第548話 僕の基本
結局一悶着どころか、二悶着か三悶着くらい起こしてしまった気もするが、どうにかこうにか検問を突破し、僕達はラフトの町へたどり着いた。
それから前回泊まった宿を再び借りて、荷物を置き、滞在準備を整える僕達。
その後、町に着いた時間が少し早かったこともあり、空いた時間をどう使おうか考えた結果――
――教会にやってきた。久方ぶりのラフトの町の教会である。
教会の扉を開け、僕は元気よく挨拶しながら中に入った。
「どうもー。こんにちはー」
「あら?」
「おお! お久しぶりです!」
エルザちゃんだ! 扉を開けてすぐの礼拝堂には、美少女サキュバス修道女のエルザちゃんが――
……あー、うん、まぁ『美少女』だよね。やっぱり『美女』というよりは『美少女』かな。それはもちろんエルザちゃんは十八歳以上ではあるけれど、雰囲気としては美少女の方が近いかなって、なんとなくそんなことを思っちゃう僕がいたりして……。
――さておき、エルザちゃんである。教会に来てすぐにエルザちゃんと再会することができた。
これは幸先がいいね。この町での明るい未来を暗示しているようだ。
「久しぶりね。どのくらいぶりかしら? もう一年近くになったりする?」
「あー、そうですね。それくらいになりますか」
今回もカークおじさん宅で長いことダラダラしてたからねぇ。そんなこんなでラフトの町に来るのも、それくらい久しぶりになってしまった。
「一年か。一年経っても、アレクは半ズボンなのね」
「あっ、そんな、やめてください」
さっそくエルザちゃんからご褒――ではなく、イタズラをされてしまった。エルザちゃんがスペード型の尻尾で僕の膝小僧をツンツンしてくる。いやはや、困ったものである。
「エルザちゃんは一年経って、なんだかより大人っぽくなった感じがしますね。背も少し伸びましたか?」
「それはまぁそうよね。もう私も、じゅう――」
「ダメです! それを言ってはダメです!」
「……相変わらず、妙に私の歳を聞きたがらないわね」
ええまぁ、なんというか、むしろ聞くまでもないということなのですよ。十八歳以上は確定しているわけですから。
でも、まだ十代ってことはわかってしまったな。一年経ってもまだ十代なのか……。
どうしたものかな。なんとなくだけど、もうあと数年くらいはエルザちゃんの十代が続いてしまいそうな気配がしたりしなかったり……。
「それで、『そのうちまた町に来る』とは言っていたけど、結構間が空いたわね。この一年間アレクはどうしていたの?」
「ええはい、もちろん僕もこの一年間でいろいろと活動していまして、それはそれは積もる話もあるのですが――しかしその前に、軽く用事を済ませてしまってもいいでしょうか?」
「用事?」
「鑑定だけ先に済ませてしまいたいのです」
とりあえず鑑定したい。鑑定して、鑑定代やらもろもろを支払ってから、改めて楽しくエルザちゃんとお喋りしたい。
というか、そういうのを抜きにしても、ただ純粋に鑑定したいって気持ちもあったりする。
「鑑定もだいぶ久々で――もう三ヶ月ぶりくらいになりますかね。なので普通に鑑定がしたいです」
「三ヶ月ぶり?」
「そうなんですよ。なんと三ヶ月も空いてしまいまして」
「別にそれくらいは普通な気もするけれど……」
「そうですか? 基本的に、教会は隔週で通うものだと認識しております」
「その認識間違ってるわよ?」
ええ? そんなまさか。
◇
何はともあれ鑑定だ。僕は応接室に案内され、ソファーに腰掛け、鑑定代やらお布施やらの料金を支払い、それから差し出された鑑定用水晶に手を置いた。
さてさて、それじゃあ始めよう。三ヶ月ぶりの鑑定は果たして――
名前:アレクシス
種族:エルフ 年齢:19 性別:男
職業:木工師
レベル:39(↑1)
筋力値 25
魔力値 21
生命力 17(↑2)
器用さ 52(↑1)
素早さ 7
スキル
剣Lv1 槌Lv1 弓Lv1 火魔法Lv1 木工Lv2 召喚Lv1 ダンジョンLv1
スキルアーツ
パリイ(剣Lv1) パワーアタック(槌Lv1) パラライズアロー(弓Lv1) ニス塗布(木工Lv1) レンタルスキル(召喚Lv1) ヒカリゴケ(ダンジョンLv1)
複合スキルアーツ
光るパリイ(剣) 光るパワーパリイ(剣) 光るパワーアタック(槌) 光るパラライズアロー(弓)
称号
剣聖と賢者の息子 ダンジョンマスター エルフの至宝 ポケットティッシュ
おぉ、レベルアップしてる!
レベルが39に……あれ? いやでも、これはどういうことだ……?
「相変わらずおかしなステータスねぇ。……ん? どうかした?」
「……あー、実はですね、前回鑑定したときよりレベルがひとつ上がっていたんですよ」
「へぇ? そうなの、おめでとう」
「ありがとうございます」
「……それにしては、なんだか微妙に喜んでいない雰囲気だけど?」
「んー。嬉しいは嬉しいんですけどね」
それはまぁ、レベルアップは嬉しい。でも、今回ばかりは素直に喜べないというか……。
「ちょっと気になることがありまして……」
「気になること?」
「――ペースが早いんですよ。かなり早い」
僕が予想したペースより――二ヶ月は早い。
少なくとも、あと二ヶ月はレベルアップしない計算だった。しかし今回レベルアップが発覚したわけで、最低でも二ヶ月の前倒しである。果たして何故なのか。二ヶ月という日数は、誤差にしては少々大きすぎる。
「うーむ。このことをどう考えるべきか……」
「なんでかしら? なんか最近いっぱい戦闘してたとか?」
「むしろここ最近は、ずっとダラダラしていました」
「…………」
ここしばらく強敵との連戦に明け暮れていた――とかだったら、このレベルアップも理解できる。
しかしそうではない。むしろダラけていた。カークおじさん宅で、ダラけられるだけダラける生活を送っていた。
だというのに、急激なペースアップでレベルアップ。これはいったい……。
「……まぁペースが上がった理由は、ある程度想像が付くのですが」
「あら、そうなの?」
「ええはい、上がった能力値を見たらわかります。上がったのが――『器用さ』と『生命力』。とりあえず僕の『器用さ』は基本的に上がるものなので、考慮しないものとして――」
「基本的に上がるって何よ……」
「なんかほぼ毎回確実に上がるんですよ。ちょっとは『素早さ』に回してくれてもいいと思うんですけどね」
「52と7って、えげつない差になってるわね……」
「ええ、本当に……」
そういえば『素早さ』は今回も上がらんかったなぁ……。こっちはもう基本的に上がらない能力値だね……。
「さておき、前回から『生命力』が2ポイントも上がっています。だとすると考えられるのは――」
「考えられるのは?」
「――世界樹式パワーレベリング」
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