第610話 みんなでバーベキュー
なんだかんだで僕も二十歳。この世界に転生して二十年の月日が流れた。そう考えると、何やら感慨深いものがある。
そして、そんな僕の二十回目の誕生日を祝うため、レリーナ親子がキャンプ地まで駆け付けてくれた。
レリーナ親子にお祝いされ、みんなで雑談をしながら、僕ものんびりと過ごしていたわけだが――
「……いつの間にか、ずいぶんとにぎやかな集まりになってきたねぇ」
「そうですねぇリザベルトさん」
ふと気が付くと、レリーナ親子以外にも人が増えていた。まぁ場所が場所だからね。村のすぐ近くでキャンプをしていたためか、いつの間にかわらわらと人が集まってきたのだ。
一応みんなも僕の誕生日や旅の出発を祝ってくれるのだけど、それよりはただのバーベキュー大会になりつつあるような気がしないでもない。
そして、その中には僕の家族なんかもいて――
「アレク坊っちゃん、これ焼けてますよ? 今です。今が一番良いタイミングです」
「う、うん。ありがとうナナさん」
ナナさんも来ていた。僕にちょうどいい焼き加減のお肉を勧めてくれる。
あるいはこれがナナさんなりのお祝いの形なのだろうか……。
「改めて、誕生日おめでとうアレク」
「ありがとう母さん」
うん、母はちゃんとお祝いしてくれた。一昨日にも祝ってもらったけれど、改めてのお祝いだ。今度は生前葬ではなく、ちゃんとお誕生日会として祝ってもらえた。
それから、他にもいろいろな人が来てくれて――
「アレク」
「あ、ディアナちゃん」
「一年ね」
「え? あ、うん。一年」
「それ以上、待ってあげないんだから」
そう言って、ディアナちゃんが僕の肩をコツンと叩いた。
いつものように突然ラブコメの波動を醸し出してきたディアナちゃんだが……でもこのセリフ、前は『二年しか待ってあげないんだから』ってセリフじゃなかったかな?
なんやかんやあって旅の残りノルマも一年になり、ディアナちゃんが待ってくれる年数も一年になってしまったのか……。
あ、でももうすでに一年分は待ったからかな? そのあたり、ディアナちゃんが待ってくれる年数もしっかり減算されたのかもしれない。
あとは、ルクミーヌ村からのお客さんもいて――
「帰ってきたら、いよいよルクミーヌ村長かな」
「いやいや、やめてくださいって」
ルクミーヌ村の美人村長さんである。相変わらず本気なのか冗談なのかよくわからない提案をしてくる。
というか、わざわざ来てくれたんだな。メイユ村からは限りなく近いキャンプ地だけど、ルクミーヌ村からは普通に隣村だ。ここまで移動してきてくれたようで、ありがたいことである。
それから、天界からのお客さんもいて――
「呼んでくれてありがとうアレクちゃん」
「せっかくですしね、上手いこと呼ぶことができてよかったです」
ディースさんである。すでに天界へ送還済みのディースさんだったが、招待したら喜んでくれるかなと考え、人混みに紛れつつテントへ入り、そこでディースさんとミコトさんを召喚し、それから合流してもらったのだ。
そんな感じで、いろんな人達が集まり、妙な盛り上がりを見せつつあるキャンプ地だったが――
「あー、ごめんねレリーナちゃん、なんだかだいぶ大所帯になっちゃった」
「ううん、お兄ちゃんも楽しそうだし、お兄ちゃんが喜んでくれるのが一番だから」
「そっか、ありがとうレリーナちゃん。でもごめんね」
たぶんレリーナちゃん的には、こんなふうに大勢でワイワイする感じではなくて、もっとゆったり落ち着いた感じで一緒に過ごすつもりだったんじゃないかな。その予定とはだいぶ違う流れになってしまったはずで、そこを申し訳なく感じる。
「ところでお兄ちゃん」
「うん?」
「あの人――あそこにいる、お肉を頬張っている人」
「あぁ、うん。ミコトさんだね」
ミコトさんだ。ミコトさんが一心不乱にお肉を頬張っている。
「あと、お兄ちゃんがさっき喋っていた、人界の創造神様」
「ふむ。ミコトさんとディースさんだね。二人がどうかした?」
「あの二人……なんだかいつの間にか現れなかった?」
「え?」
あ、えぇと、それはなんというか……。実はその通りなのだけど、僕が召喚して、いつの間にか現れてもらったのだけど……。
「えっと、そうかな? どうだろうね? あー、その、まぁいつの間にか人も増えてきた感じだし、そういう意味では二人もいつの間にか現れたと言えなくもないかなって……」
「なんだか怪しい……。何か秘密が隠されている……? 確か、お兄ちゃんが妙に挙動不審な様子でテントに入って、それからしばらくしたら二人が現れたような……」
すごい怪しまれている……。というか、全然上手いこと召喚できていないじゃないか。全部まるっきり見られていて、しかも挙動不審とか言われてるし……。
「あの肉女と、あの乳女にどんな秘密が……」
「…………」
なんかとんでもない呼び方してる……。肉女と乳女て……。
えぇと、とりあえず肉女ってのは、ミコトさんが一心不乱にお肉を食べていたからだよね? そうだよね? それ以外の意味とかないよね? そうであってほしい。そこはそうだと言ってあげてほしい。
◇
「じゃあなアレク、頑張ってな」
「うん、ありがとうジェレッド君」
そうして楽しい時間が過ぎていき、日も暮れ始め、お誕生日会もそろそろお開きとなった。
みんなも村へ帰っていく中で――
……あれ? ちょっと待って、今なんか珍しい人いなかった?
いや、別に珍しくはないか? 頻繁に会っている人な気もする。だがしかし、今のやり取りは軽く流してはいけないような気がしなくもなくて……?
わからん。何がなんだかわからんが……とりあえずみんな村に帰っていくし、みんなに向けて挨拶をせねばならん。
「みんなー、ありがとー。頑張ってくるからねー。今日はありがとー」
帰っていくみんなに手を振りながら、来てくれたことの感謝を伝える。
「ムー! ムー!」
「う、うん。レリーナちゃんもありがとー」
最後の最後まで別れを惜しんでくれたレリーナちゃんは、簀巻き状態でリザベルトさんに運ばれていった……。
そうして残ったのは、僕とジスレアさんとヘズラト君とユグドラシルさんのアルティメット・ヘズラトボンバーズのメンバーだけとなった。さっきまでがにぎやかだったから、今がちょっと淋しく感じるね。
「いやはや、昨日の出発祭に続き、今日もみんなからたくさん元気をもらいました」
「そう、それはよかった」
「みんなからの期待や声援を力に、世界旅行も頑張っていきましょう」
「そうしよう。――でもアレク」
「はい?」
「今日はもう遅いので、今日はもう進まない」
「…………」
……そっか、まぁそうだな。日も暮れてきたしな。
「えっと……でもそうすると、どうします? これからどうしたら?」
「ここでもう一泊」
「なるほど……」
一応今日が世界旅行二日目のはずだが、三日目もここからスタートか……。すぐそこにメイユ村が見える位置だと言うのに、三日目もここから始まるとは……。
「この調子で、このままずっとここで停滞する未来も見えるのう……」
「…………」
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PCのモニターが壊れてしまったため、二十日の更新はお休みとなります_:(ΦωΦ 」 ∠):
次回の更新は二十三日の予定です。よろしくお願いします(ΦωΦ)




