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チートルーレット!~転生時に貰ったチートがとても酷いものだったので、田舎でのんびりスローライフを送ります~  作者: 宮本XP


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第247話 ダンジョン会議3


「なかなか盛況でしたね」


「そうだねぇ」


 今日、僕とナナさんは母に連れられて、ダンジョンの1-1エリアでギターの発表会を行ってきた。


 といっても、そこまで大々的に人を集めたってわけでもなく、メイユとルクミーヌの知り合いに声を掛けて、あとはダンジョンの1-4でたむろっていた人達に宣伝したくらいだ。

 それでもそこそこの人数が集まってくれて、感謝しつつも、『エルフは暇だなぁ……』と、しみじみ思ったりもした。


 そんな発表会が終わり、僕は自室にてナナさんと、発表会の反省会をしていたわけだが――


「もし次があるなら、もうちょっと上手く弾きたいね。やっぱり今回は緊張していたせいか、ミスが多かった」


「そうですね、私も多かったです。正直今回盛り上がったのは、ほとんどお祖母様のおかげと言っても過言ではないでしょう」


「そうねぇ」


 発表会って言葉の雰囲気から、てっきり僕とナナさんが順番に演奏するのかと思いきや、普通に母も混ざって弾いていた。

 ……むしろ、母が一番張り切っていたような雰囲気さえあった。


 まぁそんな母のおかげで盛り上がったのだし、母には感謝すべきだろう。


「次回は私達も頑張りましょう」


「うん。頑張ろう」


「できたらオリジナル曲なんかも披露したいところです」


「オリジナル曲?」


 今回は、エルフの伝統的な曲目をいくつか演奏した。

 みんなが知っている曲だったからこそ盛り上がった部分もあると思うのだけど、オリジナルとは……。


「ナナさんはチャレンジャーだねぇ……。それで、そのオリジナル曲はどうするの? ナナさんが作るの?」


「地球の名曲を、いくつかピックアップして演奏しようかと」


「パクリじゃないか……」


 どこがオリジナルなのか……。これ以上ないくらいにパクリじゃないか……。


「大丈夫です。誰も知らない曲なのですから、私達のものにしてしまいましょう」


「えぇ……」


 あんまよくないと思うよ、そういうの……?


 いやまぁ、僕もリバーシやらなんやら地球産の玩具(おもちゃ)を売り出しているわけで、そう考えると強くは言えないんだけどさ……。


「いいのかなぁ」


「問題ありません。どこぞの音楽の著作権協会も、ここまでは追いかけてこないでしょう」


「そりゃあねぇ……」


 そりゃあさすがに異世界までは使用料を請求しにはこないだろうさ……。


「私としては、是非ともこの世界の人達にもパンクの素晴らしさをお伝えしたいのです」


「しかもやっぱりパンクなのか……」



 ◇



「さてナナさん、反省会も終わったところで、ちょいと会議だ」


 次回のギター発表会では、ナナさんの好きなパンクと、僕の好きな日本の名曲を披露しようと決まったところで、次は会議だ。


「会議ですか?」


「会議だね」


「会議というと――いつまで経っても低すぎるマスターの『素早さ』は、どうしたら向上するのかという会議ですね?」


「違う」


 いきなり何を言うのか。

 確かにいい加減どうにかしたい問題ではあるけれど、そんな会議を開こうとしていたわけではない。


「では、ようやく利用価値が見つかったヒカリゴケ。魚は食い付きましたが、人だとどうなるのか。食べられるのか、食べたらどうなるのか。誰に食べさせようかという会議ですね?」


「違う」


 ……というか、ナナさんはそんなことを考えていたのか。

 えぇ? 人が食べたら? そりゃあ確かに気にはなるけれど……。


「それでは、マスターの女癖の悪さについて――」


「違う」


 僕は女癖が悪くなんてない。


「じゃあなんですか? マスターの度重なる奇行についての会議ですか?」


「違うってば、ダンジョン会議だってば。というか、ナナさんわかってて言ってるよね?」


「はて」


 僕が会議だと伝えると、ナナさんは毎回毎回見当違いの議題を持ち出してくる。

 前から思っていたけど、明らかにわかってて言ってるよね? ダンジョン会議だとわかっていながらボケているよね?


「そもそも奇行って何よ、奇行って」


「今マスターがやっていることですよ。普通に気になっていたのですが、そのコップの水はなんですか?」


「え? あぁ、これか」


 僕は今、水の入ったコップに指を突っ込んでいる。

 言うまでもなく、『水魔法』の訓練だ。


 ……いや、ちゃんと言っておいた方がよかったな。確かにこれは奇行と言われても仕方がない。


「あれですか? タライに水を溜めて、足を突っ込むやつの亜種ですか? 確かに最近暑くなってきましたが」


「コップに指じゃ、大して涼はとれないでしょ……。そうじゃなくて、これは『水魔法』の訓練だよ」


「あぁ、そういえば『水魔法』の訓練を昨日から始めたと言っていましたね」


「そうそう。このコップの水に魔力を流すって訓練」


「なるほど、水に魔力ですか。難しいのですか?」


「難しい。全然できない」


 とりあえず今日もこの訓練をしているのだけど、なんせ訓練を始めてまだ二日目なもので、成果は大して出ていない。

 流せる魔力の範囲も、指から一ミリ程度もないのが現状だ。


「ちなみに、『土魔法』なら泥団子をこねる作業だったらしいよ?」


「泥団子を……」


「『風魔法』なら、団扇(うちわ)(あお)ぐ作業なんだって」


「泥団子と団扇ですか……。なんというか、どれも魔法の訓練っぽさがないですね……」


「まぁ、その魔法を使うことすらできない段階だからねぇ……」


 もうちょっと進んだら、多少は魔法の訓練っぽくもなるのだろう……。


「それはさておき、ダンジョン会議だよナナさん」


「ああはい。ダンジョン会議ですか」


「今日の議題は、5-1エリアをどうするかだけど――」


「高尾山でよいのでは?」


「あー、まぁそうだね。高尾山は4-1の候補にも最後まで残っていたしね、じゃあそうしようか?」


「ではそういうことで」


「うん」


 ……あれ? なんかダンジョン会議は一瞬で終わっちゃったな。

 むしろ、会議前の無駄話の方が長かった気がする……。





 next chapter:ダンジョン会議4

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