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チートルーレット!~転生時に貰ったチートがとても酷いものだったので、田舎でのんびりスローライフを送ります~  作者: 宮本XP


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第239話 VS大ネズミ9


 ナナさんが惨殺(ざんさつ)した大ネズミから、ひげを二本切り取った。

 この二本のひげを使い――いよいよ蘇生薬の実験を開始する。


「それじゃあ始めるよナナさん?」


「はい。では、ひげは私が」


「あ、うん。よろしく」


 ナナさんにひげを渡してから、僕は陶器のお皿と蘇生薬をマジックバッグから取り出した。

 そしてお皿を地面に置き、そこへ蘇生薬を数滴垂らす。


「では今から――二本のひげを同時に蘇生薬へ浸けます」


「頑張ってナナさん」


「頑張ります。頑張って、なるべく同時に浸けます」


 ナナさんは左右の手に一本ずつひげを持ち、ゆっくりとお皿の蘇生薬に近付けた。


 さて、いったいどうなるのか。この二本のひげから、二体の大ネズミが復活してしまうのか否か。

 もしそうなれば、同一個体の大ネズミを複製できるということになる。


 それはつまり――ジェレッド君の複製すら可能ということだ。


 ジェレッド君の複製か……。今さらながら、かなり恐ろしい実験な気がしてきた。

 とはいえ、知っておかねばならないだろう。むしろきちんと実験結果を知っておかねば……。


 さぁどうなんだ。さぁさぁ、果たして結果は――!?


「お」


「おう」


 ほぼ同時だったと思う。ナナさんは、ほぼ同時に二本のひげを蘇生薬に浸けた。

 その瞬間――右手に持っていたひげだけが、びくんびくんと脈動を始めた。


「なんか気持ち悪いんで離します」


「……うん」


 ナナさんが放り捨てたひげは、地面に落ちても脈動を続け、何やらひげの先端――いや、根本か。根本が膨れ上がり、肉のようなものが形成されていった。


 その肉に皮が付き、毛が生えて――あっという間に大ネズミの頭部が完成した。

 そして頭部から骨が伸び、骨が胴体を形成し、受肉していく……。


「なんだか凄いですね……」


「そうだねぇ……。あれ? ナナさんは見るの初めてだっけ?」


「記憶としては知っていますが、実際に目で見るのは初めてです」


「そっか。……お、復活したみたい」


 僕達が話している間に大ネズミは復活を遂げ、すっくと立ち上がり――


「キー!」


「『光るパラライズアロー』」


「キ」


 復活したばかりの大ネズミに、僕はすかさず矢切りで『光るパラライズアロー』を叩き込んだ。

 大ネズミは(しび)れ、(こけ)が生えた。


「何故、苔パラ?」


「……変な略し方をしないでくれるかな? いやまぁ、なんとなくね」


 なにせ苔系のスキルアーツは、ちゃんとした戦闘で使うことがない。こんなときでもないと、使う機会がないのだ。


 それでもときどき使っていたら、そのうち良い使い方を思い付いたり、スキルアーツとして進化しないかなって、まぁそんな感じで。


「さてマスター。左手をご覧ください」


 バスガイドさんみたいなことを言うナナさんの左手に視線を向けると――蘇生されなかった大ネズミのひげが未だに残っていた。


「そっちは復活しなかったか」


「これは、やはり複製はできないということでしょうか?」


「ふーむ……。ちょっと待ってて」


 僕はマジックバッグから、さっき倒して回収した歩きキノコを取り出し、少しだけ身を剥がした。

 そして歩きキノコの欠片を、お皿の蘇生薬にちょんちょんと浸すと――


「うん。蘇生したね。一回使った後だけど、蘇生薬はちゃんと機能しているみたいだ」


「そのようですね」


 歩きキノコの欠片は、みるみるうちにかさを増し、歩きキノコとして復活を遂げた。

 すっくと立ち上がり、歩き出そうとしたので――


「『光るパラライズアロー』」


 ひとまず痺れてもらった。

 倒してしまってもよかったのだけど、今はまだ蘇生薬の効果が続いている状態かもしれない。それだと討伐することは不可能だ。

 今はいろいろと実験の途中なので、とりあえず待っていてもらおう。


「こっちのひげ、もう一回試してみますね?」


「あ、うん。お願い」


 ナナさんが左手に持っていた大ネズミのひげを、お皿の蘇生薬にびたびたと付けるが……変化はない。


「やはり復活しませんね。二体目は無理ですか」


「みたいだねぇ。ざっくり簡単にまとめると、『一体しか復活しない』『生きてたら復活しない』――こんなところかな」


「かなりざっくりですが……どうやらそのようです。ジェレッド様の量産は不可能ですか」


「僕の親友を量産しようとしないでほしいんだけど……」


 確かに僕も似たようなことを想像したけど、量産化までは考えていなかった。


「とはいえ、ありがたい仕様ではあるね。うっかり人とかが複製されないのは助かる」


「それはそうですね」


 ……しかし、不思議といえば不思議だ。

 つまり蘇生薬は、単純に触れた物を蘇生しているだけではないらしい。触れた物が、どこか別で生存していないかも確認している……?


 いや、むしろ逆か? どこかで生存しているから、蘇生することができない……?


「キー!」


「『光るパラライズアロー』」


「キ」


 ぼんやり考え込んでいるうちに大ネズミの麻痺が解けてしまったので、とりあえず追加で『光るパラライズアロー』をお見舞いした。


「うん。考察は家に帰ってからゆっくりやろう。ひとまず実験を終了――いたい」


「ふふ」


 歩きキノコから頭突きをくらってしまった……。

 歩きキノコの方も麻痺が解けてしまったようだ。歩きキノコは声を上げたりしないので気付けなかった。


 というか、そんな僕を見て笑っているナナさんは、もしかして気付いていたのでは……?


「『光るパラライズアロー』……あ、もう麻痺じゃなくてもよかったかな」


 歩きキノコにも苔を追加してやったが、普通に倒してしまってもよかったな。

 多く薬を与えたわけでもないし、すでに蘇生効果も切れているだろう。


「じゃあ倒そう。……あぁ、あれだね。実験のために犠牲となってくれたネズミとキノコに、深く感謝してから倒そう」


「はい。私が殺っても?」


「え? うん。いいけど……」


「では失礼して――『丸のこ』『丸のこ』」


 ナナさんは大ネズミと歩きキノコに対して、ひとつずつ『丸のこ』を放った。


「うわぁ……」


 やっぱり『丸のこ』での大ネズミ討伐は、見た目と音がひどい……。


 逆に、『丸のこ』で歩きキノコ討伐は、なんだか平和だ……。

 普通にキノコを切っているだけにしか見えない。


「ありがとうございました」


「……ありがとうございました」


 とりあえず大ネズミと歩きキノコに合掌する僕とナナさん。


「さて、それじゃあ穴を掘って埋めようか」


「そうですね。蘇生薬で復活した肉とキノコは、やはり食べるのを躊躇(ちゅうちょ)してしまいます」


「そうだよねぇ」


 たぶん問題ないとは思うんだけどね。

 薬の効果時間も切れているし、大丈夫だとは思うんだけど……やっぱりちょっと遠慮したい。


「じゃあ始めるね。まずは穴を掘って、その中へ一緒に埋葬――」


「合体して、歩き大ネズミ苔キノコが誕生したりしませんかね?」


「……穴は二つ掘ろうか」


 離れた場所に穴を二つ掘って、別々に埋葬しよう。

 なんだか少しワクワクしているナナさんには悪いけど、僕はそんなキメラを生み出すための実験はしていない。





 next chapter:髪とひげ、後日談

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