第518話 ミコトたん
うん、問題ないね。大シマリス用に新調した鞍とのことだが、乗り心地も上々で、ヘズラト君的にも着用する上で問題はないそうだ。さすがはジェレッドパパ、良い仕事をする。
というわけで新たな鞍を装着したヘズラト君の背に乗り、僕達は森の中を進み、ダンジョンまで移動した。
そうして森エリアのアレクハウスまでやってきたわけだが――
「良いな。これは良い。素晴らしい出来だよアレク君」
「ありがとうございます。喜んでいただけて何よりです」
ようやく完成したミコト神像を披露したところ、ミコトさん本人も大層喜んでくれた。
「んー、完璧だね」
「そうですかそうですか」
「完璧に再現されている」
「え? ……あ、えぇと、はい、そうですよね。それはもう、はい」
……なんだかしどろもどろになってしまった。
若干だけど現在のミコトさんとは異なっているため、完璧な再現かというとそれは……いや、まぁ天界バージョンのミコトさんと考えれば間違いではない。天界のミコトさんはこうだった。天界のミコトさんは完璧に再現できた。
「嬉しいなぁ。私の初めての神像だ」
神像を手に取りしげしげと眺めながら、そんなことをポツリとつぶやくミコトさん。
ふむ、そうか。そういえばそんなことを言っていたな。ミコトさんは神社仏閣巡りが趣味なのだけど、自分の姿をした像がないことを残念に思っていたとかなんとか。
まぁそこで祀られている神像やら仏像やらについて、姿は違うけど自分のことだとも言い張っていたような気もするけれど……。
さておき、とにかくそういうわけで自分の像がないからと、それで僕に神像作りを依頼してきたんだった。
「ディースは自分の教会も神像もたくさんあって、信者もたくさんいるのになぁ」
「そうですねぇ……」
「それに対し、私の神像はこれひとつで、ちゃんとした信者もアレク君だけだ」
「そうで…………はい?」
……え? そうなの? 僕はミコトさんの信者だったの?
「ん? どうかしたのかな?」
「どうかしたっていうか…………あー、いえ、なんでもないです」
……まぁいいか。まったくの寝耳に水で、今までそんなふうに考えたこともなかったけれど、別に構わないさ。
ミコトさんは間違いなく神様であり、いろいろとお世話にもなっている。神様として、信じて崇めていると言ってもいいだろう。信仰していると言ってもいいはずだ。であるならば、きっと僕はミコトさんの信者なのだろう。
というか、『信者はアレク君だけ』と言うミコトさんに対し、『僕は違いますけど』なんて返答は、とてもじゃないができるわけがなかった。
それに、神様なのに今まで信者が一人もいなかったことを考えると、なんだかあまりにも不憫すぎて、むしろ僕だけでもミコトさんの信者になってあげたいとすら思えてくる。
「まぁミコトさんは下界の人々にアピールもしていないみたいですからねぇ」
「うん、私はあまりにも奥ゆかしい神だったから」
「そうですねぇ」
どうやらミコトさんのことを知っている下界の人間なんて僕くらいなもので、そりゃあ信者も僕以外いないよね……。
とはいえ、僕もエルフだしなぁ。エルフの神はユグドラシルさんだしなぁ……。
だとすると僕もユグドラシルさん信者であることが自然であり、そうでなければ異教徒であり邪教徒であり、もしかしたら十字軍に磔にされてしまうかもしれない……。
そう考えると、ミコトさんの信者だと他人に言うことはできない。
だからまぁ、隠れキリシタンみたいな感じになるのだろうか? 隠れキリシタンならぬ、隠れミコトタン……。
――ミコトたんって言うと、なんかちょっと萌えキャラっぽい感じがするね?
◇
「それにしても、ずいぶんとお待たせしてしまい、申し訳ありませんでした」
ミコトたん――ではなく、ミコトさんに神像を依頼されてから、こうして実際に届けるまで、なんだかんだで半年近く掛かってしまった。
半年待ちの神像である。どんだけ人気商品なんだって話だ。
「いやいや、構わないさ。アレク君もずいぶん忙しかったみたいだしね」
「ええはい、いろいろと立て込んでおりまして……」
予定がねー、予定が詰まっていたのよ。なんかもう予定に追われる日々を送っていた。
でもまぁ、こうしてミコト神像の納品も無事に終わり、大体の予定は消化できた感じもする。
あと残る予定は――
「ダンジョンの改築か……」
「うん?」
「あ、すみません、今後の予定を考えていました。この後はアレクハウスの増築と、設備の拡充なんぞに取り掛かる予定なんです」
アレクハウスの部屋を増やして、それから牧場エリアの設備を増やしたりだね。
「あ、それでこの部屋なのですが――」
「ミコトルーム?」
「……ええはい、ミコトルームですね」
アレクルームだけどね……。ミコトさんに貸しているだけで、正式名称はアレクルームなんだけどね……。
でもまぁ、もういいんだ。もうミコトルームでいい。
「今はミコトさんに貸している扱いだったこの部屋ですが、もう正式に譲渡しようかなと思いまして」
「そうなの? いいのかな?」
「構いません。新たに部屋を増やして、そこへ移ってもらうことも考えたのですが、この部屋をこのまま使い続けてもらう方がミコトさんも楽かなと」
「そうか、助かるよ。ありがとうアレク君」
「いえいえ」
もしくは――新たに一軒ミコトさんの家を建てちゃってもいいんだけどね。
でもそれは断られたはずだ。さすがにそれは悪いと遠慮された記憶がある。
……もうこっそり建てちゃおうか? ミコトさんに遠慮される前にこっそり建てて、完成した後で譲渡しようか?
そうしようかな。さすがに建て終わった後で断られることもあるまい。うん、一応そんな計画も頭の片隅に置いておこう。
「とりあえずそんな感じでダンジョンの改築をして……後はダンジョンマスター的な改築もしたいんですよね」
「ん? ダンジョンマスター的と言うと?」
「そろそろダンジョンに巨大フィールドタイプの新エリアを追加してもいいかなと思いまして」
「なるほど、牧場エリアの次か」
「そうです。そうなんですけど……僕もちょっと悩み中なんですよ。次はどんなエリアにしたものか……」
森エリア、草原エリア、湖エリア、高尾山エリア、雪原エリア、牧場エリアときて……次はどうしよう。いったいどんなエリアを作ったら、みんなが喜んでくれるのだろう。
「ミコトさんはどう思います?」
「私?」
「どんなエリアがあったらいいですかね?」
なんかないですかね。なんか良いアイデアないですか?
「ふーむ。まぁアレク君も今までにいろんなエリアを作ってきたからなぁ。さすがにアレク君もネタ切れか」
「違いますとも!」
「おぉ……。う、うん、ごめんアレク君」
「……あ、いえ、僕こそすみません。つい声を荒らげてしまいました。――ですが違うのです。決してネタ切れなどではないのです」
まだまだアイデアはありますとも。このアレクを侮ってもらっては困ります。無尽蔵ですよ。アイデアなんて無尽蔵に湧いてきますとも。
「とはいえ、確かにミコトさんの言う通り、今までいろんなエリアを作ってきて、パッと思いつくようなエリアはすでにやり尽くした感もありまして……後はいったい何があるのかと……」
「……やっぱりネタ切れなのでは?」
「……違いますとも」
違うのだけど、それは全然違うのだけど……。しかし僕とナナさんだけでは、何かと限界もあるわけで……。
まぁなんというか、みんなに意見を聞くこと自体は悪くないよね。アイデアは広く募集した方がいいに決まっている。
というわけでアイデアを、皆様何卒アイデアを……。なんか良いのがあったら、是非ともよろしくお願いいたします……。
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