第300話 同伴出勤
300話(ノ*ФωФ)ノ
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僕とローデットさんは、流れる湖で一日ぷかぷかと流された後、一緒に村まで帰ってきた。
「ありがとうございますー。夕ごはん奢ってもらっちゃってー」
「いえいえ。あれくらいは別に」
というわけで、夕ごはんもローデットさんと一緒に4-1湖エリアで食べてきた。
夏の間、4-1エリアでは海の家的なノリで屋台を出している人達がいるので、そこで軽く買って食べたのだ。
残念ながらラーメンや焼きそばは売っていないけど、魔物のお肉をパンで挟んだステーキサンド的なものを二人で美味しくいただいた。
そしてその際、なんかいつの間にか僕はローデットさんの分も支払っていた。いつの間にかである。不思議。
「それにしても、ただ浮かんでいるだけかと思ったら、アレクさんは『水魔法』スキルの訓練をしていたんですねー」
「そうですね。母からも、その訓練は効果的だと教えられまして」
実はそうなのだ。ただのんびりぷかぷか流されているだけかと思いきや、『水魔法』の訓練もしていたのだ。
水に浸かった手や足や胴体で、周りの水に魔力を流すという地道なトレーニングを、陰ながら頑張っていた僕だったりする。
……まぁ、毎回十分もすれば訓練のことを忘れてしまい、やっぱりただのんびりぷかぷか流されるアレク君に成り下がってしまったりもするのだけど、一応は訓練もしていた。
「アレクさんは、いつも一生懸命ですねー」
「いえ、そんな」
「尊敬しますー。きっとアレクさんなら、『水魔法』もすぐに取得できますよー」
「いえいえ、そんなそんな」
こうして僕は、いつものように気持ちよくされてしまう。
最近はあまり教会にいてくれないのでローデットさんと話す機会もあまりなく、少し寂しさを感じていたのだけれど、今日だけでずいぶんと心が満たされた気がする。
ちなみにだが、ローデットさんが教会におらず、ジスレアさんも村にいないため、ここしばらくはフルール工務店を訪れる機会がかなり増えていた。
フルールさんはいつも笑顔で僕を歓迎してくれて、毎回楽しくお喋りしてくれるのだけど……行ったからには木材を買わなければいけないのが少し大変だ。
普段から暇さえあれば木材で何かしら作っている僕ではあるが、さすがにこれでは消費が追いつかない。お陰で用途が決まっていない木材が、相当量溜まってしまった。
できたら木材なしで、お金だけ貰ってくれたらいいのになぁ……。
「おっと、着きましたね」
「はい。じゃあアレクさんも中へどうぞー」
「失礼しまーす」
のんびりお喋りしながら歩いていると、教会に着いた。
ローデットさんに続いて教会に入った僕は、そのまま誘導されて応接室まで進む。
「ではローデットさん、こちらをどうぞ」
「ありがとうございますー」
応接室のソファーに腰掛けたローデットさんに、とりあえずお金を渡す僕。
それから僕も対面のソファーに座って――ふと思った。
よく考えると、これは――
「どうかしましたか?」
「あ、いえ……」
夕食を奢って、一緒にお店に来て、そしてまたお金を払って……。
――同伴出勤だ。
これはもう、まるっきり同伴だ。いつの間にか、そんなムーブをこなしていた。
「アレクさん?」
「……いえ、なんでもないです」
「はぁ」
まぁいいさ。いいんだ。僕が納得しているんだから、これでいいんだ。
「では、さっそく鑑定させていただきたいのですが」
いつもなら、しばらく二人でお喋りをして、帰り際に一応鑑定してもらうって流れなのだけど……さすがに今日はもう十分話したしね。
夏なので外はまだ明るいけど、実際にはもう結構な時間だ。今日は鑑定だけして帰ろう。
「あ、そうだ。追加でこちらをどうぞ」
「ありがとうございますー」
僕は追加で、もう一人分の鑑定代を手渡した。
「せっかくなので、大ネズミのリンゴちゃんも鑑定してもらいたいです」
「あぁ、そうなんですか。もちろんいいですよ?」
「ありがとうございます。よろしくお願いします」
……というか、今ローデットさんはなんの金かもわからないまま自然に受け取って、それで『ありがとうございますー』って言ったのかな?
なんというか、さすがだな。さすがはローデットさんだ……。
「それじゃあ召喚しますね?」
「どうぞー」
「『召喚:大ネズミ』」
「キー」
ローデットさんの許可を取ってから、僕はリンゴちゃんを召喚した。
幸い今日はナナさんにリンゴちゃんを取られていなかったので、サクッと召喚できる。
「キー」
「こんにちはー」
いつものようにキョロキョロしてから、ローデットさんにペコリと頭を下げるリンゴちゃん。ローデットさんも挨拶を返している。
「さてリンゴちゃん。今日はちょっとリンゴちゃんの鑑定をしようかと思ってね」
「キー」
「あ、いいんだリンゴちゃん。お金はもう払ったから」
リンゴちゃんが自分のマジックバッグからお財布を取り出そうとしたので、僕は慌てて止めた。
確かに僕はローデットさんに無闇矢鱈と貢いでいるけど、リンゴちゃんまでそうなってはいけない。
「ではローデットさん、始めていいですか?」
「いいですよー」
「じゃあリンゴちゃん、頑張ってね」
「キー」
僕がリンゴちゃんに促すと、リンゴちゃんは鑑定用の水晶に手を当てて――
名前:リンゴ
種族:大ネズミ 年齢:0
職業:大ネズミ見習い
レベル:3(↑2)
筋力値 2(↑1)
魔力値 1
生命力 1
器用さ 2(↑1)
素早さ 6(↑4)
スキル
大ネズミLv1 剣Lv1
「おぉ!」
「おー」
「キー」
レベルが上がっている! レベルが2から3に上がっている!
「やったねリンゴちゃん! レベルアップおめでとう!」
「おめでとうございますー」
「キー」
いやー、なんだかずいぶんとハイペースでレベルアップしているね。
リンゴちゃんは生まれてまだ五ヶ月だというのに、もうレベルが二つも上がるとは。
……というか、無理をさせすぎてない? 大丈夫?
まだ生後五ヶ月だというのに、無茶な経験値稼ぎをさせちゃってないか、少し心配になってしまうな。
「えーとそれで、能力値が……うん?」
「…………」
「…………」
リンゴちゃんは今回のレベルアップでも『素早さ』が二つ上がって、『素早さ』6になったようだ。
「『素早さ』6か」
「…………」
「…………」
生後五ヶ月でレベル3のリンゴちゃんに、生後十六年でレベル26の僕が、『素早さ』で並ばれてしまったな。
……いや、別にいいんだ。それは構わない。
これはリンゴちゃんが努力した結果だ。僕を背に乗せて旅をする上で何が必要か、それを考えて努力してくれたんだ。その結果が『素早さ』6なんだ。
だとすれば、リンゴちゃんには感謝しかない。感謝こそすれ、嫉妬も妬みも湧いてこない。
というわけで、僕はそれほど気にしていない。
……気にしていないというのに、敏腕キャバ嬢のローデットさんと、空気を読める大ネズミのリンゴちゃんが、僕に気を遣って何も言ってこない。
むしろ気を遣われすぎて、なんだか軽くモヤモヤするのだけど?
「さて、それじゃあ僕も鑑定しますね?」
「頑張ってくださいー」
「キー」
うん。では気を取り直して、僕の鑑定だ。
つい最近レベル26に上がったばかりなのでレベルアップはないだろうけど、他に何か変化がないだろうか?
……なんかの奇跡が起きて、僕の『素早さ』が上がっていたりしないかな? 再びリンゴちゃんの『素早さ』を引き離していたりしないかな?
いや、別に僕は全然何も気にしていないけど、そんな奇跡が起こったら少し嬉しい。
そんなことをちょっぴり考えつつ、僕が鑑定用の水晶に魔力を流すと――
名前:アレクシス
種族:エルフ 年齢:16 性別:男
職業:木工師
レベル:26(↑1)
筋力値 18
魔力値 15(↑1)
生命力 9(↑1)
器用さ 34(↑1)
素早さ 6
スキル
剣Lv1 槌Lv1 弓Lv1 火魔法Lv1 木工Lv2 召喚Lv1 ダンジョンLv1
スキルアーツ
パワーアタック(槌Lv1) パラライズアロー(弓Lv1) ニス塗布(木工Lv1) レンタルスキル(召喚Lv1)(New) ヒカリゴケ(ダンジョンLv1)
複合スキルアーツ
光るパワーアタック(槌) 光るパラライズアロー(弓)
称号
剣聖と賢者の息子 ダンジョンマスター
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