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チートルーレット!~転生時に貰ったチートがとても酷いものだったので、田舎でのんびりスローライフを送ります~  作者: 宮本XP


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第623話 草


 再びリュミエスさんに(さら)われてしまった。

 キノコの国に住む桃の姫でも、ここまで立て続けに攫われることはあるまいに……。


「あの、あの」


 とりあえず僕を掴んでいる爪をポンポンとタップしながら、リュミエスさんに訴えかける。

 やはり今回も本能に突き動かされている感じだし、一旦落ち着いて、どうか冷静さを取り戻してほしい。


「…………!」


「おや?」


「…………」


「おぉ、ありがとうございます」


 どうやら正気に戻ってくれたらしい。地上に降りるために、リュミエスさんがゆっくりと旋回を始めてくれた。


 まぁこれで僕が感謝の言葉を伝えるのもおかしな話だが、戻ってくれたことはありがたい。……きっとこのまま戻らなければ、再びユグドラシルさんの飛び蹴りを受けて、僕は地面に自由落下していたことだろう。


 ……実際、さっきユグドラシルさんの姿がチラッと見えたものな。

 ぴょーんと跳躍して、僕らを飛び越していくユグドラシルさんの姿が確認できた。リュミエスさんが戻る意思を見せなければ、そのまま飛び越すのではなく、そのまま飛び蹴りをくらっていたはずだ。


 そうこうしている間に、僕らは地上に舞い戻り、他のメンバーもその場に集合した。


「ただいま戻りました」


「うむ……。まぁアレクが無事で何よりじゃ」


「というか、アレクも軽率な行動は慎むように」


「すみません……」


 興味本位で素顔を晒して、二回も誘拐されてしまったからな……。

 正直三回目がどうなるかにもちょっぴり興味があって、ジスレアさんから『もうやるなよ』と念押しされたことで、むしろ三回目にチャレンジしたい気持ちがむくむくと湧いてきてしまったりもするが――


 ……でもまぁ、さすがに今回はもうやめておこう。みんなにも迷惑を掛けたし、むしろリュミエスさんにも申し訳ない。

 ひとまずカークおじさん宅へ帰ろう。やはり世界旅行魔界編などなかったのだ。囚われの身生活などもなかった。これからもしばらくは、カーク村でダラダラするだけの生活を送ることとしよう。


「あぁ、そういえば皆さんありがとうございました。おかげで助かりました」


「うむ」


「うん」


「はっはっはっ、構わないともアレク君」


 二回も助けてもらったのだし、ここはしっかりお礼を伝えねばなるまい。いつかはあるかもしれない三回目のためにも、お礼だけはしっかりと。


「…………」


「あ、いえ、リュミエスさんもお気になさらずに」


「…………」


 二回も助けてもらった僕だが、何から助けてもらったかといえば、それはリュミエスさんからであり、そんなリュミエスさんの視線を感じたため、とりあえず気にしないよう気遣いの言葉を掛けておいた。

 まぁわからんけどね。リュミエスさんは相変わらずの無表情で、実際のところはよくわからん。さすがに、『本当はまったく気にしていなくて、むしろもう一度攫おうと僕を見ていた』なんてことはないと思いたいけど……。


「あと、ヘズラト君にも心配を掛けたね」


「キー」


「うんうん、ごめんねヘズラト君。――って、うん? それは?」


 ふとヘズラト君を見ると、ヘズラト君の目の前にはダンジョンメニューが開かれていた。

 はて、なんだろう? ヘズラト君は何をしていたのか。


「キー」


「あ、そうなんだ。――『ダンジョンメニュー』」


 ヘズラト君の話を聞き、僕もダンジョンメニューを呼び出した。

 そしてDメールを開くと――


『アレク様、可能であれば現在の状況を書き記していただきたく存じます』


「おぉ、なんと冷静な……。さすがだヘズラト君……」


 どうやら僕が最初に攫われた時点で、ヘズラト君はこのメッセージを入力していたらしい。

 救助に直接参加することは難しいと判断したヘズラト君は、せめて自分にできることをしようと考え――それがDメールを使っての状況確認だったそうだ。ユグドラシルさん達の救助が失敗した場合に備え、僕に向けてメッセージを打っていたようなのだ。


 いやぁ、すごいね。みんな優秀だ。ユグドラシルさんが誘拐を止め、スカーレットさんとジスレアさんが救助に動き、ヘズラト君が冷静に次善の策を考える。

 ――なんと優秀なパーティなのだろうか。素晴らしい。素晴らしいぞアルティメット・ヘズラトボンバーズ!


 ……まぁその優秀なパーティにおいて、僕がなんの役にも立っていないところが気になるといえば気になるが。

 というか攫われたのが僕だしな……。むしろただの足手まといである。Dメールを使っての連絡とか、僕は欠片も思い浮かばなかったものな……。


「キー?」


「あ、うん。なんでもないよヘズラト君、ありがとうね」


「キー」


「さて、ダンジョンメ……ん?」


 ひとまずヘズラト君に感謝を伝え、ダンジョンメニューを閉じようとしたところで――とあるメッセージが目に入った。

 そのメッセージというのが――


『おやおや? どうしました? 何か面白そうなことが起こりましたか? ――ナナ』


「…………」


 ナナさんである。偶然Dメールを目にしたであろうナナさんから、メッセージが打ち込まれていた。


 ……なんか面白がっているな。

 ヘズラト君のメッセージを見れば、なんらかの事件が発生していることはわかっただろうに、それを面白がっている……。


「……ヘズラト君、試しにDメールで、僕が攫われてしまったと打ち込んでみてくれるかな?」


「キー?」


「どうやらナナさんは面白がっている様子だし、ちょいと脅かしてやろう。さぁさぁヘズラト君、打ってくれたまえ」


「キー……」


 さてさて、ナナさんからはなんと返ってくるかな? さっきまでは面白がっていたナナさんも、僕が本当にピンチなのだと聞いたら慌てふためくはずだ。


 そんなことを考えながらDメールを眺めていると――次のようなやり取りが確認できた。


『アレク様が、魔王様に攫われてしまいました』


『草』


 何を草を生やしてるんだこいつは……。





 next chapter:優しい嘘

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― 新着の感想 ―
キノコの国に住む桃の姫は あの国の最大戦力なので初手で潰すという 戦略というかんじらしい
魔王様はさらってからどうするつもりだったんだろう。 見目(だけ)の良い侍従? 夫? ホルマリン漬け? 石膏の中にぶち込んで等身大石像作り?
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