第529話 『光るパワーパリイ』
ステータスの侵食を続ける『ヒカリゴケ』の恐怖に怯え、何やら錯乱状態に陥ってしまった僕だったが――それはそれとして、新たなスキルアーツのことは気になる。
光るシリーズではあるが、初めて『ヒカリゴケ』以外のアーツ同士が融合したということもあり、その効果は気になってしまう。
というわけで――試し打ちだ。
実際に使ってみて、しっかり効果を確認しておこうではないか。
「それで、そのアーツは剣のアーツでいいんだよね?」
「うん、鑑定でもそう出ていたから」
鑑定結果でも『光るパワーパリイ(剣)』と書いてあったので、剣を使用した場合にのみ使えるアーツで間違いないだろう。
なので、いつもの木剣――魔剣バルムンクを手に、父と共に庭へ出てきた。これから父が『光るパワーパリイ』の試し打ちに付き合ってくれるらしい。
「……でもさ、いきなり人に使っちゃって大丈夫なのかな?」
「ん? まぁ大丈夫じゃない? 『パリイ』ってことは、受け流すアーツだろうし」
「そうは言うけど……『パリイ』だって絶対安全とは限らないでしょ? 前にスカーレットさんの『パリイ』を見せてもらったけど、あれとかすごいもんだったよ?」
「あぁ、確かにスカーレットさんの『パリイ』はすごかったね……。あれを『パリイ』と呼んでいいのか、僕も疑問を抱くくらいだったよ……」
うん、あれはもう受け流すとかじゃなかった。吹っ飛ばす勢いだった。……というか、実際にふっ飛ばしていた。
しかも手も動かさず、触れただけで吹っ飛ばす『パリイ』だ。父の言う通り、あれはもはや『パリイ』ではないと僕も思う。
「もちろん僕があれだけのことをできるとは思わないけど、なんと言っても『光るパワーパリイ』だからさ。パワーパリイだよ? パワーなのよ?」
パワーだよパワー。ただの『パリイ』ではないのですよ。馬力が違いますよ。
「でもまぁ――たぶん僕は大丈夫だよ。これでも剣には自信があるから」
「ほーう?」
何やら余裕だねぇ父……。軽く謙遜しているふうを装いながらも、余裕綽々で自信満々な雰囲気を醸し出している。
というよりも――侮られているのではないか?
僕と、僕の『光るパワーパリイ』が侮られている……。
……まぁね。そりゃあ父はすごいのだろうさ。なんと言っても剣聖様だ。余裕があるのも自信があるのも当然ですわ。
だがしかし、そこまで舐められたら僕も黙っていられない。何より悔しいじゃないか。せっかく手に入れた新アーツをこうも侮られたら、僕だって悔しい。
……うん、ちょいと父の鼻っ柱をへし折らせてもらおうか。
もちろん父に怪我をさせたいわけではないけれど、『光るパワーパリイ』のパワーを見せつけて、父を驚かせ、父には軽くすっ転んでもらおうじゃあないか。
――こっそりそんな決意を胸に秘め、僕は準備に入った。
「じゃあいいかな? 今からアレクに向かって剣を打ち込むけれど」
「いいともさ。準備万端だよ。父にはすってんころりんしてもらうからね」
「すってんころりん……?」
さぁいくぞ、『光るパワーパリイ』の初お披露目だ。
父にはすってんころりんしてもらい、ついでに苔むしてもらうのだ。
「えぇと……いいんだね? いくよ?」
「いつでも来んしゃい」
「来んしゃい……? えっと、それじゃあ――てい」
そうして振るわれた父の木剣。
僕はしっかりと父の剣を見極めて、呪文を唱える――
「光る――あ」
あ、いかん、間に合わん。
「あぁ……」
「あー」
振り下ろされた父の木剣に対し、『光るパワーパリイ』を放とうとしたのだが、呪文が間に合わず、ただのパリイになってしまった。
アーツの『パリイ』ですらなく、ただ単に弾くだけのパリイである。素パリイだ。
「ちょっと父」
「え、僕が悪いの?」
んん、まぁ父が悪いわけではないか……。
あんまりにも間に合わなすぎて、思わず八つ当たりをしてしまった。
「ごめん、今のは僕が悪いね。もう一回お願いしていい?」
「あ、うん。もう一回だね」
気を取り直してもう一度だ。今度こそ華麗に『光るパワーパリイ』を決めてみせよう。
今度はちょっと早口を意識して、父の剣を待つ。
「じゃあいくよ? ――てい」
「光るパワ――あ」
「あー……」
「父」
「えぇ……?」
あ、いや、父は悪くない。
わりと早口で言ったつもりが、またしても間に合わず、再度八つ当たりをしてしまった。
「……というか、前もこんな感じだったね。『光るパリイ』の試し打ちでも父には付き合ってもらったけど、あのときもやっぱり呪文が間に合わなかった気がする」
「あー、そういえばそうだったかな……」
あれから若干だが呪文も伸びたわけで、そりゃあ間に合わないのも納得である。
「んー、ごめんだけど、父の方でタイミングを取ってくれる?」
「え、僕が合わせるの……?」
「『光るパワー』のあたりで剣を振り下ろしてくれると助かるかな」
「いいけど……でもどうなんだろう。相手の方がパリイに合わせて攻撃を振ってくるとか、実戦ではまず起こらないやり取りなんじゃない……?」
「まぁまぁ、今回は試し打ちだから」
「うん……」
実戦でアーツをどう使うかはさておき、今は試し打ちなのでね。
試しに打ちたいのよ。とりあえず効果を確かめるために打ちたいの。
「じゃあいくよ? というか、アレクから言ってくれるかな?」
「よしきた。ではでは、『光るパワー』――」
「てい」
「――『パリイ』!」
お、できた。できたと思う。しっかり発動したはずだ。
上手いこと父の剣をそらすことにも成功したし、普通の『パリイ』よりも多めに魔力を消費した感覚もある。しっかり『光るパワーパリイ』が発動したのだと思われる。
さてさて、それでその効果だが――
「うわぁ……」
「おぉ……」
ふと目をやると、父の木剣にはみっしりとヒカリゴケが生い茂っていた。
……なるほど、やはりパリイした相手に苔が生えるアーツなのね。
まぁそれはそれとして、父は普通にしっかり大地に立っているわけで、すってんころりさせるには至らなかったようだ。無念である。そこは無念。
「父からはどう感じた?」
「あー、うん、パリイはいい感じなんじゃないかな。僕でも思わず体をもっていかれそうになったよ」
「ほー、さすがはパワーパリイだね」
名前通り、かなりの力強さを感じたようだ。剣聖様のお墨付きをもらえたようで、そこは良かったかな。
……うん、良かった。ひょっとしたら『パリイ』ではなく、『ヒカリゴケ』のパワーが上がったりしていないかと心配だったのだが、そうではないようで一安心。
「ヒカリゴケの方はどう?」
「どうって聞かれても……これはよくわからないな。アレクが何をどうしたいのかわからない」
……別に僕が何かをどうにかしたいと思って苔を生やしているわけではないのだけれど。
「まぁ総じて悪くないと思うよ? ヒカリゴケに関してはなんとも言えないけれど、純粋にパリイの性能は上がっているし、普通に使えそうじゃない?」
ふむふむ。確かにね。魔力の消費量は増えるけれど、『パリイ』の上位互換的な感じで……いや、でもどうなんだ? 『パワーパリイ』だったら上位互換と言えそうな気もするけれど、『光るパワーパリイ』だとすると、それはどうなのか……。
『光る』部分が余計なのよね……。そこ別にいらんのよ。そこ求めてない。呪文も無駄に長くなるしさ……。
「んー、やっぱりアーツ名の長さがネックだね」
「そうかもね。特に発動までの速度を求められそうなアーツだし」
「だよねぇ……」
あるいはそこで使い分けることになるのかな。余裕があったら『光るパワーパリイ』を使って、余裕がなかったら『パリイ』を使う。そんな感じになるかねぇ。
「今後も僕の課題になりそうな部分だね……。おそらく次の複合スキルアーツは、『光るパラライズパリイ』や『光るパラライズパワーアロー』だろうし、如何に呪文を早く正確に唱えられるか、そこが課題」
毎回『光るって部分いらんのよなぁ』って思いながら呪文を唱えることになりそうだ……。
そのなんともいえないストレスと、どう付き合っていくか、そこも課題なのかもしれん……。
「えっと、そうとは限らないんじゃない……? 別に毎回『ヒカリゴケ』と融合すると決まっているわけでもないんだし……」
「ほぼ確実にくっ付いてくると、ほとんど確信している僕がいる」
「そうなんだ……」
それ以外の融合はないと、ほとんど諦めている僕がいる。
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