第604話 神会議
――世界旅行出発を一週間後に控え、僕もいろいろと準備を進めていた。
まずは村の教会へ赴き、ローデットさんとの会話を楽しみ、それから通話の魔道具を貸してもらい、いつも通話に出てくれる教会本部の人との会話を楽しんだ。そしてその流れで、スカーレットさんとユグドラシルさんへの伝言もお願いした。
……何やら伝言の方がむしろオマケっぽくなってしまった気もするが、とりあえず忘れずに伝言をお願いできたことは褒めてもいいと思う。
――そしてその翌日。伝言を聞いたユグドラシルさんが、さっそく我が家へやってきてくれた。
「そうか、もう出発か」
「ですね。一週間後の出発を予定しています」
でだ、その世界旅行について、ユグドラシルさんと話し合いたいところなのだが――
「とりあえず、ミコトさんとディースさんも呼んでいいですか? みんなで打ち合わせをしたいのです」
「ふむ。構わんぞ? 召喚するのか?」
「そのつもりです。もうDメールで連絡はしてあるので、今から呼びますね」
すでに二人とも送還済みで、今は天界から僕達のことを見ているはずだ。ユグドラシルさんの許可も得たので、さっそく召喚しよう。
「ではでは――『召喚:ミコト・ディース』」
というわけで僕が部屋の床に手をかざし、呪文を唱えると――
「我が名はミコト。契約により現界した」
「創造神ディース、顕現!」
「あ、はい」
二人はそれぞれ自分の登場ゼリフを決めながら、床からにゅっと出現した。
ちなみにだが、召喚された二人が同時に話し始めたため、実際のセリフは――
『我が創名は造ミコ神トディ契約ースにより顕現界した現!』
――みたいな文章になっていた。
完全にセリフが被っていて、実際にはなんて言っているのかよくわからんかった。
なるほどなぁ……。そう考えると、大シマリスのモモちゃんはいつも気を遣っていたんだな。
今までにもミコトさんとモモちゃんを同時召喚することはあったけど、そのときはいつも――
『我が名はミコト。契約により現界した。キー』
――てな感じだったもんな。
ちゃんとミコトさんのセリフが終わったタイミングでモモちゃんは喋り始めていたらしい。妙なところでモモちゃんの有能っぷりを再確認してしまった。
さておき、なんやかんやで部屋に女神様が三人集合。豪華だね。なんと豪華な面子なのか。
「それでアレク君、今日は世界旅行についての相談があるそうだが」
「ええはい、僕が旅に出る際、御三方の予定を聞かせていただきたいのです」
旅行中、みんながどうするつもりなのか聞いておきたい。旅に同行するのかしないのか、ミコトさんとディースさんの場合は、天界に戻るという選択肢も考えられるね。
「とりあえず、ユグドラシルさんは来てくれますよね? 今回も同行してくれますよね?」
「うむ。構わんぞ」
よしよし。今回もユグドラシルさんは付いてきてくれるらしい。今回もできるだけ引っ張って引っ張って、なるべく長く付いてきてもらいたいね。
「で、ミコトさんは――」
「うん」
「あー、えっと……僕としては是非ミコトさんにも付いてきていただきたいところなのですが」
ユグドラシルさんに『付いてきてほしい』と希望した手前、ミコトさんにもそう伝えざるをえなかった。ここで『ミコトさんはどうします? 待機組ですか?』とは、とてもじゃないが聞くことができなかった。
「んー、そうか、今回も私は村に留まろうと思っていたのだけど、そこまで同行を熱望されるとなると、少し悩んでしまうな」
熱望というほどでは……いや、でも付いてきてくれたら嬉しいけどね。それはもちろん嬉しいですとも。
「やめておきなさいよミコト、迷惑になるだけよ」
「何を言うんだディース、当のアレク君がこれほどまでに私の同行を望んでいるんだぞ? アレク君が私のことを熱望しているんだ。情熱的に私を求めているんだ」
どんどん表現が過剰になっていく……。もはや捏造レベルだ……。
というか、なんかニュアンス変わってない? なんか違う意味になってない? 間違っても他の場所で、『アレク君から激しく求められた』とか言わんでくださいね?
「そもそもどうやって付いていくのよ。ミコトは自分の『素早さ』がいくつかわかっているの?」
「む……」
「今現在、ミコトはアレクちゃんよりも足が遅いのよ? アレクちゃんよりも足が遅いのよ?」
……なんで二回言った?
「それでも付いていくとなったら――ジスレアちゃんの背負子が発動するわよ?」
「う、背負子か……。背負子はさすがに……」
「アレクちゃんが、背負子で背負われることになってしまうわよ?」
「……え、僕なんですか?」
「ふむ。それならまぁ」
「ちょっと」
なんでそれならまぁいいかみたいになっているのか。それは僕が嫌だ。背負子は嫌だ。
「んー、アレク君達の迷惑にはなりたくないし、やっぱり今回も留守番になるのかな……。それで、ディースはどうするんだ?」
「そうね、私は付いていこうかしら」
「おい」
ディースさんの言葉を聞き、ミコトさんがディースさんの二の腕のあたりをペシーンとはたいた。
「何するのよ」
「ディースこそ何を言い出すんだ。私のことは止めておきながら、自分は付いていくとはどういうことだ」
「でも、アレクちゃんが私の同行を熱望しているし……」
言ってないけどね? ディースさんの同行に関して、僕は何も言っていなかった。
いや、そりゃあまぁ嬉しいけどさ。付いてきてくれたら嬉しいけども。
「ディースの方こそ自分の『素早さ』をわかっているのか? アレク君よりも遅い私よりもディースは遅いんだぞ? アレク君よりもさらにさらに遅いんだ」
さっきからなんなの? 二人揃ってなんなの?
「……で、結局どうするのじゃ?」
業を煮やしたユグドラシルさんが尋ねた。いったいディースさんはどうするつもりなのかと。
「んー、実際迷っているところなのよねぇ。どうしようかしら」
「なんならわしがディースを背負子で背負っても構わんぞ?」
「だいぶシュールな画になりそうね……」
――てな感じで、なかなかにグダグダな感じで続く世界旅行に向けての会議。
女神様が三人も集まったというのに、始終会話がポンコツ気味だったのが、若干気になるところではあった。
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