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チートルーレット!~転生時に貰ったチートがとても酷いものだったので、田舎でのんびりスローライフを送ります~  作者: 宮本XP


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第249話 ユグドラシルさんごめんなさいリスト3


 ――湖開き。


 まぁそんな言葉があるのかは知らないけど、4-1湖フィールドにて泳ぐ人達が増え始めた今日この頃、僕はとある人物と一緒にダンジョンへ訪れた。


「いやー、今日も暑いですねぇフルールさん」


「そうだねー」


 というわけで、美人建築士にして美人大工職人のフルールさんである。

 今回ちょっとお願いがあり、フルールさんと一緒にダンジョンまでやってきたのだ。


「ダンジョン内はいくぶん涼しいですからね、ササッと中へ入りましょう」


「そうしよう――ん?」


「はい? どうかしましたか?」


 さっそくダンジョンへ入ろうとしたところ、フルールさんが入り口で急に立ち止まってしまった。


「こんにちは! …………あれ? あ、そっか」


「えっと、フルールさん?」


「ごめんアレク、世界樹様かと思って」


「あぁ……」


 なるほど。入り口に設置された二代目等身大リアルユグドラシル神像を、本物と勘違いしたのか。


 まぁあるあるだ。『世界樹様の迷宮』あるあるだ。みんな一瞬勘違いする。

 というか見慣れているはずの僕ですら、一瞬勘違いしてしまった。『きゃるーん』なポーズをとっている二代目さんを見て、僕は思わず――


『ユグドラシルさん、今日はずいぶんハジケてんな……』


 などと考えてしまった。


「実は結構久々にダンジョンへ来たんだけど……これが噂になっていた世界樹様の像かぁ」


「噂になっているんですか……」


「この世界樹様の像は、アレクが作ったんだっけ?」


「そうですね。完成した神像を世界樹様に見せたところ、ダンジョンの入り口に置いたらいいと言われまして」


 改めて考えると、よく許してくれたよね。こんなにもリアルで、こんなにも『きゃるーん』なやつ。

 下手したら、ユグドラシルさん本人の権威を失墜させちゃいそうな気が――


「……んん?」


「ん? アレク?」


「あ、いえ、なんでもないです」


 ……ふと思い出したんだけど、ダンジョンに設置してもいいって話は、リアル化する前の二代目さんじゃなかったか?

 こんなにもリアル化しちゃった二代目さんのダンジョン設置許可は、貰っていなかったような……?


 あれ? 大丈夫か? これはもしや、またしてもユグドラシルさんごめんなさいリスト案件か……?


「なんだか像の前にいろいろあるね」


「え? あぁ、そうなんですよね」


 二代目さんの前には、ここへ訪れたエルフ達がいろいろとお供えしていく。


 僕とナナさんは、『あんまり食べ物を足元に置いていく人はいないだろー』と予想していたけれど……いつの間にかちゃんとしたお皿も設置され、野菜やら果物やら麦やらお酒やらが置かれるようになった。


「せっかくだから、私も置いていこうかな」


「えぇと……」


「何にしようかな。あ、お金でもいいんだ」


 ……そうなのだ。いつの間にか賽銭(さいせん)箱っぽい小さな箱も設置され、そこへ奉納する人が後を絶たない。


 ちなみに食べ物もお金も――すべてダンジョンが吸収して、ダンジョンポイントになっている。


 ……いや、それだけ聞くと間違いなくごめんなさいリスト案件なのだけど、僕としては言い分がある。


 食べ物をお供えされて、僕とナナさんはどうしようか困ってしまった。最初の頃は日持ちする食材が置かれていたが、それでもずっと置きっぱなしなら腐ってしまう。

 それならばと、ダンジョンポイントに変換したのだ。ダンジョン入り口もダンジョンに含まれるらしく、そこは無事に吸収できた。


 そんなわけで腐る前にポイント化していったところ、エルフの皆さんは『あ、何を置いてもいいんだ』と思ったようで、どんどん自由に食材を置くようになった。

 仕方ないので一定期間経過したお供え物はダンジョンに吸収させて、ついでにお賽銭も吸収させている。


 もちろんこれで得たダンジョンポイントは別に集計しており、後でどうにかユグドラシルさんにお返しするつもりだ。

 というわけで、最終的にはちゃんと世界樹様本人に奉納される形とはなっているのだが……。


「えぇと、ですがそこまで無理に奉納しなくても……」


「ん? そう?」


「はい。そこの看板にも書いてありますし」


 どうしても世界樹様の名前を(かた)って詐欺をしている感が否めなかったので、『無理に奉納しなくていいです』という意味の看板を作り、二代目さんの隣に立てさせてもらった。


「えぇと……『あんまり置かなくていいのじゃ』」


「はい」


 看板にそう書いて、地面に立ててみた。

 とりあえずユグドラシルさんの口調も真似てみたのだけど……改めて見ると、なんだかこれも案件な気がするな。


「んー、だけどせっかくだから、ちょっとだけ入れていこう」


「そうですか……。じゃあ僕も……」


 というわけで、お賽銭箱に二人で小銭を入れた。

 しばらくしたら、ダンジョンポイントに変換されることだろう……。



 ◇



 奉納を終えた僕達はダンジョンへ入り、階段を降りて――1-1エリアに到着した。


「結構変わったねここ」


「そうですねぇ」


 以前は大ネズミと救助ゴーレムがいるだけのエリアだったが、今では少し変わっている。

 イベント会場的な使い方もできるように、大ネズミエリアと何もないエリアで分けたのだ。いつかのダンジョン会議でナナさんと決めたことだね。


「なんだか不思議な材質……」


 双方のエリアから確認できるように、仕切りは透明なアクリル板っぽい感じの壁となっている。


「それでですね、ここへ来る前に話していたことなんですが――」


「うん。依頼だね?」


「はい。こっちの何もない部屋に――舞台を作ってほしいんです」


 舞台。舞台である。

 一応救助ゴーレムが一体ポップする設定にはなっているが、彼以外は何もないこの部屋へ、演劇等で使える舞台を作ってほしいのだ。


 ダンジョンポイントを使ってさくっと作ってもよかったのだが、せっかくなのでフルールさんに依頼することにしてみた。


「うーん。どんな感じにしようかな?」


「そうですね、とりあえず周りから見えるよう、部屋の中央に一段高い円形の舞台さえあればそれで」


 1-1を二つに分けた際、こっちの舞台用エリアはサイズを少し拡大した。なので、ある程度大きめの舞台でも設置できるはずだ。


「素材は? 木でいいのかな?」


「はい。大丈夫です」


「そっかそっか。じゃあそうだな、ちょっと準備して――明後日辺りから始められると思う」


「ありがとうございます」


「それじゃあ明後日から、頑張ろうね!」


「はい! ……はい?」


 ……あれ? これはもしかして、また僕も手伝うことになってるのかな?

 いや、木製なら僕も手伝うことができるだろうし、それは別に構わないけどさ……。


 実は他にも作ってもらいたい物がいくつかあるのだけど、この感じだと、そっちも全部手伝うことになりそうね……。





 next chapter:カラートードガチャ

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