第546話 毎回毎回一悶着起こすような輩は、もう出禁にした方がいい
みんなで相談した結果、検問で軽くちょっとだけ一悶着起こす流れとなってしまった。
そのためにはどうすればいいのか、僕達はさらに検討を重ね、準備を整え、そうして人力車で検問に乗り込んだわけだが――
「降りなさい」
「はい」
門番のケイトさんに怒られてしまった。
ケイトさんの犬耳もピーンと立っている。相当おかんむりらしい。
とりあえず一悶着のため、僕とジスレアさんとスカーレットさんの三人は――仮面着用状態である。
僕は白い世界樹の仮面を着用、スカーレットさんは赤い仮面、ジスレアさんは緑の仮面を着用している。ジスレアさんの仮面は、僕が前に使用していたお下がりだ。色をどうするか確認してみたところ、『任せる』とのことだったので、エルフらしく緑に塗ってみた。
それからヘズラト君には鞍を付けてもらい、その上に僕が乗り、さらにヘズラト君が引く人力車には、ジスレアさんとスカーレットさんが乗車している。そんな怪しい三人乗りスタイルでの検問突入であった。
ちなみに、本来人力車の荷台は一人用のため、ジスレアさんとスカーレットさんはかなりギュウギュウな感じで荷台に乗っている。
あの様子を見ていると、僕も荷台がよかったなって少しだけ思っちゃったりもして……。
「しかしながら、この騎乗スタイルは案外ありかもしれませんね」
「はぁ?」
「なんというか、『騎乗』スキルが――」
おっと、いかんいかん。他人のステータスは喋っちゃいけないのがマナーだったな。
「えぇと、なんというか僕はまだ『騎乗』スキルを持っていないのですが、もしも仲間に『騎乗』スキル持ちがいた場合、こうやって無理矢理にでも乗ってもらった方が、運ぶ側の負担も減る可能性があるのではないかと」
何を隠そう、ジスレアさんは『騎乗』スキルを所持している。
しかしヘズラト君の背中への二人乗りは上手くいかなかった。そこはやはり二人分の重量を支える負担の方が大きいという結論であったが――だがしかし、人力車ならどうだろう。
人力車によって、重量的な負担は大幅に軽減されている。その上で『騎乗』スキルによるプラス効果だけが得られるとしたら、あえての二人乗りもありなんじゃないかな?
ただ単に僕が人力車で引っ張られるよりも、『騎乗』スキル持ちのジスレアさんも乗った方が、もしかしたらヘズラト君も楽になるんでない?
うむうむ。ひょんなことから新たな人力車騎乗スタイルの光明が見え始めてしまった。
実際どうなんだろうね? 例えば四人乗りの馬車とかなら、『騎乗』スキル持ちが多ければ多い分だけ、馬は楽になったりするのかな?
「そのあたり、あとでいろいろ検証してみたいかなって――」
「とにかく降りなさい」
「はい」
再度注意されてしまったので、全員人力車から下車した。
僕は鞍から降りて、ジスレアさんとスカーレットさんも人力車から降りて、二人は仮面も外した。
「まったく……。久々に現れたかと思ったら、いきなりなんなの? 何を考えているの?」
「すみません……」
うーむ……。実際に一悶着起こしてしまったわけだが、こうして普通に怒られていると、やっぱりやめればよかったなって後悔が今更ながら押し寄せてくる。
「……いい加減、出入り禁止にするわよ?」
「え?」
「毎回毎回こんなふうに騒動を起こすのなら、そういう対応を取らなければならなくなるわよ?」
「ええ!?」
そんな! まさかの出禁!?
……いや、別に『まさか』でもないか。よくよく考えると普通の対応な気もする。
毎回毎回一悶着起こすような輩は、もう出禁にした方がいいと僕も思う。
しかし、計画の段階ではその発想に至れなかった。そこまで考えが及ばなかった。
僕としては予想外の警告で、思わず企画立案者のジスレアさんに視線を送ってしまったわけだが――
「確かにそういう対応を取られてしまう可能性は、私も理解していた」
嘘つけーい。
「その、すみませんでした……。今後はこのようなことがないよう、再発防止に努めてまいります……」
「ないのが普通なんだけどね……。普通は再発しないわよ……」
もっともな意見である。だけど我らアルティメット・ヘズラトボンバーズは基本的にメンバーがポンコツばかりなため、もう何度目かわからないほどの一悶着を起こしており、再発に再発を重ねてしまっている。そんな度し難いパーティになってしまっている。
「というか、ひとつ気になることがあるのだけれど……この子はなんなの?」
「キー」
ん? あ、そっか。そういえばケイトさんにはヘズラト君の進化をまだ伝えていなかった。
なるほど。ケイトさんからすると、謎の仮面三人衆を謎の大きなシマリスが運んできた絵面だったわけか。そりゃあ驚き、困惑もするわな。
「ええはい、実はですね――」
「ヘズラトは、もういなくなっちゃったの……?」
「違いますよ……」
そうじゃない。別に大ネズミから大シマリスに乗り換えたわけではない。別のげっ歯類に乗り換えたわけじゃあないのだ。
「この子がヘズラト君です。大ネズミから大シマリスに進化したのです」
「進化……? へぇ、そういうこともあるのね」
「褒めてあげてください」
「ん? あ、そう?」
僕の言葉に頷き、ヘズラト君を撫で撫でするケイトさん。
ヘズラト君も、どことなく誇らしげに――してない。
あれ? してないね。あんまり誇らしげな様子には見えない。むしろしょんぼりしている……。
「……なんか元気ないみたいだけど」
「えっと、ヘズラト君?」
「キー……」
「ヘズラト君……」
あぁ、そうなのか……。でもそれは、ヘズラト君が悪いわけじゃないのに……。
「どうしたの?」
「ちょっと落ち込んでいるみたいです。怪しい三人乗りで検問に突撃したら、厳しく注意を受けることはわかっていたのに、それを止められなかったと……」
「そう……」
「あの、できたらヘズラト君は怒らないであげてください。ヘズラト君は悪くないんです。ヘズラト君だけは最後まで、『やめた方がいい』と僕達に助言してくれていたのです」
「じゃあ助言を聞いてやめなさいよ……」
「…………」
ええまぁ、それは確かにその通りで、ヘズラト君にも申し訳無さでいっぱいなのだけど、何せ他のメンバーが全員ポンコツだったがゆえに……。
……うん、やっぱりよくないことだったね。あえて検問で一悶着とか、やってはいかんことだった。
ケイトさんからは怒られるし、ヘズラト君も悲しませるし、いろいろと失敗だった。
猛省である。もうやめよう。本気で再発防止に努めるんだ。もう二度と検問で一悶着起こしたりしないと、ここに固く誓おうじゃあないか。
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