に? 本当に心から誘ったの? さすがのアレクも、私に責められて喜んでいる姿は他の人に見せられないとか、そんなふうに考えたりしなかった?」
「いや、そんなことは――」
……まぁ確かに見せられない姿ではある。
リュミエスさんにもヘズラト君にも、こんな僕の姿はとてもじゃないけど見せられない。
「まぁいいわ。今日はこれくらいで勘弁してあげる」
「あ、はい。ありがとうございました」
落ち着いたらしい。というより、たぶんエルザちゃんも本当はあんまり怒ってない。実はここ数日で毎回繰り返されている流れであり、もはやここまでがお決まりのルーティーンだったりする。
「私としては残念だけど、やっぱり仕方がないわよね」
「おや、そうですか、ご理解いただけますか」
「なんと言っても魔王様だし、やっぱり忙しいわよね」
「そうですねぇ」
……そうなのかな? それはどうなのかな?
「その点、アレクは暇そうよね」
「え? いやいやいや、むしろとても忙しく活動している最中ですが?」
「そう? 毎日毎日教会通いなんて、暇じゃなければできないでしょう?」
「別に僕も、暇を持て余して教会に遊びに来ているわけではないのですが……」
どうにかレベルを上げようと、日々ダンジョンマラソンと教会通いを頑張っている僕なのですよ……?
「でも、エルザちゃんには申し訳なく感じています。エルザちゃんも暇ではないでしょうに、こうして毎日付き合わせてしまっていますゆえ」
「別にそれはいいけどね。なんだかんだアレクと話すのは楽しいし」
「おっと、それはそれは……」
普通に照れる。
「あー、まぁその、でもやっぱりご迷惑をお掛けしていますし、僕から何かお返しができたらいいのですが」
「えぇ? そんなの別にいいのに」
照れ隠しに、そんな提案をしてみたりして。
何がいいかな。エルザちゃん個人に喜んでもらえる物もいいけれど、毎回教会にご厄介になっているわけだし、教会にもプラスとなる物がいいかもね。
「――あ、そうだ。顔出しヘズラト君パネル」
「ん?」
「検問の近くに置いてあるじゃないですか」
「ああ、アレクが作ったとかいう、ヘズラトのパネルよね?」
「あのパネルを教会に寄贈したら、喜んでもらえますかね?」
「え、ヘズラトの顔出しパネルを?」
「あ、いえ、ちょっと違くて――創造神ディース様の顔出しパネルです」
「…………」
どうだろう。教会への寄贈品としてはピッタリじゃない? これを置けば礼拝する人とかも増えそうな予感。
「とんでもないことを考えるわね……」
「あれ? ダメですかね?」
「とんでもなく不敬な行為に当たるのではなくて……?」
「そうなんでしょうか……」
創造神様本人は喜んでくれそうな気がするんだけどな……。ノリの良い人だし、今も天界で笑っていそう。
「あー、でもエルザちゃん的には魔王様の方がいいですか?」
「え……? 人族の教会に、魔王様の顔出しパネルを置こうとしているの……?」
「やっぱりちょっと変ですかね?」
「すごいわねアレク……。あらゆる意味で不敬だわ……」
◇
結局パネルの寄贈は遠慮されてしまった。なんとも慎み深いエルザちゃんである。
まぁそんなエルザちゃんだが、どうにかお布施と鑑定代と迷惑料は受け取ってもらい、いざ鑑定の時間となった。
「さて、今日はどうかしらね」
「…………」
「ん? アレク?」
「……まぁ、ちょっと厳しいとは予想しているところです」
少し考えてから、そう言葉を漏らした。
「えぇと、そうなの?」
「なにせ最近戦っているのは歩きキノコばかりですからね。そのせいで、獲得できるギルドポイントも僅かなものでした。なのでやはりレベルアップの方も厳しいのではないかと……。というか、たぶん無理でしょうね」
「ずいぶんと後ろ向きね……」
「ふふふ……」
「なんで笑っているの……?」
実はこれ――作戦である。
こんなふうにあえて後ろ向きなことを言って、失敗を予感させることにより――逆に成功するフラグを立ててみようという作戦。そんな逆フラグ作戦。
「ではでは、鑑定してみます。無理だとは思いますが、なんなら無理だと確信していますが、一応鑑定です」
「まぁそう言わずに……。やってみないとわからないわよ」
「ふふふ……」
「なんなの……?」
では鑑定だ。もう十分に逆フラグは立てられたと思う。果たして結果や如何に。
……でもまぁ、先程からあまりにも露骨に逆フラグを立てすぎて、逆の逆でむしろ本当に失敗フラグになってしまったような気もして、もはや何がフラグで何がフラグでないのか、フラグとはいったいなんなのかわからなくなりつつあるが――とりあえず鑑定だ。
さぁ、果たして結果は――
名前:アレクシス
種族:エルフ 年齢:20 性別:男
職業:木工師
レベル:45(↑1)
筋力値 26
魔力値 22
生命力 20
器用さ 65(↑3)
素早さ 7
スキル
剣Lv1 槌Lv1 弓Lv1 火魔法Lv1 水魔法Lv1 木工Lv2 召喚Lv2 ダンジョンLv1
スキルアーツ
パリイ(剣Lv1) パワーアタック(槌Lv1) パラライズアロー(弓Lv1) ニス塗布(木工Lv1) レンタルスキル(召喚Lv1) ヒカリゴケ(ダンジョンLv1)
複合スキルアーツ
光るパリイ(剣) 光るパワーパリイ(剣) 光るパワーアタック(槌) 光るパラライズパワーアタック(槌) 光るパラライズアロー(弓)
称号
剣聖と賢者の息子 ダンジョンマスター エルフの至宝 ポケットティッシュ
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