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チートルーレット!~転生時に貰ったチートがとても酷いものだったので、田舎でのんびりスローライフを送ります~  作者: 宮本XP


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第629話 伏線回収


 ……よくよく考えれば、ユグドラシルさんがお怒りになられるのも当然であった。『唐突にタワシのパーツを毎週送り付けてきて、特に理由もなく五歳児に作らせる神』という謎のレッテルを貼られ、その上で『この神様はちょっとおかしいんじゃないか』などという非難まで浴びせられたら、それはユグドラシルさんもお怒りで、ウッドクローも当然の結果であった。


 遅ればせながらその結論に至った僕は、再び平身低頭の構えで『ユグドラシルさんは何も悪くないです。ごめんなさい』と謝罪したところ、『仕方ないのう』とユグドラシルさんも許してくれた。

 さすがは慈愛の女神ユグドラシルさんだ。とても優しい。優しさに満ち溢れている。ちょろいとか言ってはいけない。


 ――それはそうと、オリジナルアレクブラシの件だ。そして、リュミエスさんにお願いしたいことの件についてだ。


「とにかくですね、僕もいろいろと悩んで、オリジナルアレクブラシの使い道を模索していたのです」


「ふーむ。使い道のう」


 今までも模索していたし、きっとこれからも模索し続けるのだろう。

 あるいはこの難題は、僕が生きる上での永遠のテーマなのかもしれない。


「そこで一番最初に考えたのが――『このブラシを使って、竜と仲良くなれないか』という想像でした」


「うん? ブラシで竜と?」


「当時の僕は、村から出たことがなくて外の世界がどうなっているのかもわからなくて、無駄に(おび)えていたのです。例えば強大な力を持つドラゴンと相対した場合、僕なんてあっけなくやられてしまうのだろうなと」


 ……まぁもっと正確に言えば、当時の僕は転生前であり、村から出る以前に村に生まれてもいないし、外の世界どころか、この世界のことを何ひとつ知らない状態ではあったが。


「そんなドラゴンも、アレクブラシを使ってピカピカに磨いてあげたら、敵対せずに友好関係を築けるのではないかと」


「ほー? そんなことを考えていたのか。何やら面白い想像をしておったのじゃのう」


 そしてドラゴンと仲良くなれたら、きっと幼女か美女に変化してくれるはずだと想像していたのだけれど……まぁこれはいいや。そこまでは話さなくてもいいだろう。


 さておき、当時の想像と今の状況って、結構近いと思うんだ。そこそこ状況は一致している。『竜と出会ってタワシで磨いて仲良くなる』と『仲良くなった竜をタワシで磨かせてもらう』――多少順番は前後したが、たぶん大体同じのはず。

 なので僕としては、是非とも当時の願いを叶えてみたい。二十年前に張った伏線を、今こそ回収させていただきたい。


「そういうわけで、もしよろしければ――リュミエスさんのお身体を洗わせていただきたいのです」


「…………」


「…………」


 無言である。

 リュミエスさんも無言だし、ユグドラシルさんも軽く引いた様子で無言である。


 ……なんか言葉の選択を間違えたような気がするな。

 今のセリフだと、そこはかとなく変態っぽくなってしまった気がする。


「違うんですよ」


「何がじゃ」


「あくまで僕の希望としては、竜形態のリュミエスさんのお身体を洗わせていただきたいだけで、人族形態のリュミエスさんのお身体を洗わせていただこうとは考えていません。あ、でも別に人族形態のリュミエスさんのお身体を洗わせていただくのが嫌というわけではなく、ただ僕としては――」


「……もうやめておけアレク。もう口を開かん方が良い。結構な勢いで墓穴を掘っているように感じる」


「むぅ……」


 確かにそうかもしれない……。なんとなくだけど、『リュミエスさんのお身体を洗わせていただきたい』ってセリフ自体がアウトだった気がする。だというのに、これでもかと連呼してしまった……。


 そんなことを考えていると――リュミエスさんがスススっと僕から離れていく様子が目に入った。


「おぉ……。違うんですよリュミエスさん……」


 なんてことだ……。つい先程まではピッタリくっついてキャッキャしていた仲だというのに、今のセリフひとつで好感度を軒並み失ってしまったというのか……。

 ……いや、まぁセリフひとつではなかったけれど。セリフを四回くらい言っちゃったけども。


 そういえばナナさんが言っていたなぁ……。マスターは口を開くと残念な部分が露呈すると……。美の破壊者などと呼ばれた記憶もある……。

 ナナさんの言う通りだった。イケメン効果で手に入れた好感度を、口を開いたばかりに失ってしまった……。


 そんなことを考えていると――リュミエスさんがシュバッと竜の姿に変身してくれた。


「え? あ、いいのですかリュミエスさん」


「…………」


 いいのかな? うん、たぶんいいんだろう。ここで竜に変身したってことは、おそらくいいってことなのだろう。


 なんだなんだ。リュミエスさんが僕から距離を取ったのは、変態にドン引きしたわけではなく、変身するためのスペースを確保するためだったのか。


「ありがとうございます! ではさっそく、リュミエスさんのお身体を洗わせていただきます!」


「…………」


「…………」


 ふむ。やはりこのセリフがダメなのか。

 自分でもダメだとわかっていたはずなのに、ついうっかり五回目となるセリフを使ってしまった。リュミエスさんはさておき、とりあえずユグドラシルさんはしっかりガチで引いているように感じるね……。



 ◇



 というわけで、竜に変身したリュミエスさんをゴシゴシと磨いていく。『水魔法』でお湯を出し、洗剤とアレクブラシで丁寧に磨き上げていく。

 やっぱり『水魔法』は良いな。覚えて良かった。こういうときにすごく便利。


「温度は大丈夫ですか?」


「…………」


「そうですか」


 ふむ。大丈夫なのかな?


「あと、磨く強さはどうですか? 痛くはないですか?」


「…………」


「そうですか」


 ……わからんな。リュミエスさんは竜の姿でも喋らんため、実際のところはどう感じているのか、とんとわからん。


 とりあえず嫌がる様子も見せないので、適温だし痛くもないのだと解釈して作業を続ける。

 まぁきっと大丈夫だろう。なにせ暗黒竜だし、なにせ魔王様だ。今はわりと恐る恐るの作業だけど、たとえ全力でガシガシ磨いてもかすり傷ひとつつかず、リュミエスさんは痛くも痒くもないのだろう。

 今磨いているのは右の翼の先端部分だが、そう思わせるほどにリュミエスさんの翼は硬くて重い。……何故これで空を飛べるのか。


「しかしこれは、想像以上に大変な作業ですね」


「まぁこのサイズではのう」


 地面から頭までの全高が4メートルくらい。頭から尻尾までの全長は15メートルほどもあると思われる。

 美しく、そして迫力のあるフォルムは見ていて惚れ惚れするが、実際に自分が全身を磨くとなると、それはそれは重労働。というか、そもそも全高4メートルでは手が届かん。後で足場とかも作らなきゃダメそうだ。


「一日では終わりそうにないですね。何日かに分けて作業しましょう。リュミエスさんもお付き合いいただいてよろしいですか?」


「…………」


「そうですか。ありがとうございます」


 やっぱりリュミエスさんの意思はいまいちわからなくて、『たぶん了承してくれてそう』という想像を基に会話を続けているわけだが……。

 ……大丈夫なのかなこれ。そのうち普通に意思の齟齬(そご)が発生しそうな気がしてならない。


「とりあえず今日はここまでにしておきますか。ありがとうございましたリュミエスさん、お疲れ様でした」


 感謝を伝えてから、洗剤とアレクブラシで磨いた部分を『水魔法』のお湯で流し、『ポケットティッシュ』能力で吸水性の高い厚めのペーパーを取り出し拭いていく。


 オリジナルアレクブラシに『水魔法』スキルに『ポケットティッシュ』能力と、僕の持つアイテムやスキルなどをフル活用して挑むことになった今回のミッション。

 転生前に張られた伏線に対し、転生後の二十年間で(つちか)った僕のすべてをつぎ込んでいく状況に、なんとなく満足感を覚えたりもする。良いね。良い伏線回収だ。


「それにしても……」


「うん?」


「見た目はまったく変わらないですね……」


「……どこまで磨いたのか、どこから磨いていないのか、まったくわからんのう」


 元からピカピカだったからね……。さすがは暗黒竜。さすがは魔王様……。

 しかしそうなると、この作業に果たしてなんの意味があるのか……。


 ……まぁいいや。とりあえず伏線を回収したという事実は残る。竜をタワシで磨いたという事実に意味があるんだ。きっと僕的には意味があるはず。

 意味がなさそうだけど、きっと意味があると信じて、あんまり意味のない作業を明日以降も頑張って続けていこう……。





 next chapter:さようならユグドラシルさん、いつかまた逢う日まで3

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― 新着の感想 ―
ユグドラシルさんが帰ってしまうのか… アレクは残念これテストに出る…
最初っから竜じゃなくてヒトの姿で会っているのに体洗わせてくれとか、もう下心しか感じませんねー
体を洗うという行為に何か竜的な意味がないといいね (体を洗ったら伴侶的な)
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