第506話 おや!? フリードリッヒ君の様子が……!
「んー、こうして村の外で狩りをするのも久々な気がするね」
「キー」
「そうなのよ、最近忙しくて忙しくて」
しばらくは等身大アレク人形に掛かりっきりで、その後はすぐに新春パン祭りへとイベントが続いたため、エルフだと言うのに、ろくに狩りをする時間もとれなかった。
今日は久々の狩り。大ネズミのフリードリッヒ君と一緒に、ダンジョンへ向けて森の中を進んでいる最中だ。
「キー?」
「あー、そうだね。あれとかそれとかもあるし、そう考えるとあんまりゆっくりもしていられないね」
確かにフリードリッヒ君の言う通りだ。この後はさらにミコト神像の制作、アレクハウスの増築、牧場エリアの拡充など、またまだ予定が詰まっている。ある意味今は、束の間の休息でしかなかった。
ふむ。束の間の休息で狩りに向かう僕は、むしろとてもエルフらしいとも言える。
うん、エルフだね。だいぶエルフエルフしている。
「ところでフリードリッヒ君の方はどうなのかな? ここしばらく鍛錬に勤しんでいたって話だけど?」
僕がせっせと人形制作やお祭り準備に勤しんでいた頃、フリードリッヒ君もせっせとレベル上げに勤しんでいたと聞いた。
はてさて、今はどんな感じになっているのだろうか。
「キー」
「あ、そうなんだ? もうすぐレベル10?」
「キー」
「おー、すごいなぁフリードリッヒ君」
レベル9に上がったとは聞いていたが、ペース的にもうすぐレベル10に到達できそうとのことだ。
いやはや、早いもんだねぇ。フリードリッヒ君はまだ二歳だというのに、もうレベル10間近なのか。
ちなみにだが、現在のフリードリッヒ君のステータスがどうなっているのかと言うと――
名前:フリードリッヒ・ヴァインシュタイン二世
種族:大ネズミ 年齢:2(↑1)
職業:大ネズミ見習い
レベル:9(↑2)
筋力値 7(↑2)
魔力値 3(↑1)
生命力 3
器用さ 5(↑1)
素早さ 12(↑2)
スキル
大ネズミLv1 剣Lv1
スキルアーツ
エアスラッシュ(剣Lv1)
いやはや、速いねぇ……。『素早さ』12だそうで、もう5ポイントも『素早さ』が引き離されたか……。
きっとレベル10到達時にも、また少し離されるんだろうね。うんまぁ、別にいいんだけどさ……。
◇
ダンジョンに到着した僕達は2-3エリアにて、イノシシ型のモンスター、ボアと戦っていた。
「『パラライズアロー』」
「キー」
「よしよし、今がチャンスだよフリードリッヒ君」
「キー」
僕が放った『パラライズアロー』を受け、動きを止めたボアに向かって、フリードリッヒ君が猛然と駆け出した。
本来僕とフリードリッヒ君のコンビといえば、騎乗状態からの高速戦闘で有名なのだが、もうすぐフリードリッヒ君がレベル10に到達しそうとのことで、今回はフリードリッヒ君のお手伝い的な戦闘となっている。
僕が敵の動きを止めて、フリードリッヒ君がとどめを刺す流れで……いわゆるヤラセハンティングっぽくはあるのだが、その点についてフリードリッヒ君は特に気にしないらしい。むしろ恐縮して、協力している僕に感謝してくれるほどだ。
「キー」
「がんばえー、フリードリッヒ君がんばえー」
「キー」
というわけで僕の応援を背に受け、フリードリッヒ君がボアをザッシュザッシュと爪で引っ掻いていく。
「ふーむ。良い動きだ」
何やら力強さや鋭さを感じる。フリードリッヒ君の成長を感じとれる……ような気がする。
なんとなくそんな感想を抱きながら、僕もフリードリッヒ君に近付いていく。
「キー」
「うんうん、お疲れ様」
僕が近付く頃には、すでに戦闘も終了していた。
無事ボアの討伐に成功し、ドロップしたボアのお肉をフリードリッヒ君がマジックバッグに回収している。
この戦闘方法もなかなか悪くないね。むしろ高速戦闘よりも上手くいっている印象すらある。
まぁあの高速戦闘は、安定感のなさがすごいからなぁ。物理的な安定感のなさがすごいんだわ……。
「良かったよフリードリッヒ君。爪さばきに一段と磨きが掛かったね」
「キー」
「ん? あぁうん、そうみたいだね、父もそう言ってた」
未だ二歳でレベル9のフリードリッヒ君は、一人で森の外には出ないよう決めてある。それでいつもは僕だったりナナさんだったり父だったりが付いているのだけど、最近はよく父と一緒に狩りへ行っているらしい。
「キー」
「え……。そうなの?」
「キー」
「そうなんだ、父が……」
話によると、どうやらフリードリッヒ君は――父に剣術を習っているそうだ。
一緒に出掛けたときは、いろいろと指導してもらっているらしい。
えぇと……まぁフリードリッヒ君は『剣』スキルを所持していて、爪攻撃でも『剣』スキルが活きているようだし、そう考えると別におかしいことでもないのかな……?
いやでも、やっぱり爪は爪なんじゃないの? そこの指導も父はできるの?
なんかむしろ父もすごいな……。そこで指導しようと思った父がすごい。指導できる父がすごい。そのあたり、さすがは剣聖と言ったところか……。
とりあえずしっかり成果も出ているようだし、悪いことではないはず。というか普通に良いことだろう。
あるいはこのまま父の指導でフリードリッヒ君もどんどん実力を付けていって、『剣』スキルをさらに伸ばしていって……そしていつの日か、フリードリッヒ君が剣聖にまで到達する未来もあるのだろうか……。
◇
なんやかんやありつつ、僕達はダンジョンを進んでいく。
そして今は3-3エリアにて、オオカミ型モンスター、ウルフと戦っていた。
「キー」
「ナイスー」
「キー」
さっくりとウルフも討伐終了。うんうん、良い感じ。
フリードリッヒ君が勇ましく戦う姿を見ているだけで、なんだか楽しくなってくる。
さて、この調子でどこまで進めるかな。
言うてフリードリッヒ君はまだレベル9なわけで、そこまで無理はさせられない。ある程度まで進んだら、いったん浅い階層まで戻ろうか。
「ねぇフリードリッヒ君、この後は――」
「キー」
「え? ……えぇ!? ちょ、どうしたのフリードリッヒ君! なんかぷるぷるしているけど!?」
おもむろに視線を移したところ――フリードリッヒ君が小刻みに震えていた
何? なんなの? どうしたの? 寒いの? それともお腹とか痛いの?
「フリードリッヒ君――!」
「キー」
「え……? あ、そうなんだ」
「キー」
なんだか気が抜けるくらい冷静な声が返ってきた……。別に苦しかったり痛かったりということもないらしい。
しかしフリードリッヒ君自身も状況がよくわからないようで……だとしたらなんなのか。こんなこと初めてだ。いったいフリードリッヒ君に何が起こっているのか。
「どうしよう……。一度送還してみる? あ、それとも回復薬? 回復薬を飲む? なんならエリクサーを……」
未だにビンのフタすら開けたことがないエリクサーだが、フリードリッヒ君のためなら喜んで提供するとも!
まぁ本当の本当に一度も使ったことがないエリクサーなので、むしろ本当に飲んで大丈夫なのかって心配も出てきちゃうけど……。
「キー」
「えぇ……?」
フリードリッヒ君に、新たな変化が現れた……。
今度はフリードリッヒ君が――輝き始めた。何やらピカピカと光を放っている。
「どうなってるのこれ……? 何が――」
「キー」
「お、おおぉぉぉ……!? ふ、フリードリッヒくーん!」
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