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チートルーレット!~転生時に貰ったチートがとても酷いものだったので、田舎でのんびりスローライフを送ります~  作者: 宮本XP


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第661話 木工シリーズ第132弾『防音室』


 スカーレットさんのセカンドライフのため、新たな趣味を提案しようと木工シリーズ第58弾『ベース』を作製したわけだが……その発表をしている途中で、何やら話が横道に()れていってしまった。

 どうやらスカーレットさんは、木工シリーズのナンバリングが気になる模様で――


「それで、第131弾が『カーッ』ってやつだった」


「ビブラスラップなんですけど……」


 うん、なんかもう名前を覚える気はなさそうだね……。


「そして、その前がギコギコ鳴るやつで」


「第130弾『ギロ』ですね」


 あれもそこそこ大変だったなー。本体となる木の中をくり抜いたり、外にたくさん刻み目を作ったり。


「その前は、ただの木片で……」


「……第129弾『ウッドブロック』ですね」


 あれはなぁ……。あれは確かにただの木片と言われても仕方がない見た目だった。一応はそういう打楽器が本当にあるみたいなんだけどね。一応はちゃんとした完成品ではある。

 ――別に木琴を作ろうとして、その途中で頓挫(とんざ)したわけではない。その残骸ではないことだけは伝えておきたい。


「こう振り返ってみると、確かに最近はいろんな楽器を連続で作っていましたね」


「第129弾、第130弾、第131弾と続いて――だから次は第132弾だと思ったんだ」


「ああ、そういうことでしたか。なるほどなるほど」


 次に作製したベースが第132弾かと思いきや、第58弾なので疑問に思ったらしい。

 案外スカーレットさんも木工シリーズのナンバリングを気に掛けてくれていたようで、そこは嬉しく感じる。


「実はベースって、以前に作ったことがあるんですよ」


「む。そうなのか」


「ギターを作った少し後で、母に協力してもらいながら作りました」


 せっかくならギターに続いてベースも作ってみようと考えて……でもまぁ、なかなかそう簡単にはいかなかったね。

 正直僕もベースのことなんて詳しくないから、いろいろと母に相談した記憶がある。とりあえず僕から母には――


『なんかこう、メロディを奏でるというよりは、リズムを奏でるイメージで』


『とりあえず低音っぽい』


『べーん、べーんって感じの』


 ――などという、かなりふわっとしたイメージを母に伝え、母からのアドバイスを元にベースを製作していった。

 それでもちゃんとベースっぽい物が完成したのだからすごい。というか母がすごい。母ありがとう。


「なるほど。だから数字が巻き戻って、第58弾なのか」


「そうです。実際にベースを作るのはこれで二本目ですね。というか、そうでもなければこの場でベースを作るなんて無理ですよ」


 まぁ無理だよね。『メロディというよりはリズム』、『とりあえず低音』、『べーん、べーん』――などという漠然としたイメージだけで楽器を作るとか、僕には無理だ。あまりにも無茶がすぎる。

 ……うん、なんか改めて母の偉大さを実感できたな。改めて母すごい。改めて母ありがとう。


「あ、ちなみにですが、特注品だったりします」


「うん? 特注品?」


「僕以外は作れない代物だったりします」


 ここだけは僕も誇っていいはずだ。普通にベースを作るだけなら僕じゃなくても作れるとは思うけど――このサイズでこの音圧は、僕のベースじゃないと出せないと思われる。


「実はベースって、ちょっと音が小さめだったりするんですよ」


「へー。そうなのか」


「そういうものらしいです。実際に作った後で、母に言われて気付きました。だからギターと一緒に弾いたりすると、若干ベースが押し負けてしまうわけですが……」


「ふむ? じゃあ、とりあえず力強く弾けばいいのかな?」


「ええまぁ……」


 さすがはスカーレットさん。何事も力技……。

 でもまぁ、それもたぶん解決法のひとつではあるんだろう。弾き方を変えてみるとか、ピックを使ってみるとか。

 そういえば母は、ベースのボディをもっと大きくしてみたらどうかと言っていたな。反響が大きくなって、音も大きくなるはずだとアドバイスをもらった。


「しかしながら僕は――僕なりの方法でこの問題を解決しました」


「ほう?」


「その解決法というのが――『ニス塗布』です! ベースのボディに特別なニスを塗布しました。より音が反響するようなニスです。このニスを塗布することで、音圧アップを実現しました!」


「なるほど」


「そのため、僕にしか作れない特別仕様のベースになってしまいましたが、これでギターに押されることもなく、完璧なセッションを行うことが可能です!」


「へー」


「……なんか反応薄くないですか?」


 もっと驚いてもよくない……? わりとすごいことですよ? 僕自身、この方法が本当に成功したときにはびっくりしたくらいですよ?


「弾いているうちに『音が少し小さいな』という不満が湧いてきて、それを解決してくれたのなら感動もしたのだろうけど、何も知らないうちに『本来の物より音が少し大きいです』と言われても、よくわからない」


「…………」


 待てばよかった……。『音が少し小さいな』という不満が湧くまで待つべきだった……。


「でもまぁ、アレク君とミリアムが研究に研究を重ねて、ようやく完成した特別な楽器というのなら私も楽しみになってきた。さっそく弾かせてもらおうかな」


「そうでしょうそうでしょう。是非楽しんで弾いていただいて…………あ」


「うん?」


「しかしスカーレットさん、そろそろ夜も更けてまいりました」


「あー、うん、確かにそうだね」


「今楽器をかき鳴らすのは、ご近所迷惑になってしまうかと……」


「むーん……」


 なにせ宿だからね。宿の部屋を借りている僕達だ。

 夜中にベースをガンガンかき鳴らしたら、普通につまみだされてしまう。


「どうにかならないのかアレク君……」


「どうにかと言われましても……」


 僕にどうしろと言うのだ……。

 まぁ今日だけ特別に、ちょっとの時間だけということなら、他のお客さんや宿のオーナーさんにお金を包み、少しだけ我慢してもらうようお願いすることもできるかもしれないけど……。


「せっかく完成したベースをすぐに弾いてみたいというスカーレットさんの気持ちは僕も嬉しいですし、そういうことならお金の準備をしてきますが?」


「なんの話だアレク君。そうではなくて、ベースの音を大きくすることができたのだから、逆にベースの音を小さくすることもできるのではないか?」


「えー?」


 あー、それは確かにできると思うけど、でもせっかく音を大きくしたのに、いきなり小さくするの……?


「あれ? いや、でも待てよ……?」


「うん?」


 もしかしたら、なんとかなるかも……?



 ◇



 実験のため、とりあえず僕が部屋でギターをかき鳴らしてみた。

 ついでに歌も歌ってみる。あんまり恋愛要素のない歌。


 そうしてしばらくすると――


「あ、スカーレットさん」


 部屋の外に居たスカーレットさんが、扉を開けて部屋に入ってきた。

 ひとまず歌は止めた。なんとなくカラオケ店で歌っている最中に店員さんが入ってきたときのことを思い出した。そういうときに僕は歌を中断するタイプだ。やっぱりちょっと恥ずかしい。


「で、どうでした?」


「うん。外にはほとんど音が漏れていなかった。扉に耳を近づけると、うっすら聞こえるくらい」


「あ、本当ですか? へー、すごいですね。すごいすごい。成功だ」

 

 というわけで僕が考えたのが――防音室である。

 ベースの音を小さくするのではなく、外に漏れる音を小さくすればいいという逆転の発想。ベースのときは音が反響するニスを使用したが、今度は音を吸収するニスだ。吸音ニスを部屋の壁と床と天井に塗布してみた。


 僕としてもそんなニスを作るのは初めてで、どうなるか不安だったけれど――結果は見事に成功。僕達の借りている部屋は、見事に防音室へと様変わりした。


「これはもう、木工シリーズに加えてもいいレベルですね。木工シリーズ第132弾『防音室』――見事に完成です」


「うん。すごいね。本当にすごいと思うけど……」


「おや?」


 はて、どうかしましたか? スカーレットさんの希望を叶える見事な木工シリーズだったと自負しておりますが、何か気になる点が?


「『ニス塗布』でベースの音を大きくしたり、『ニス塗布』で全部の音を吸収したり……。木工シリーズなどと(うた)っておきながら、やはりアレク君の木工は『ニス塗布』ありきで無茶苦茶やっているだけのような……」


「…………」





 next chapter:謝って! 全世界のすべてのベーシストに謝って!

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