第642話 驚愕の鑑定結果
「二十歳で半ズボンか……」
二十歳なのに半ズボン。成人なのに半ズボン。大人エルフなのに半ズボン……。
改めてエルザちゃんに指摘されてしまったわけだが、冷静になって考えてみると、やっぱりちょっと変なのかな……。
「とはいえ、今さら半ズボンをやめるというのも、なかなか難しいものがありまして……」
「難しいの……?」
「難しいですねぇ……」
なにせ小さい頃からずっと半ズボンだったわけだしさ、今さら長ズボンとか言われても困ってしまう。
そりゃあ僕も、あんまりにも寒い日には我慢して長ズボンを履く日もあるけれど、やっぱり基本は半ズボンで過ごしたい。そんな僕のファッションスタイル。そんな僕のライフスタイル。
「そう。やめられないのね」
「ええまぁ」
「つまり――私に膝小僧を突かれたくて突かれたくてたまらないのね? そのために半ズボンをやめるわけにはいかないのね?」
「……はい?」
いやいや、なんですかそれは。いきなり何を言うのですか、僕は別にそんな……違いますよ? そんな理由でますます半ズボンから離れられなくなったとか、そんなんじゃないです。そんなふうに考えたこともないです。無論ないですとも。ないったらない。
「……まぁ半ズボン談義はともかくとして、その前にちょっとお願いしたいことがあるのですが」
「ん? 何かしら? もしかして、まだ足りない? まだ膝小僧を突いてほしいの?」
「いやいや……」
違いますよ。鑑定ですよ。教会に来たので鑑定をお願いしたいだけです。もっと突いてほしいだなんて、僕は別に――
「でもダメよ? 今日はもう十分突いたから、今日はもうおしまい。今日はもう突いてあげない」
「…………」
なんか知らんけど、おあずけをくらった……。
いや、でも違うし。別にそんなんじゃないし。別に残念がってなんかいないし……。
◇
というわけで、教会の応接間っぽいところへ案内してもらい、鑑定用の魔道具を用意してもらった。
それに対し、僕もお財布から硬貨を取り出して――
「では、こちらが――」
……あれ? なんだっけ? なんの料金だか忘れてしまったな。なんか適当な理由を付けて、いろいろと押し付けていたはずだが、ここの教会がどういう料金形態だったか忘れてしまった。
「えぇと、とりあえず教会へのお布施と、鑑定代と、僕の鑑定結果を秘密にしてもらうための迷惑料と、あとは応接室の使用料と……」
「別に応接室の使用料とかいらないけれど……」
あぁ、このお店はチャージ料取らないんだっけか。
「それに、迷惑料も別に……」
「まぁまぁ、お納めください。こちらを受け取ってもらうことで、秘密を抱えさせてしまって申し訳ないと思う僕の罪悪感も薄れるのですよ。僕のためだと思って、何卒」
「いいのかしら……」
「いいのですいいのです」
こういう場面では意外と控えめで遠慮がちなエルザちゃん。そこを押し切るように、僕はそれぞれの料金を押し付けていく。
「それじゃあ鑑定ですね。かれこれ三ヶ月ぶりの鑑定になるでしょうか、非常に楽しみです」
いよいよ鑑定だ。僕は魔道具に手を置き、魔力を流した。
はてさて、気になる鑑定結果は如何に――
名前:アレクシス
種族:エルフ 年齢:20(↑1) 性別:男
職業:木工師
レベル:44(↑2)
筋力値 26
魔力値 22(↑1)
生命力 20(↑2)
器用さ 62(↑3)
素早さ 7
スキル
剣Lv1 槌Lv1 弓Lv1 火魔法Lv1 水魔法Lv1 木工Lv2 召喚Lv2 ダンジョンLv1
スキルアーツ
パリイ(剣Lv1) パワーアタック(槌Lv1) パラライズアロー(弓Lv1) ニス塗布(木工Lv1) レンタルスキル(召喚Lv1) ヒカリゴケ(ダンジョンLv1)
複合スキルアーツ
光るパリイ(剣) 光るパワーパリイ(剣) 光るパワーアタック(槌) 光るパラライズパワーアタック(槌)(New) 光るパラライズアロー(弓)
称号
剣聖と賢者の息子 ダンジョンマスター エルフの至宝 ポケットティッシュ
「これは……」
「んー?」
「なんとまぁ、これは大変なことになりましたね……」
三ヶ月ぶりの鑑定で、果たしてどんなステータスが表示されるのかとわくわくしていたところ、なんとも驚きの結果が出てしまった……。
「まさかこれほどの変化が訪れるとは……。エルザちゃんはどうです? どう思います?」
「前がどんなステータスだったか忘れてしまったわ」
「…………」
……まぁそうか。そりゃそうだ。なにせエルザちゃんは十ヶ月ぶりだもんな。
「アレクはどこが気になったの?」
「ええはい、とりあえず僕が気になるところとしては――レベルですね」
「あ、そこなのね……」
おや? 何やらエルザちゃんは意外そうな顔をしている。なんか変だったかな? レベルを気にしていたことが、そんなにおかしかった?
「私としては、相変わらず『器用さ』だけ高いなーとか、『素早さ』がひどいなーとか、スキル無駄に多いなーとか、複合スキルアーツはなんなの? ふざけているの? ――なんてことを思ったけれど、レベルの部分はそこまで目が行かなかったわ」
「……なるほど」
レベルよりももっと目を引く部分が目白押しであったか……。
まぁ確かにそうだよね。僕自身気になる部分は他にもあった。エルザちゃんから『ふざけている』と指摘された複合スキルアーツの項目にも、何やら新しくふざけた複合スキルアーツが追加されたようで、そこも気になるといえば気になるが――だがしかし、それより何より、今注目しなければいけないのはレベルの項目なんだ。
「やはりレベルです。最注目はレベルの部分。なんとレベルが――44に上がっているのです!」
大きな身振り手振りを交えて、ババーンと宣言してみたのだけれど、それを聞いたエルザちゃんは――
「へー」
「…………」
ずいぶんと淡白な反応……。
というか、今のは僕が悪かった。伝え方をちょっと間違えた。エルザちゃんにもわかるよう『三ヶ月前と比べて、レベルが2つ上がっているのです』的な伝え方をすればよかった。
そもそもエルザちゃんが見たのは十ヶ月前のステータスで、それもうろ覚えだというのに、そんな中で『エルザちゃんはどう思います?』と聞かれたところでわかるはずもなく、『レベル44に上がっているのです』と伝えられたところで、やっぱり何もわからんわけで……。
「レベルねぇ……。んー、私が前に見たときは、40に届いていなかったかしら?」
「おぉ?」
意外と覚えていてくれたっぽい。なんかちょっと嬉しい。
「――あ、思い出したわ。確かアレクのレベルが39に上がっていて、世界樹式パワーレベリングがどうのという話をしたのよ」
「あぁ、そういえばそうでしたね」
そういえば前回も同じ流れだったか。ラフトの町に着いて鑑定したら、レベルが異常に上がっていて、これはおそらく世界樹式パワーレベリングの影響だろうって話をエルザちゃんとした記憶がある。
「で、何? 今回もそんなことが起こったの?」
「ええはい、上がった能力値を見る限り、どうやらそのようで……」
「ふーん? また世界樹式パワーレベリング?」
「そうですねぇ……」
まぁ今回もユグドラシルさんには旅に同行していただいて、その中でそこそこウッドクローをいただいて、世界樹式パワーレベリングもそこそこ起こったと考えられるが……。
「しかしそれだけではなく、おそらく今回は別のパワーレベリングもあったのではないかと……」
「別のパワーレベリング?」
「おそらく今回起こったのは――魔王式パワーレベリング」
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