第665話 世界最古のロックバンド『アルティメット・ヘズラトボンバーズ』
「というわけで、ヘズラト君のドラム技術はご理解いただけたかと思います」
ついつい演奏中の可愛らしさばかりに目がいってしまったが、ヘズラト君の演奏も素晴らしかった。
そして演奏後は、不意に脛を蹴られたりして話がそれていってしまったが、それはさておきヘズラト君の演奏は大層素晴らしかった。
「うん、大したものだと思う」
「ふふふ。そうでしょう? 実際大したものなのですよ」
「だから何故アレク君が得意げになっているのか……」
それはやっぱり――僕が育てたわけだしさ。
リュミエスさんのベース同様、ドラム演奏そのものについては何ひとつ教えていない僕ではあるが、ドラム自体は僕が作った物だし、ヘズラト君のフィードバックを受けてドラムの改良も行ったし、ヘズラト君が演奏しやすいようにドラムやシンバルや椅子の調整も行った。
そして、僕が手掛けたドラムで一生懸命練習するヘズラト君の姿を、ずっと近くで見守っていたのだ。やはりこれは僕が育てたと言っても過言ではないはず。
「というわけで、ドラムのことならヘズラト君にお任せです。何を聞いても完璧にレクチャーしてくれるはずです」
「キー……」
僕の言葉を聞いて、ヘズラト君は若干怯んだ様子を見せたが――なぁに心配することはないさ。ヘズラト君をここまで育て上げた僕が太鼓判を押すとも。
「うん、それじゃあ私も頑張ってみようか。ヘズラト君に教えてもらいながらドラムを学んでいこう」
「ええはい。それがよろしいかと」
「それで練習して上手くなったら、みんなで一緒に演奏しようじゃないか」
「そうですね。もちろん一人での演奏も良いですが、みんな揃っての演奏も、楽器演奏の醍醐味かと思います」
「うんうん、楽しみだな」
僕も楽しみだ。スカーレットさんも加わって、みんなでセッションするんだ。
きっとその瞬間こそ、我らアルティメット・ヘズラトボンバーズが――ロックバンドグループ『アルティメット・ヘズラトボンバーズ』としてのスタートを切る瞬間なのだろう。
「あ、ちなみにですが、このドラムも特注品だったりします」
「うん? 特注品? 確か前もそんなことを言っていなかったっけ?」
「そうですね。ベースに続き、今回も特注品です」
まぁ世界初のドラムセットって時点で、どうやっても特注品でしかありえない気もするが、とりあえず僕しか作れないという点で、やはり特注品だったりする。
「実はドラムって、わりと音が大きめなんですよね」
「ほー、そうなのか。今度は大きいのか」
「なのでギターやベースが一緒に演奏すると、ドラムの音にかき消されちゃうみたいです。しかしですね、その問題を解決するために僕が――」
「『ニス塗布』かな?」
「……ええまぁ。『ニス塗布』で音を小さめに」
「本当にアレク君は、なんでもかんでも『ニス塗布』だなぁ……」
「…………」
おかしいな。褒められるどころか、若干呆れられているような……。
……まぁいいや。それでもヘズラト君は褒めてくれた。このことが発覚して、ドラムの音を調節したところ、『さすがはマスターです』と褒めてくれたんだ。
「さておき、これで音量バランスの問題はなくなりました。あとはスカーレットさんがドラムを習得するだけです。そうしたらみんなでセッションしましょう」
「うん、私がドラムを習得したら…………あれ?」
「はい?」
「でも私がドラムを習得したら……ヘズラト君はどうなるのかな?」
「どうなる? と言いますと?」
「私がドラム担当になったら、ヘズラト君はどうなるんだろう……」
「あっ……」
あー、そっか、ドラム担当が二人になってしまうのか……。
「ドラムって、二人いてもいいのかな……」
「あんまり聞いたことないですね……」
まぁ別に二人いちゃダメってこともないんだろうけど、とりあえず僕はドラムが二人いるバンドを見たことはない……。
「そうか……。じゃあ申し訳ないけどヘズラト君は、ドラムの後はこの楽器で……」
「いやいやいや……」
その辺に転がっていたビブラスラップをスカーレットさんが手に取り、ヘズラト君に差し出したので、僕がペシッと叩いて止めた。
ちょうど重りの部分をペシッとしたので、『カーッ』という音が無駄に音楽室に鳴り響いた。
◇
というか、ビブラスラップをネタにしたりオチにしたりするのはやめていただきたい。これはこれで作るのに苦労したんだ。
「では、スカーレットさんもギターで」
「うん。よろしく頼むアレク君」
せっかく今まで頑張ってきたヘズラト君からドラムを奪うのは可哀想だという話になり、さらに話し合いを続けた結果――スカーレットさんもギターを担当してもらうことになった。
まぁギターなら二人いてもいいだろう。ツインギター構成だ。それなら普通に見たことがある。
というわけで、これからギターをもう一本作り、スカーレットさんに練習してもらう予定だ。もしもこれでも投げ出すようなら――もうボーカルをやらせてしまおう。
スカーレットさんが恥ずかしがっていた恋愛ソングを、スカーレットさん本人にバンバン歌わせてやる。
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