第668話 ギルドポイント、不正受給作戦――第四弾『協力プレイ』
「こんにちはー。よろしくお願いしまーす」
「おー。頑張ってるなアレク」
ギルドの納品所へとやってきた。
前回は二ヶ月ほど間が空いてしまったが、今回は二日続けての訪問。ヒゲの受付さんも僕の頑張りを褒めてくれている。
「今日は二人なんだな」
「そうですね。今回はクリスティーナさんにお付き合いいただきました」
「よう」
てな感じで、隣のクリスティーナさんもヒゲの受付さんと軽く挨拶を交わした。
ヒゲの受付さんの言う通り、今回は二人だけだ。いつもは適当にメンバーを募ってから出発することが多く、もうちょっと人数も多くなるのだけど、今回は訳あって僕とクリスティーナさんの二人パーティでの行動となった。
「そうかそうか、真面目に頑張っているようで何よりだ」
「……真面目?」
「ん?」
「アレクが真面目に頑張ってるかっつーと、それはちょっと怪しい気もするけどなぁ……」
待ってくださいクリスティーナさん、いきなり何を言い出すのですか。やめてください。バラさないでください。
「なんだっけ? 不正受給作戦だっけか?」
「またか……。アレクはまた不正受給作戦をやっているのか……」
「いやいやいや……」
というか、なんで不正受給作戦のネーミングがちょっと広まっているの……? それ広まるの、僕的にちょっとまずいんだけど……。
「昨日の話では、地道にコツコツとポイントを貯めるって流れじゃなかったか?」
「ええまぁ、確かにジスレアさんからはそんなアドバイスをいただきましたねぇ」
そのアドバイス自体は素晴らしいものだと思う。とても真っ当な意見だ。是非そうした方がいいと僕も心から賛同する。
「とはいえ、僕の召喚獣であるヘズラト君がEランクに到達してしまった以上、もはやそういう段階ではないのです。もはや一刻の猶予もありません。一刻も早く僕もランクアップしなければ、僕の威厳が保てないのです」
地道にコツコツではいかんのです。刻一刻と、僕の威厳が減っていってしまうのですよ。
「まぁ不正受給作戦なんてものを決行することで、むしろ余計に威厳を失いそうな気もするけどな」
「…………」
クリスティーナさんからだいぶ鋭い指摘が入った。納得感がすごい。
「しかしクリスティーナさん、3000ポイントですよ? 僕がEランクに到達するには3000ポイント必要なのです。現在250ポイントなので、残り2750ポイントです」
「あー、そうみたいだな。2750か」
「ちなみに前回の探索では15ポイント稼ぎました。とりあえず平均15ポイントと考えた場合、2750ポイント稼ぐには――184回の探索が必要です。毎日探索したとしても184日掛かります。月に直すと6ヶ月と4日です」
「おぉ……。なんかすげぇ計算してんな……」
「どうするのですか。半年ですよ? 半年も掛かってしまうのですよ? それでも毎日地道にコツコツこなせと言うのですか? 半年間も?」
「わかったよ。悪かったよ……」
うむ。クリスティーナさんも僕の苦悩をわかってくれたらしい。何よりだ。
「……えぇと、それで結局アレクは何をしたんだ?」
「そうですね、とりあえずは――実際の納品物を見ていただきましょうか。クリスティーナさん、よろしいですか?」
「おう。んじゃ出すぞ」
クリスティーナさんは納品用トレイを三つほど用意して、その上に素材やらなんやらを置き始めた。
「お、結構あるな。薬草に歩きキノコに、ボアにベアにウルフに」
「そうなのです。クリスティーナさんが頑張ってくれました」
「うん? 頑張ってくれた?」
「はい。今回の探索は、ほとんどクリスティーナさんにお任せする感じでしたから」
町を出てからの索敵とか、戦闘とか、解体とか、回収とか、その合間の薬草採取もクリスティーナさんにお任せだった。
「……じゃあアレクは何をしてたんだ?」
「何もしていませんでした」
「……え?」
「あ、でも頑張っているクリスティーナさんの応援をしたり、暇なときの雑談相手にはなっていましたね。一応そういうサポートはさせていただきました。サポーターとしては頑張っていたと思います」
「冒険者としての頑張りは……?」
「そういうのはやらなかったですねぇ」
「…………」
おっと、ヒゲの受付さんが軽く引いているじゃないか。
ちょっと待ってくださいヒゲの受付さん。これには事情があるのです。別に僕だって、なんの理由もなくサボっていたわけじゃないのですよ。
「まぁ聞いてください。今回の探索と納品は、ちょっとした実験なのです」
「実験?」
「こちらのクリスティーナさん。聖盾の称号を授かりし歴戦の強者であり、超一流冒険者様でございます。町を守り、人を守り、平和を守る。その実力は勇者様や魔王様も唸るほどで、いわばこの町の象徴であり、もはや人類の希望の象徴と言っても過言では――むー、むー」
過言ではないと思うのだけど、とりあえずいろいろと喋り過ぎたらしい。セリフの途中で黙らされてしまった。
「で、そんなクリスティーナさんが一度探索に出かけたら、それはもう莫大なギルドポイントを獲得できるわけですよ。これはもう自明の理」
「まぁそうなのかな……」
「そこで実験です。そんなクリスティーナさんに付いていけば――むしろ付いていくだけで、僕も莫大なポイントを手に入れられるのではないかという実験!」
これこそが僕の考えた――ギルドポイント不正受給作戦第四弾、『協力プレイ』である!
今回はその前段階としての実験だ。この実験が成功したら、ジスレアさんやスカーレットさんやリュミエスさんにも協力してもらって、もっと高レベルな狩り場へ向かおう。僕はみんなの後ろを付いていき、なんなら僕自身は聖盾クリスティーナさんに守ってもらおうという作戦だ。
「結局のところ……。みんなの後ろに引っ付いて、みんなのおこぼれを狙おうって作戦か……?」
「…………」
そんな感じでシンプルにまとめないでくれんかな……。せっかく『協力プレイ』と銘打ったのに、実際には『寄生プレイ』だということがバレてしまうじゃないか……。
「まぁ他の面子が納得しているならいいんだけどな……。俺が文句を言うことでもないし、俺は納品されたものを査定するだけで……あ、ちなみにだが、納品して稼いだ報酬はどうするつもりなんだ? その分け方は……」
「折半の予定です」
「アレク……」
おーおーおー。さっきからヒゲの受付さんのドン引きっぷりがすごい。
「これも実験の一環なんですよ……。あくまで二人が協力して活動した体で進めたいので、そう考えると折半じゃないとおかしいですよね」
「うーん……」
「それじゃあ査定の方をお願いします。報酬は、あえて二等分していただけるとありがたいです」
「まぁいいけどな……」
そんなやり取りがあって、納品の査定が終わり、しっかり二等分された報酬をそれぞれが受け取った。
さてさて。それじゃあいよいよ結果発表といこうか。
あとはもう自分のギルドカードを更新するだけだ。カードに魔力を流せば、その瞬間に実験の成否が決定する。
あとはもうそれだけで、その瞬間に……。
「……ちょっと怖いですね」
「うん?」
「結果を見るのが少し怖い……」
自分で始めといてなんだけど、もしもこの実験が成功したら……みんなが頑張っているのを見守りながら、クリスティーナさんに守られるだけの冒険者活動が始まっちゃうわけでしょう……?
今回の探索で思ったけど、他の人が頑張っているのに自分は何もしないってのは、さすがの僕でも申し訳なくて心苦しいのよ……。
どうなんだろうなぁ……。でももう始めちゃったしな。結果を見ないわけにもいかない……。
さぁ、果たして結果はどうなるのか――
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