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チートルーレット!~転生時に貰ったチートがとても酷いものだったので、田舎でのんびりスローライフを送ります~  作者: 宮本XP


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第377話 ポケットからティッシュが出る人


「イメージです。イメージが大事なのです」


 ティッシュの引き抜きに成功したナナさんが、軽く上から目線でレクチャーを始めた。

 ナナさん曰く、頭の中でティッシュペーパーをしっかりイメージすることが大事なんだそうだ。


「ユグドラシル様はティッシュを見るのも初めてですからね、そこが問題だったのかと思います」


「ふむ」


「というわけで、こちらをご覧ください」


 そう言ってナナさんは、ユグドラシルさんに取れ立てのティッシュを手渡した。

 ユグドラシルさんは興味深げにティッシュをわしゃわしゃしている。


「これがティッシュか。確かに薄いのう」


「そのティッシュを(つま)む感じをイメージしていただければ、上手くいくかと」


「うむ。試してみよう」


 ユグドラシルさんは左手にティッシュを掴んだまま、僕のポケットに右手を差し込んできた。

 あっ、できたら優しく。優しくお願いします……。


「むー……む? お、これは」


 ぽそぽそと何かをつぶやきながら引き抜いたユグドラシルさんの手には――一枚のティッシュペーパーが!


「おめでとうございますユグドラシル様」


「うむ。ありがとうナナ」


 ――とまぁこんな感じだ。

 これが、チートルーレットで取得した『ポケットティッシュ』の全容らしい。


「なるほどなぁ……」


「マスターはどうですか?」


「んー、ちょっと待ってね」


 左右のポケットはナナさんとユグドラシルさんにまさぐられているので、僕はお尻のポケットに手を伸ばした。

 そしてポケットから引き抜いた僕の手には――ティッシュペーパー。


「うん。大丈夫っぽい」


「おめでとうございますマスター」


「ありがとうナナさん。それにしても助かったよ。ナナさんのおかげで、この能力を理解できた」


 つまり僕が貰った『ポケットティッシュ』は――ポケットからティッシュを出す能力だったわけだ。

 てっきりポケットティッシュを生み出す能力かと思っていた。袋に包まれたポケットティッシュをイメージしていたせいで、今まで失敗が続いていたのだろう。ティッシュペーパーを指で摘むイメージをもたなければダメだったんだ。


 ……できたらそのことに、早いとこ自分で気付きたかったな。

 天界でやっていた謎セリフ実験を、ディースさんはどんな気持ちで見守っていたのだろう……。


「それよりマスター、調子に乗ってどんどん出しちゃっていますけど、マスターは大丈夫ですか?」


「うん? あぁ、まぁ大丈夫といえば大丈夫だけど……」


 さっきからナナさんとユグドラシルさんが、シュバシュバと僕のポケットからティッシュを引き抜いている。

 何やら無我夢中で引き抜き続けているけど……楽しいんだろうか?


「これは無限に出てくるのですか? それともマスターの体力とか魔力とか――もしくはカロリーなどを消費しているのでしょうか?」


「カロリー? いや、それは――」


「――あるいはひょっとして、マスターの寿命を削っていたりするのですか?」


「なんて不吉なことを……」


 僕からティッシュ引き抜きながら、ナナさんがとても不吉な推察を口走った。


 いきなりなんてことを言うんだナナさん。

 というか、そんな予想を立てつつ引き抜くのをやめないってのはどういうことだ。その一枚一枚が、僕の寿命一日一日だったらどうするつもりだ。


 ちなみにユグドラシルさんは、ナナさんの話を聞いて動きをピタリと止めてくれた。さすがはユグドラシルさんだ。優しい。


「だ、大丈夫なのかアレク?」


「あ、はい。大丈夫です。普通に魔力ですね。じんわり魔力が減っている感覚があります」


「ふむ。アレクの魔力から生み出された物なのか」


「そのようです」


 それを聞いて安心したのか、ティッシュ引きを再開するユグドラシルさん。……楽しいのかな。


「それにしても、少し安っぽいティッシュですね。鼻とか赤くなるやつですよこれは」


「そんなことを言われてもな……」


「私はもっとセレブなやつが欲しいのですが」


「んー。でもユグドラシルさんのはセレブっぽい感じだよ?」


「え?」


 先ほどからナナさんとユグドラシルさんは、引き抜いたティッシュをテーブルに積み重ねているのだけど、触った感じ、ユグドラシルさんのティッシュはどことなくしっとりしている。少しお高めなティッシュの雰囲気がある。


「えっと……あ、本当ですね」


「それもイメージでどうにかなるみたい」


 試しに僕も後ろのポケットへ手を突っ込み、しっとり柔らかなティッシュをイメージしながら人差し指と親指を閉じると――


「ほら、なんか高そうなのが出てきた」


「おぉ……。やりますねマスター」


「ありがとうナナさん」


 というわけで、この能力にはかなりの自由度があるらしい。

 なかなか面白いね。今度いろいろ実験してみようか。


「それにしても……なんなんだろうねこれ」


「はい? 何がですか? かなり便利な能力だと思いますが」


「便利は便利なんだけどさ……」


 だけどこれは、どういうものなんだろう。

 僕の予想だと、スキルじゃないと思っているんだけど……。でもスキルじゃなかったら、いったいなんなんだろう。


 もしかして、僕固有の特殊な体質とかそういうことになるのかな?

 ポケットからティッシュが出てくる体質とか、なんかちょっとイヤなんだけど……。現代の妖怪か何かだろうか……。


「あ、マスター! ウェットティッシュです! ウェットティッシュも出せますよ!」


「…………」


 ポケットからティッシュが出る体質改め――ポケットからティッシュとかウェットティッシュとかが出てくる体質らしい。

 まぁ、もはや大して変わらんか……。





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― 新着の感想 ―
[一言] いろんなティッシュを出せるなら強度の高いのと靭性の高いのを重ね合わせたティッシュ製日本刀を取り出せたり? 手から和菓子出せる能力もなろう小説だと小豆入りアイスソードを作り出して大暴れしそう…
[一言] クリネッ●スさんとかスコ◯ティーさんに就職出来そうな出来なさそうな、うん、ティッシュが存在しなかった異世界においてはとっても微妙wwwww 某後進国の人でも風邪を引くとティッシュペーパーは…
2023/01/07 22:26 退会済み
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