第611話 キャンプ地
お待たせしました。新しいモニターを買いました(ノ*ФωФ)ノ
毎度のことながら、妙にごたごたしながら始まった世界旅行。
なんやかんやあって、メイユ村のすぐ近くがキャンプ地となってしまい、しかもその場から進むこともなく、掟ノルマの一年間を過ごすのではないかという噂まで流れ始めたわけだが――
まぁさすがにそこまで粘ることもなく、一週間程度で移動が始まり、世界旅行も本格的に始まった。
そして、そこからさらに一週間掛けて、我らアルティメット・ヘズラトボンバーズはカーク村へと到着した。
「入村」
「う、うむ。入村」
「キー」
入村である。相変わらず意味があるのかないのかわからない木の柵を跨ぎ、みんながカーク村へ入村していく。
僕もみんなに続き、木の柵を跨いで――
「にゅうそ――いてぇ」
「おぉ、大丈夫かアレク」
「すみません……。うっかり足を引っ掛けてしまいました……」
柵につまずき、転びながら入村してしまった……。
意味があるのかないのかわからない柵だったが、一応柵は柵だったか。侵入防止の機能は一応あったのだな……。
「……いえ、違いますよ? これは別に僕がどんくさいとかそういうわけではなく、仮面を付けているせいで視界が悪いんです」
「そ、そうか。まぁそうじゃな。それならば仕方がないな」
久しぶりの仮面だからさ。こういうこともあるよね。『結局どんくさいことに変わりはないのでは……?』とか、そういうことを言ってはいけない。
そんな感じで、のっけから情けない姿を見せてしまったりもしたが、兎にも角にも全員入村だ。
「じゃあ行こうか」
「行きましょう」
ジスレアさんと頷き合って、歩みを進める。
「……待て、どこへじゃ? どこへ行くのじゃ?」
「あ、すみません。とりあえず今からカークおじさん宅へ向かおうと考えています」
「そうか……。その流れは、もはや決まり切った流れなのじゃな……」
そういえばユグドラシルさんがカーク村に来るのは、これで二回目だったか。
まだユグドラシルさんは、カーク村のシステムがよくわかっていなかったようだ。カーク村に着いたからには、何はなくともカークおじさん宅。そういうシステムであり、これはもはやカーク村のしきたりと言っても過言ではない。
「では行きましょう。何はなくともカークおじさん宅です。むしろカークおじさん宅に着くまでは、カーク村に着いたとは言えないかもしれません」
「そうなのか……。あれほどみんなで入村と叫んでいたのにのう……」
そんな会話をしつつ、みんなで村の中を進んでいく。
道中カーク村の知り合いにも声を掛けられ、挨拶を返し、再会を喜び合ったりなんぞもしつつ、しばし歩みを進めていく。
そうしてたどり着いたカークおじさん宅だが――
「こんにちはー。カークおじさーん。いませんかー? アレクでーす。満を持して、アレクの登場ですよー?」
扉をノックしながら元気に挨拶するが……ふむ。返事がない。留守のようだ。
「留守かな?」
「そのようです」
「じゃあアレク」
「わかりました」
ジスレアさんと頷き合って、作業を始める。
「……何をしておるのじゃ?」
「あ、はい、留守のようなので、家の前で少し待たせてもらおうかと」
「う、うむ。待つのはよいのじゃが、それは……」
「――テントですね。とりあえず玄関の前にテントを建てて、中で休もうかと」
「…………」
これももう一連の流れよね。システムであり、しきたりだと思う。
「……しかしアレクよ、そのテントなのか?」
「はい? えっと、どういうことです?」
「建てるのは、いつもの大きいテントなのか?」
「あー……」
一応今も僕のマジックバッグには、大きいテントと小さいテントが入っている。
旅の出発以降、大きいテントをずっと使っていたので、今回も大きいテントを建てようと考えていたのだけれど、ユグドラシルさん的にはそれが少し引っかかったらしい。
「玄関の前にそんなテントが建てられていたら、カークおじさんも驚いてしまうじゃろう? 小さい方にしたらどうじゃ?」
「小さい方ですか……」
んー、まぁわからんでもない。確かにユグドラシルさんの言うこともわからんではないが……。
「ですがユグドラシルさん、僕はもう小さいテントではダメなのです」
「ダメ……?」
「大きいテントじゃないと満足できない体になってしまったのです」
「…………」
小さいテントで身を寄せ合って過ごすのも、それはそれで悪くない。本当に悪くはなくて、むしろ良いのだが、大きいテントの広い空間をゆったり贅沢に使える快適さに慣れてしまった今では、その選択肢は選びづらい。文字通り贅沢に慣れてしまったのだ。なんならもっともっと大きいテントを新調しようかと検討しているくらいなのである。
「まぁまぁ、カークおじさんの立場からしても、大きいテントは悪いことではないですよ。これならばカークおじさんも、すぐに僕達の存在に気付いてくれるはずです」
「それは気付くじゃろうな……。どうやっても気付くとは思うが……」
「というわけで、早速建てちゃいますね」
「うーむ……」
ユグドラシルさんも納得してくれたことだし、遠慮なく大きいテントをカークおじさん宅の玄関前に設営していこう。
「それにしても――どことなく状況が似てますね」
「うん?」
「出発時にはメイユ村のすぐ近くにテントを建てて、今回はカークおじさん宅のすぐ近くにテントを建てる。――すぐ近くに拠点があるというのに、あえてキャンプをしている状況が同じだなと」
「どちらもキャンプ地の場所としては大間違いな気がするのう……」
◇
パーティの面々が、テントの中でそれぞれくつろいでいると――
「えぇ……?」
テントの外から、困惑する誰かの声が聞こえてきた。
この声、もしやカークおじさんか? カークおじさんが帰ってきたか?
「アレクか? まぁアレクだよな。アレクが中にいるんだろ?」
「おぉ、やはりカークおじさん」
テントから顔を出すと、困惑顔で呆れ顔のカークおじさんと目が合った。
「お久しぶりです。アレクです。満を持してアレクです」
「ああ、久しぶりだな……。久しぶりに会えたのは良いけれど、このバカでかいテントはなんだ……?」
「今回の旅から導入した大きめテントです。これでキャンプも快適です」
「そうか……。いや、そういうことじゃなくてだな……」
「良いですよねこれ。小さいテントよりも大きいテントの方が良いとカークおじさんも思いませんか?」
「……家の玄関前に建てられる立場からすると、小さい方がいいかもなぁ」
「なるほど」
気付きやすくて良いかと思ったけれど、カークおじさん的にはそうでもないらしい。
というかユグドラシルさんが言っていた通りだった。さすがである。さすがはユグドラシルさん。
「えぇと、とりあえず歓迎はする。歓迎はするから、なるべく早くテントを片付けて家の中に入ってくれ」
「おぉ、そうですか? それはありがとうございます。――ですが、なんならしばらくこの状態で過ごしても構いませんよ?」
「なんでだよ……」
急に押しかけてきて、そのまま家の中にまで上がり込むのもどうなのかね。カークおじさんも家の中を片付けたり整理したりする時間が必要なんじゃないかって、今更ながら僕も考えたわけだ。
なので、なんならこのままでも構わない。なぁに遠慮することはないさ。メイユ村のキャンプでも同じ状況になったんだ。
というわけで――
「しばらく僕達はテント暮らしで――この状態で一週間過ごしても、僕達は全然構いませんとも」
「なんで人の家の前にでかいテントを建てて、そこで一週間住もうとしているんだよ……」
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