第511話 もうすでに僕は十九歳かもしれない
「というわけで、人力車を引くトラウィスティアの姿を遠目に見たり、実際にこうしてトラウィスティアと触れ合ったりしたわけだけど――やっぱり羨ましいのだよアレク君」
「あ、はい」
なんか一周回って話題が戻ってきた。
ミコトさんは羨ましいのだそうだ。大シマリスへと進化したトラウィスティアさんが羨ましくてたまらないとのことだ。
「私も早くレベルを10まで上げて、進化したいんだ」
「進化? え、ミコトさんも進化できるんですか?」
「うん? それはそうだろう。私だって今は召喚獣という立場にいるのだから、トラウィスティアと同じように進化できるはずだ」
そうなの? ミコトさんもレベル10で進化? そういうものなの……?
「ちなみに、ペース的には私ももうすぐレベル10に上がれるはずだ」
「あ、そうなんですか」
ほー、ミコトさんもレベル10到達か。
第一回から第四回までの世界旅行中、ミコトさんは一度も召喚されなかったわけで、その期間分トラウィスティアさんには遅れをとっていたはずだ。それが今は、ほぼほぼ差がない状態だという。
「すごいですねミコトさん、先程はトラウィスティアさんに差を付けられたと言っていましたが、むしろ追い付け追い越せといった勢いじゃないですか」
「まぁね、それはまぁね。アレク君達の第五回世界旅行中、私もみっちり修行を積んでいたから」
「なるほど、さすがですミコトさん」
「ふふん。それほどでもないさ」
てな感じで、ちょっと自慢げなミコトさん。
まぁ第五回世界旅行中、こっちはずいぶんのんびりしていたからな……。
ラフトの町滞在中なんかは、おもむろに外出して、薬草を採取して、それだけで町に戻ってくる生活を長々と送っていたりもしたから……。
そんな僕の生活にトラウィスティアさんも付き合っていたわけで、そりゃあ差を縮められるのも納得だわな……。
「しかしそうですか、もうレベル10なのですね。ミコトさんもトラウィスティアさんも、たった二年でレベル10ですか……」
僕は十歳でレベル10だったというのに、二人とも二歳でレベル10。そういう意味では、僕が一番差を縮められている感がある……。
「まぁもうすぐ三年だけどね」
「ああ、来月で三年目でしたか」
「うん、私もトラウィスティアも来月で三歳だ」
ミコトさんを三歳と呼ぶのは、ちょっと違うんじゃないかって気もするけれど……。
でもそうね、とりあえず来月にはトラウィスティアさんの誕生日会を開くつもりだけど、ミコトさんもミコトさんで、降臨三周年記念とか開いてみてもいいかもね。
「そういえばアレク君も、来週誕生日だったかな?」
「ああはい、来週で十九になります」
来週で十九歳だ。来週の誕生日で…………うん? 来週?
「ん? どうかしたのかな?」
「あ、いえ、なんか妙に引っ掛かって……」
来週。来週か……。
なんだろう。何かが引っ掛かる。なんだ? 僕は何が気になっているんだ? 僕の第六感は何を訴えかけている? 僕の灰色の脳細胞は、いったい何を――
「……ハッ!」
「うん?」
そうか、そういうことか……。
いやしかし、これはいったいどうなるんだ……?
「どうかしたのかアレク君」
「ええはい……。確かに僕は、来週の誕生日で十九歳になる予定です」
「うん」
「ですが実際には……もうすでに十九歳かもしれません」
「……うん?」
◇
来週十九歳の誕生日を迎える僕だが――もうすでに十九歳かもしれない。
この発言に対し、ミコトさんは――
『何やらアレク君がおかしなことを言い出した……。まぁいつものことだけど』
――的な顔をされてしまった。
不本意である。甚だ不本意。
違うんだミコトさん、この発言にはちゃんとした理由があるんだ。
こんなふうに、一見摩訶不思議な発想に僕が至った理由、簡潔に言うとそれは――チートルーレットの影響である。
前回のルーレットで、僕は天界に十日ほど滞在した。
ディースさんにお泊りを勧められたり、再抽選するかしないかで迷った結果、十日ほど滞在したのだ。
――十日である。
ってことはつまりさ――もう十九歳なんじゃない? 誕生日は来週だけど、十日間余計に生きているのだから、僕はもう十九歳なんじゃあないの?
「――ってことを考えたわけですよ」
「なるほどなぁ」
僕の考えをしっかり伝えたところ、ミコトさんもうんうんと頷いてくれた。
「ミコトさんはどう思いますか?」
「うーん、どうかな。あのときは時間の流れをほとんど止めていたし、やっぱりまだ十八歳なんじゃないかって気もするけど」
「ほうほう、そう思われますか」
「でもアレク君の体感的にはもう十九歳か」
「そうですね、体感的には」
「まぁ体感で言ったら、アレク君には前世があるわけで、もうすでに四十代――」
「やめてくださいミコトさん」
それはやめてください。前世と合わせないでください。
僕はまだ十八歳か十九歳なのです。決して四十代半ばとかではないのです。
……まぁ四十代半ばでも、エルフ的には全然若者なんだけどね。
「とりあえずそんな感じで、十八歳なのか十九歳なのかいまいちわからん僕の年齢なのですが――ひとつだけ確かめる方法があります」
「むむ? 確かめる方法? そんな方法が?」
「ええはい、あるのですよ。それがですね――」
「あ、待ってくれアレク君、当てたい。その方法というのを当ててみたい」
「え? あぁはい、わかりました」
ふむ。じゃあ待ちましょうか。
クイズだね。『自分の年齢を確かめるにはどうしたらいいのか』ってクイズ。
まぁ別にそこまで難しいクイズではないので、きっと正解にたどり着けると思います。
時間はたっぷりあるので、じっくりと考えてくださいな。
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