第680話 目指せEランク!
ラフトダンジョン第15階層を制覇した僕とリュミエスさんとヘズラト君の三人は、「お疲れ様でしたー」とハイタッチを交わし、キリのいいところで攻略を切り上げ、ダンジョンを後にし、町へと帰ることにした。
そして町の検問を抜け、冒険者ギルドに入り、ギルドの納品所にて――
冒険者ランク:Fランク パーティ:アルティメット・ヘズラトボンバーズ
名前:アレクシス
種族:エルフ 年齢:20 性別:男
職業:木工師
ギルドポイント:275(↑5)
更新日:0日前
「……渋い」
「そう言われてもな……」
ギルドの納品所にて、ヒゲの受付さんにキノコを納品し、ギルドカードを更新してみたところ――前回より5ポイント増えていた。
獲得ポイントたったの5。あまりにも渋い。
「ダンジョンでの活動は、獲得ポイントが少ないとは聞いていましたが、それにしても5ポイントとは……」
「そうだなぁ……」
「現在275ポイントなので、Eランクまでは――2725ポイント必要です。一日5ポイントでは――545日掛かります。一年半掛かってしまう計算です。僕に一年半キノコを狩り続けろと言うのですか」
「そんな計算を俺に提示されても……。というか、一年半あったらもっと先に進めるだろ。もう少しダンジョンを進めば、もう少しポイントも増えると思うんだけどな……」
「ふむ……」
まぁそうか。相手が歩きキノコってことが問題なのか。そう考えるとポイントが渋いのも仕方がないか……。
「でも、買い取り額の方はそこまで安いわけではないのですよね」
決して高くはないが、二束三文で買い叩かれたわけでもなかった。まずまず妥当な額で買い取ってもらえた気がする。
「確かに採ろうと思えばいくらでも採れるんだろうけど、最序盤のエリアを回っている奴も、そう多くはないからな」
「あー、そういうことですか」
なるほど、みんなどんどん先に行っちゃうから、わざわざキノコゾーンに戻ってキノコ採取する人は少ないのか。
「だからキノコが納品されるのって、駆け出しの冒険者が新しく現れたときだったりするんだよな。若い冒険者がキノコを大量に持ち込んで来たときなんかは、ちょっと応援したくなるよな」
「ほうほう。それはありがとうございます」
「え?」
「え?」
え、何? なんで鳩が豆鉄砲なリアクションなの?
つまり僕でしょ? 僕のことを応援してくれたんじゃないの?
「アレクは駆け出しの冒険者なのか……?」
「違うんですか……?」
「いや、どうなんだ……? そりゃあ確かにアレクはFランク冒険者だけれども……」
「…………」
そこでFランクを持ち出されるのも、なんだかな……。
「だけどアレクと出会ってから、もう二年以上経ってないか?」
「二年以上……?」
あー、そうか、気付けばもうそんなに経つのか。
三年目の冒険者と考えると、駆け出しとは言いづらいかな……。
「とはいえ、ちょっと納得いかないですね……。『三年目なのにFランク』と馬鹿にされるのは納得がいきません」
「そんなことは言ってないし、馬鹿にもしていないが……」
「そもそも僕は森に住むエルフなわけで、その期間のほとんどは冒険者活動もしていませんでした」
「あー、まぁそれは確かに……」
「ついでに言わせてもらうと、僕がFランクなのも、エルフによる必要ポイントの補正が影響しているせいなんですからね?」
そこを考慮せずにFラン呼ばわりは違うんじゃないかと、強く異議を唱えたいところで――
「275ポイントだから、エルフじゃなくてもFランクだけど……」
「……ちっ」
痛いところを突いてくるなヒゲの受付さん……。
うーむ。やっぱり早めに300ポイントは確保しておきたいな。そうしたら『エルフゆえにFランクという立場に甘んじてはいますが、実際にはEランク相当。実質Eランク冒険者なのです』と豪語していくこともできるのに……。
◇
なんやかんやヒゲの受付さんと話し込んでしまったが、今日はまだ寄るところがある。
――というより、むしろそっちがメインなのだ。
「さて、それじゃあ次は教会に寄ろうと思います」
今はランクアップよりもレベルアップだ。教会にて、現在のレベルを確認してこようではないか。
ギルドを出た後で、ヘズラト君とリュミエスさんにそう伝えると――
「キー」
「……そう?」
ヘズラト君曰く、『それでは私は、この辺りでお暇させていただこうと思います』とのことだ。
……何やらヘズラト君なりに空気を読んで気を利かせてもらった感がある。
「リュミエスさんはどうしますか?」
「…………」
無言である。
しかし、いつもの流れからすると――
「…………」
「もうお帰りになられますか」
ほんのちょっとだけ、宿の方角へ動いた気がする。やはりヘズラト君と一緒に帰るつもりらしい。
「……えぇと、別に大丈夫ですよ? ヘズラト君もリュミエスさんも、一緒に来てくれたらエルザちゃんも喜んでくれると思いますし」
「キー」
「…………」
「そうですか……」
やっぱり二人とも帰るらしい。
そうか。ならば仕方がない。無理強いするわけにもいかないからね。それじゃあ僕一人で教会へ赴き、ゆったりと楽し――鑑定してこようではないか。
「ではでは、今日もありがとうございました。またお願いします」
「…………」
「ではまた」
「…………」
「あれ? あの……」
「…………」
「ああ、はい。お疲れ様でしたー」
「…………」
僕が両手を上げると、リュミエスさんも両手を上げてくれた。そしてハイタッチ。
ダンジョンの階層クリアごとにやっている挨拶だけど、案外気に入ってくれたのかもしれない。
「じゃあヘズラト君も、お疲れ様でしたー」
「キー」
そしてヘズラト君ともハイタッチ。
そんなやり取りがあって、満足したのかリュミエスさんとヘズラト君は宿へと帰っていった。
その後、一人残された僕は二人に手を振りつつ、遠ざかる二人をぼんやりと眺めていたのだが――
「……それにしても、ここから宿までリュミエスさんとヘズラト君は、いったいどんな会話をするのだろう」
そもそも言葉での会話はできない二人だ。リュミエスさんは基本的に言葉を喋らないし、ヘズラト君の言葉をリュミエスさんは理解できない。
そんな二人が帰り道にどういうやり取りをするのか、そこがちょっと気になったりもした。
「……おや?」
そのままなんとなく眺めていたところ、二人は立ち止まり、何やら向かい合って話をしているような……。
いやでも、実際には会話できないよね? じゃあ何をしているんだ? 向かい合って何を……? というより、ヘズラト君も困ってないか? リュミエスさんに無言で見つめられて、困惑しているように見えるんだけど……。
「大丈夫かな……」
どうしたものか。とりあえず今からでも救援に向かおうか。僕もリュミエスさんの意図を正確に読み取れるか自信はないけど、どうにか助け舟を出せないかと…………おや?
「おぉ……。乗った……」
まだ鞍を付けっぱなしだったヘズラト君の背に、リュミエスさんがサッと騎乗した。
そうか、騎乗したかったのか……。これまた若干困惑気味のヘズラト君に見えるけど、一応は状況を理解したのか、そのままゆっくりと宿に向かって歩き始めた。
……えぇと、うん、まぁほのぼのとした光景だよね。
そこまでの流れとしては若干シュールな印象も受けたし、そもそも魔王様が大きなシマリスに乗っている姿自体がシュールに思えなくもないけど、とりあえずほのぼのとしたワンシーンってことでいいんじゃないかな……。
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