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チートルーレット!~転生時に貰ったチートがとても酷いものだったので、田舎でのんびりスローライフを送ります~  作者: 宮本XP


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第55話 総集編2


 母人形や新型母人形が僕の性癖によるものではないと、しっかり誤解は解いておきたいところだが――それよりも気になることがある。


 さっきからユグドラシルさんの発言を聞いていると、ディースさんを知っているような――なにやら面識があるような口ぶりなんだ。


「ひとつ、伺ってもよろしいでしょうか?」


「うん?」


「えぇと……ユグドラシルさんはディースさんを知っているんですか?」


「この世界の神じゃろ?」


 それはそうなんだけど――というか、それも気になる。

 確かにディースさんはこの世界の神だ。それは間違いない。……しかしそうなると、ユグドラシルさんはどういう存在なんだろう?

 一応ユグドラシルさんも、僕らエルフの神って扱いなんだけど……?


「あの、ユグドラシルさんも僕らの神様……なんですよね?」


「うむ、わしもこの世界の神じゃ。まぁ、ディースにその役目を与えられただけじゃがな」


「あ、そうなんですか」


 役目を与えられたっていうと……雇われ店長みたいな感じなんだろうか?

 しかしそうか、神様なのか、一応神様で合っていたのか。……良かった。なんか良かった。


 子どもにも優しい世界樹様が、『神様気取りの痛い人』にならなかったことに、なんとなく安堵する僕。

 神様でもないのに周りから神様扱いされていたり、自分も神様だと名乗っていたらどうしようかと思っていたんだ。ちゃんと神様で良かった。


「ディースさんとは会ったり話したりするんですか?」


「ほぼないのう、あやつが下界に降りることもないしのう。お主は話せるんじゃろ?」


「え? ああ、さっき言った抽選、そのときに話せますね」


「うん? 普段は話せんのか? さっき話しとったじゃろ? 『ディースさんの方が大きいんじゃないか』の後じゃ、上を見ながら『すいません、さっきのは――』と、言うておったじゃろ?」


 もうその『ディースさんの方が大きいんじゃないか』を繰り返すのはやめてほしいんですけど……。


「いえ、きっと見ているであろうディースさんに話しかけただけです。会話はできません」


「見ている?」


「普段から見られているんですよ僕」


「えぇ……?」


 理解が及ばないような顔をしているユグドラシルさん。

 ユグドラシルさんは下々の者を見下ろしたりしないのかな? 本体はたぶん大きな樹なんだろうから、見ようと思えば見れるのでは?


「常日頃から、ディースさんは僕を観察しているらしいです」


「えぇ……?」


「なんか見ていると楽しいらしいです」


「えぇ……?」


 さっきからユグドラシルさんが『えぇ……?』しか言わない。

 ずいぶん引いてる様子を見るに、ユグドラシルさんは特定の個人をウォッチングしたりはしないようだ。

 プライバシーを尊重してくれるタイプの神様らしい。良い神様だね。


「い、今も見とるんじゃろか?」


「たぶん見ていると思いますけど……?」


 なんとなく上を見上げてみる僕。釣られるようにユグドラシルさんも上を見上げる。……まぁ、天井の木目しか見えないけど。


 実際はどうかわからないけど、たぶん見ていることだろう。こんな面白そうなイベントを、あの二人が見逃すとは思えない。

 またテレビ鑑賞感覚で、キャッキャしているんだろうな……。


「……ま、まぁよいわ」


「はぁ……」


 いや、別によくはないけどね?

 そりゃあユグドラシルさんに文句を言ってもしょうがないんだけど、二十四時間三百六十五日、常に私生活を監視されている状態を『まぁいいか』で済まされたら、(たま)ったもんじゃない。


「とにかくじゃ、それで……えーと、なんじゃったか? どうにもお主との会話は話が脇道にそれるのう」


「はぁ、すみません」


 僕のせいだろうか? まぁ僕のせいだろうなぁ……。僕は会話だけじゃなく、基本的に頭の中でも思考が脱線を繰り返しているくらいだから……。


「えーと……抽選とやらでアレクブラシを貰ったんじゃな?」


「はい。……あ、貰ったのはアレクブラシですけど、両親には『世界樹様にアレクブラシの素材だけ渡された』と、伝えました」


「……なんでじゃ?」


「よくわかりません……なんか流れで……」


 何故かそうなってしまった。両親の中で、世界樹様は毎週パーツを送ってくるデアゴス◯ィーニみたいな扱いになっている。


「あぁそれから、同じく抽選で貰った『木工』スキルですが、これは世界樹様に貰ったとは伝えませんでした」


「ふむ」


「『神様にスキルを授かった』なんて言ったら、なんだか大事になってしまいそうだったので……」


「まぁそうかもしれんのう」


「なので、夢の中に世界樹様が現れて『お前は木工スキルをもっている』と、指摘されたことにしました」


「……なんでじゃ?」


「流れで……」


 流れでそうなってしまったとしか言いようがない……。


「この世界になかったアレクブラシのことはわかる。しかし、『木工』スキルはわしのせいにせんでいいじゃろ、何故わしを絡める?」


「すみません……」


「何故わしがお主の夢に現れて『木工』スキルのことを伝えねばならんのじゃ」


「誠に申し訳ありません……」


 あのときは、もろもろ全て世界樹のせいにしてしまおうと考えていた気がする。本当に申し訳ない。


「素材だけのアレクブラシも、スキルのことも、意味がわからんじゃろ。それで両親は納得したのか?」


「あ、父も『世界樹様がアレクに何をさせたいかわからない』って、言っていました」


「そりゃそうじゃろ……」


「最終的に『アレクブラシを世界に広めよ、世界樹様はそう言っている』なんて父は解釈(かいしゃく)したみたいです」


「言うとらん!!」


 世界樹様が憤慨(ふんがい)しておられる……。

 けどまぁ、宗教ってそんな感じだよね。だいたい信者が勝手に神様の思惑を想像して布教するだけで……。


「えぇと、だいたいアレクブラシの顛末(てんまつ)はこんな感じなんですけど……」


「うーむ……。大筋は把握(はあく)できたが……」


 アレクブラシの顛末というか、アレクの半生を振り返った感じだな。なんだろう、まるでアニメの総集編みたいだ。

 変な感じだな。せっかく新キャラのユグドラシルさんが登場したのに、総集編とは。


「それであの、転生のこと――前世のことは、両親に知られたくないのですが……」


「ふむ、まぁそうじゃのう。こんな話を聞いたら、混乱するじゃろうなぁ」


「はい。なので、お願いします」


 僕は頭を下げてユグドラシルさんに頼み込んだ。


「それから、アレクブラシの販売に関わった父とレリーナパパですが、二人は悪くないんです。元はと言えば僕が悪いんです」


「ふーむ」


「あと、できたらアレクブラシと『木工』スキルの情報は、やっぱり夢でユグドラシルさんに貰ったことにしていただけると――いたたたたたた」


「どこまで図々しいんじゃ貴様は」


「す、すみません……」


 まとめてお願いしようとしたら、またウッドクローをいただいてしまった。

 見た目が幼女なせいか、なんとなくユグドラシルさんは親しみやすい感じがしてつい……。


 しかし加減してくれているのはわかるんだけど、ちょっとポンポン僕の頭を掴みすぎではないだろうか? 今では絶滅(ぜつめつ)危惧種(きぐしゅ)となった暴力ヒロイン並みだ。


 やっぱり明日、ジスレアさんのところで治療してもらおうか。

 漫画やアニメのように、『暴力ヒロインにぶん殴られて血まみれになっても、次の瞬間には何事もなく元通り』そんな風にはいかないんだ。

 なにせ僕は、コメディ作品の主人公じゃないんだから……。





 next chapter:え、食べるんですか?

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[良い点] なにせ僕は、コメディ作品の主人公じゃないんだから……。 えぇ…
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