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チートルーレット!~転生時に貰ったチートがとても酷いものだったので、田舎でのんびりスローライフを送ります~  作者: 宮本XP


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第298話 世界樹の杖


「終わっちゃった」


「ん? あぁ、(あめ)のこと?」


 トード狩りが終わり、てくてくとダンジョン内を歩いている最中、ディアナちゃんが唐突に終了を宣言した。

 何事かと思ったが、どうやらアレク飴を舐め終わったらしい。


「美味しかった」


「そっか、それは何より」


「棒いる?」


「……はい?」


「棒」


「えっと……」


 どんな質問だ……。

 ディアナちゃんは僕のことをなんだと思っているんだ。そこまでの変態だと認識しているのだろうか?


「また飴を作れるでしょ?」


「え? あ、そういう……」


 そっか、そういうことか。棒のリサイクルを勧めただけだったか。


 ……それなのに僕ときたら、何やらろくでもない勘違いをしてしまった。

 結果的にそんな勘違いをした僕は、やはり大層な変態だということになってしまった……。


「どしたの?」


「あ、いや、別に大丈夫だよ? 棒は捨てちゃって構わないから」


「そう? じゃあいいか」


 そう言ってディアナちゃんは、そこら辺を歩いていた救助ゴーレムに棒を手渡した。


 …………。


 ……何故渡した。


「また今度作ってね?」


「え? あ、うん。それはいいんだけど……」


 突然棒を渡されて困惑しているゴーレム君が気になって見ていたら……ゴーレム君は通路の端っこに棒を捨てていた。

 まぁ、さすがにずっと持ち歩きはしないか……。とりあえずそのうちダンジョンが吸収してくれるだろう。


「――あ、そういえばさ」


「ん?」


「世界樹様から、また枝を貰ったんだよね」


「また? なんかしょっちゅう貰うね」


「これで四本目かな? 世界樹様(いわ)く、旅から帰ってきたお祝いだって」


「え? いや、どうなのそれ……」


 まぁねぇ。たった二日で帰ってきちゃったわけだし、それなのにお祝いだと言われて、僕も少し困惑した。


「どうも世界樹様は、僕が帰ってきたら枝をプレゼントしようって前から考えていたらしいんだ。それで『とりあえず決めていたことなので』って、なんか貰った」


「そうなんだ……」


 僕としても多少複雑な気持ちではあったけど、ありがたいことはありがたい。

 ユグドラシルさんの気持ちは嬉しいし、世界樹の枝なんて何本あってもいいものだ。


 そういうわけで、ありがたく頂戴した。

 ユグドラシルさんが、『アレクには枝を与えておけば喜ぶ』と認識しているっぽいことが若干気にはなったが……とりあえず感謝しつつ受け取った。


「んで、今度は何を作るの?」


「うん。それで――杖を作ろうかと思ったんだ」


「杖……?」


 杖である。貰った世界樹の枝を使い――『世界樹の杖』を作ろうと思ったのだ。


 今まで剣、弓、槌と、自分のスキルに合わせた武器を作ってきたので、今度は魔法スキルに合わせ、世界樹の杖を作ろうと考えたわけだ。


「杖とか、何に使うの? 剣聖さんも賢者さんも、まだそんな歳じゃないよね?」


「うん」


 気を付けようディアナちゃん。たぶんその発言は、賢者さん的にアウトだと思う。


「魔法を使うとき、杖があったらいいかなって思ったんだ」


「意味わかんない」


「うーむ……」


 今のディアナちゃんと同じように、僕が世界樹の杖を作ろうとして、それを伝えた全員から『なんで?』と聞かれた。

 そして僕が『魔法のため』と答えると、全員が全員、不思議そうな顔を見せたのだ。


 このことからわかるように、どうやらこの世界では――魔法のために杖を使うことはないらしい。


「……杖があれば、魔法スキルの補助や強化になると思っていたんだよね」


「……なんで?」


「なんでだろうね……」


 改めて聞かれると、僕にもわからない。わからないけど、前世ではそうなっていた。

 まぁ確かに改めて考えると謎だ。なんでだろう? 誰が持ち出した設定なんだろう?


「母やジスレアさんも首を捻っていたし、どうやら杖にそんな効果はないらしいよ?」


「そりゃそうでしょ……。なんで杖持つと魔法が強くなると思ったのよ」


「なんかずっと勘違いしてて……。生まれたときからそうだろうと思い込んでいたんだ」


「生まれたときから……」


 ちなみにだが、僕と同じ記憶をもつナナさんも同様の勘違いをしていた。


 世界樹の杖のことを伝えたときも、ナナさんだけは良い案だと褒めてくれた。

『きっととんでもない魔法が使えるようになりますよ』『むしろ最初に作るべきだったのでは?』とまで言っていた。


 非常に危ないところだった。他の人にも意見を聞いておいてよかった。でなければ、僕はそのまま世界樹の杖を作り始めてしまっていたことだろう。


「なんというか、思い込みって怖いね」


「そう……」


「そういえば昔、エルフ族は耳が長いものだなんて思い込みもしていたなぁ」


「意味わかんない……」

 

 まぁそんなわけで、世界樹の杖作製計画はすぐに消滅した。

 それで僕も杖のことはすっかり忘れていたのだけど、先程ディアナちゃんがアレク飴を指揮棒のように使っていたのを見て、ふと思い出したのだ。

 あんなふうに杖を振りかざして、強力な魔法スキルを行使してみたかったねぇ……。


 さておき、そんな世間話をしながらダンジョン内を歩いていると――


「さて、ディアナちゃん。一番奥まで到着したわけだけど……まだみたいだね」


「んー残念」


 5-4エリアまで進んできた僕達だが、目の前には――


『ダンジョンコアを壊さないように。――世界樹ユグドラシル』


 ――なんて文章が刻まれている扉が見える。扉の向こうはダンジョンコアのエリアである。

 というわけで、現在『世界樹様の迷宮』は5-4エリアまで。その先は未実装だ。


「たぶん次は遊べるエリアだと思うんだけどなー」


「遊べるエリア……。まぁそうだね。これまでの流れからいうとそうだろうね」


 ディアナちゃんの読み通りだ。次の6-1は巨大フィールドタイプのエリアを予定している。


「次はどんなかな?」


「どうだろうねぇ。ディアナちゃんはなんだと思う?」


「んー。湖、山ときて、次は…………砂漠?」


「砂漠かぁ……」


 まぁなくはない。なくはないよね、砂漠。

 ……遊べるエリアなのかどうかは知らないけど。


「あとはなんだろう? 沼とか?」


「沼……」


 まぁなくはない……のかな?

 にしても砂漠やら沼やら、ディアナちゃんは厳しいエリアを提案してくるね……。


「あ、一回海とか見てみたいかな」


「なるほど、海か」


 うん。それも候補だよね。ありだと思う。

 しかしながら、海エリアは安全対策とか湖エリアとの差別化とか、いろいろ難しそうな気もするんだよねぇ。


「それか……雪が降ってるエリアとか?」


「ふむ。雪原」


 ……実は正解だったりする。

 ナナさんと話した結果、次は雪原エリアにしようかと考えていたりする。もうちょいしたら実装予定だ。


「あー……けどさ、新しいエリアができても、結局アタシ達は一ヶ月くらい入れないわけでしょ?」


「たぶんそうだろうね。また待つことになると思う」


 いつものように、まずは大人エルフが安全を確認する作業が行われるはずだ。

 僕達子供エルフに開放されるのは、おそらく一ヶ月ほど先になるだろう。


「それじゃあさ、アレクとは一緒に探索できないかもね……」


「そうだね……。その頃には、もう旅に出発しているはずだから……」


 一ヶ月後には夏がやってくる。そうしたら僕は、世界旅行に再出発だ。


「やっぱり寂しいな。もうすぐいなくなっちゃうのか……」


「うん……」


「……二年ね」


「え? あ、うん。二年」


「それ以上、待ってあげないんだから」


 そう言って、ディアナちゃんが僕の肩をコツンと叩いた。


 ……前回の出発前にもあったやり取りだが、相変わらずラブコメっぽい。なんだか肩パンまでラブコメっぽい。少し照れくさい。

 いやはや、さすがはディアナちゃんだ。今の今までわりと間抜けな会話をしていた僕達だが、一瞬で空気を変えてみせた。さすがである。


「けど二年……。二年かぁ……」


「二年だねぇ」


「なんだったら、また二日で帰ってきても構わないからね?」


「えぇ……」


 いや、それはちょっと……。ディアナちゃんの気持ちは嬉しいけど、さすがにそれはちょっと……。





 next chapter:ぷかぷかと流されていくエルフ達2

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