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チートルーレット!~転生時に貰ったチートがとても酷いものだったので、田舎でのんびりスローライフを送ります~  作者: 宮本XP


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第32話 Club Laudette ~ローデット~


 ジェレッドパパと別れてから、僕は『森と世界樹教会』メイユ支部に向かった。


 といっても、僕は別に敬虔(けいけん)な信者でもないし、お祈りをしようと思ったわけでもない。

 だからといって、美人修道女に会いたかったわけでもない。僕がここに来たのは別の理由だ。


 まぁ美人修道女に会いたい気持ちが皆無かと聞かれると、それはわからないけど……。

 無限リバーシ地獄で心と体が疲弊(ひへい)しているんだ、少しくらい癒やしを求めても許される気がする……。


「こんにちはー。ローデットさん、いますかー?」


 僕は教会の中へ入り、礼拝堂からローデットさんに呼びかけた。


「はい、はーい。いますよー?」


 すぐにローデットさんからの返事があった。基本寝ている人だから、起きているのは珍しい。


 返事から間を置かずして、礼拝堂の奥から美人修道女のローデットさんが姿を現す。美人なのは間違いないけど、相変わらず修道女要素はないな、普通の村娘にしか見えない。


「あー、やっぱりアレクさんですかー。もしかしてまた鑑定ですか? 好きですねー」


 ローデットさんの言う通り、僕は度々この教会に訪れてステータスをチェックしている。大体二週間に一度は通っているだろうか。

 他の異世界転生者なら『ステータスオープン』の一言でチェックできるというのに、僕はわざわざ教会まで足を運び、お金を払って鑑定してもらっている……。


 さすがのローデットさんも、子どもから金銭を受け取ることには躊躇したが、僕が半ば強引に押し付けた。

 最初はいいかもしれないけど、何度も無償で働かせられたらイライラするだろうしね、しっかり代金を払うことで、気持ちよく鑑定してもらおうと考えたわけだ。


 ちなみにこのお金は、リバーシで稼いだものだ。ほとんどは両親に渡しているけど、少しだけ僕の分も貰っている。

 木材の購入費や道具の整備費などでもお金がかかるが、そちらは両親が出してくれているので僕が払うことはない。


 つまり結果的に、僕が稼いだお金はほぼ全てローデットさんに(みつ)ぐ形となっている……。


「今日もお願いします。そろそろレベルアップか、ステータスアップしてほしいところなんですけどね」


「どうでしょうねー。それじゃあ……奥の部屋へ来てもらえますかー?」


「あれ? 水晶を持ってきて、ここで鑑定するのでは?」


「そうなんですけどねー。まぁまぁいいじゃないですか。行きますよー」


 ……なるほど、きっと毎回水晶を持ってくるのが面倒くさくなったに違いない。まぁ鑑定さえしてくれるなら、どこだろうと構わないけど。


「こっちですー。ここは応接室になりますー」


 ローデットさんの後に続いて礼拝堂の奥へ進み、扉を抜けると、そこは確かに応接室っぽい一室だった。

 ソファーが二つあって、その間には低めのテーブルが置かれている。それだけ見たら応接室なんだろうけど……。明らかにローデットさんの私物が散見される。ソファーにはタオルケットと枕があるし、テーブルには飲みかけのコップなんかもある。


 ……むしろちょっとドキドキしてきましたよ? 僕は思いがけず女性のお部屋にお呼ばれしてしまったようだ。


「ちょっと待ってくださいねー……はいどうぞ」


 キャビネットの上に出しっぱなしだった鑑定用の水晶を持ってきて、テーブルに置くローデットさん。

 水晶の扱いが雑だ……。たぶん僕が頻繁に来るから、いちいち仕舞うのが面倒になったんだな……。


「あぁ、その前にこれをどうぞ」


「これはこれは、いつもありがとうございますー」


 僕はいつものようにお金を手渡した。……きっと、このお金は教会に回ることもなく、ローデットさんが私腹を肥やすだけなのだろう。

 まぁ、宗教団体に献金するよりは、女性に貢ぐ方がいい……のかな? わかんない。


「それから、ローデットさんがこの前言っていた物なんですけど……」


「えー? 私、何か言いましたっけ?」


「リバーシが欲しいって、言っていましたよね?」


「あぁ! いえ、別にそんなおねだりしたわけじゃないですよー? ただ『いいなぁ、私も欲しいなぁ』って言っただけで」


 それがおねだりじゃなければ、なんだというのだ。


「とにかく、持ってきたのでプレゼントしますよ」


「わー、ありがとうございますー」


 僕はマジックバッグからリバーシを取り出して、ローデットさんに手渡した。そして喜ぶローデットさん――


 ……なんだろう、だんだんここがキャバクラのように思えてきた。

 まるで僕は、キャバクラ嬢に貢ぐ哀れなカモ客のようだ……。神聖な教会で、一体僕は何を……。


「これ、アレクさんが作ったんですよねー? 凄いですねー」


 ローデットさんが僕を持ち上げてくれるこの感じもキャバクラみたいだ……。

 悔しいけれど、悪い気はしない……。実は『ステータス確認のため』なんてただの言い訳で、僕はこれを求めて隔週でここへ通っていたのだろうか?


「アレクさん?」


「え? あぁいや、別に大したことはないんですよ? ジェレッドパパさんに比べたら、僕なんかまだまだです」


「そうなんですか? 私とかこんなの全然できないから、凄いと思いますけどー」


 そう言って、ローデットさんが笑顔で僕を褒めてくれた。


 ……シャンパン。シャンパンはおろせないのか? ボトルは? ボトルはキープできないのか!?





 next chapter:敏腕キャバ嬢ローデットさん

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