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チートルーレット!~転生時に貰ったチートがとても酷いものだったので、田舎でのんびりスローライフを送ります~  作者: 宮本XP


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第23話 オ◯ロ


「うーん……」


 母の彫刻画を彫った翌日。『木工』スキルを使ってみよう第二弾を製作中……なんだけど、僕は腕を組んでうんうん唸っていた。


 何を作るかは決まっている。異世界転生者がとりあえず作製すべき遊具『リバーシ』である。

 ていうかオ◯ロだよね? なんでみんなリバーシって言うんだろう? 僕はアレをオ◯ロ以外で呼んだことはないんだけど……。


 ――あ、もしかしてオ◯ロって商品名なのかな? 権利関係で言わないようにしているの? え、異世界に来てまでみんな守っているの? ……そうか、じゃあまぁ、僕も一応リバーシって呼ぼうか。


 とにかく、そのオセ――じゃなくてリバーシを、制作すること自体は容易だと思う。

 コマは数が多くてちょっと大変そうだけど、スキルがあれば木の板を綺麗に丸く切り抜くこともできるだろうし、あとは片面に色を塗ればコマの完成。

 それから板を適当なサイズに切断して、マス目を書けば盤の完成だ。


 問題はそのマス目なんだけど――


「何マスかわからない……」


 リバーシなんてやったのは、二十年以上も前だ。何マス×何マスかわからない。というか気にしたことがないから、たとえやったのが昨日だったとしても、何マスかわからないだろう。


 そのくらい僕はリバーシに詳しくない。

 娯楽の少ない世界だから、暇つぶしにちょっとやりたい気はするけど、どちらかというと将棋か麻雀の方が好みだ。

 とはいえ、やっぱり異世界転生者としてリバーシは作っておかないとまずいだろう、半ば義務な気がする。


「七マスか八マスな気がするけど……適当に決めちゃまずいよなぁ」


 もしかしたらリバーシがこの世界で流行るかもしれない。そうしたら、ここで決めたマス目の数がリバーシのルールになってしまう。

 今からここで世界のルールが決められる……そう考えると少し緊張してしまう。七マスか八マスか――僕がルールを決めるんだ。僕がナプキンを取るんだ。


「あぁ、とりあえずコマから作ろうかな」


 記憶を頼りに、なるべく忠実にコマの大きさや厚さを再現してみよう。一人分のコマの量や、盤に並べた感じで盤のマス目の数が予想できるかもしれない。



 ◇



「やっぱり、八マスかな」


 完成したリバーシのマス目は、結局八マスになった。

 七マス分のコマを作ったときに、これだと全部で四十九マス。先攻側が一回多くコマを置けることに気が付いた。それは、ゲームとして少しおかしいんじゃないだろうか。


 八マスなら六十四マスで、先攻後攻三十二回ずつだ。それに、三十二枚のコマを重ねてみると、確かにこれくらいの長さが一人分として用意されていたような気がする。


 ――と、いうわけでこの世界のリバーシは八マス×八マスに決定した。その後はコマの半面を黒く塗り、マス目も書いて完成だ。


「たぶん合っていると思うけど……」


 確かめようがないからなぁ。……あぁ、女神様二人に聞けばよかったかな? 教えてくれるだろうか。


 それにしても、結構大変だった。コマも綺麗にできたと思うけど、六十四枚はキツい。

 麻雀なら……百三十六。倍以上もあるのか、それは厳しいな。しかも木目だからガン牌――麻雀牌の裏側の模様を覚えて、どの牌か判別するイカサマ――が、やり放題じゃないか。


「おや? また何か作ったのかい?」


「あぁ、父。玩具(おもちゃ)を作ったんだ」


「玩具?」


 ガン牌対策として、牌のセットを複数製作するのはどうだろうか? 一局ごとに全部の牌を入れ替えてやるんだ。……なんて途方もないことを考えていた僕の元へ、父が現れた。

 せっかくだから、父と一回やってみよう。


「二人でやるゲームでね、まず黒と白のコマを二枚ずつ真ん中に並べるんだ」


「白?」


「え? あぁ、えぇと……白く塗りたかったんだ、本当は」


「そうなんだ?」


「それで先攻の――」


 僕はコマを手に取ったところでフリーズした。

 たしか、先攻後攻でコマの色が決まってなかったっけ……? うわ、また決断の時だ。また僕が世界のルールを決めなくちゃいけないのか……。


「黒……。黒にしよう、黒でいく。黒だよ。――先攻は黒!」


 二分の一だ、当たってくれ。


「う、うん。黒だね」


 父は、気合いの入った僕のルール説明に若干狼狽(うろた)えていたが、とりあえず開始から終了までのルールを説明した。ルール自体は単純だ、一分程度で説明を終える。


「なるほど。それで最後に自分の色のコマが多い方が勝ちなんだ」


「そうそう」


「ふーむ。もしかして、これも世界樹から教えてもらったの?」


「え、違うよ?」


 あ、別に教えてもらったことにしてもよかったか? 違うから違うと答えてしまった。


「違うんだ?」


「うん。なんだかこう……湧いてきたんだ、インスピレーションが」


「インスピレーションが……?」


「う、うん。木工スキルのおかげかな? と、とにかく一回やってみたいんだけど、どうかな?」


「いいよ。面白そうだ」


 さて、いよいよこの世界で初めてリバーシの対戦が行われるわけだ。歴史に名前が残るかもしれないな。そう考えると負けられん。


 久しぶりだし、将棋と違ってリバーシの方はズブの素人だけど、一応は経験者だ。一方、父は今ルールを聞いただけの初見プレイ。


 まぁ負けることはあるまい。いざ――





 next chapter:将棋を作ればよかった……

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