第179話 レベル20到達
名前:アレクシス
種族:エルフ 年齢:14 性別:男
職業:木工師
レベル:20(↑1)
筋力値 14(↑1)
魔力値 9(↑1)
生命力 8
器用さ 28(↑1)
素早さ 5
スキル
弓Lv1 火魔法Lv1 木工Lv2 ダンジョンLv1
スキルアーツ
パラライズアロー(弓Lv1) ニス塗布(木工Lv1) ヒカリゴケ(ダンジョンLv1)
称号
剣聖と賢者の息子 ダンジョンマスター
「おめでとうございますー」
「…………」
上がってたわ……。
ユグドラシルさんとのダンジョンマラソンを終えた僕は、自宅へ戻る前に教会で鑑定をしてもらった。
……その結果が、これである。
ユグドラシルさんから『レベルが上がったら連絡するように』と、別れ際にも言われたけれど――どうやらその時点で、すでに僕のレベルは上がっていたらしい。
「どうしたんですかー? レベルアップですよ?」
「え? あぁはい、ありがとうございますローデットさん」
不思議そうにこちら見るローデットさんに、とりあえず感謝の言葉を返す僕。
「せっかくレベルアップしたのに、なんだか浮かない顔ですねー」
「えぇと……レベルが20に上ったら、ユグドラシルさんに連絡しなきゃなんですよね」
「あぁ、前にそんなことを言ってましたねー」
「はい。ですが……実は今日、ユグドラシルさんと会っていたんです。さっき別れたばかりなんですよ」
「あー」
本当なら、最高のタイミングでレベルアップしたはずだったのにねぇ。
何故今日に限って日帰りなんだユグドラシルさん。いつもは一泊していくじゃないか。
「上がってしまったものは仕方ないですよー。こればっかりは、アレクさんがどうこうできることでもないですしー」
「それはそうなんですが」
「とにかくレベルアップしたんですから、よかったじゃないですかー」
「そう……ですよね。レベルアップしたのに落ち込むってのも、なんかおかしいですもんね」
「そうですよー」
そう言って、僕を励ましてくれるローデットさん。
「まぁ、ちょっと間が悪いとは思いますけど」
「…………」
僕を励ましつつも、微妙に余計な一言を言ってくるローデットさん。
「……とりあえず、ユグドラシルさんに連絡しようと思います。通話の魔道具を貸してもらえますか?」
「はい、いいですよー」
「お願いします」
「えぇはい。大丈夫ですよー」
「えっと、あの……?」
さっそく通話の魔道具を借りて、教会本部に電話しようと思ったのだけど……何故かローデットさんが動こうとしない。
なんかニコニコしながら僕を見ている。どうしたんだろう?
……あ、もしかして、そういうことか?
「えぇと……。お納めください」
「ありがとうございますー」
やはりそうか……。どうやら通話の魔道具を借りるためにもお布施が必要らしい。
僕がお財布から取り出した硬貨を、ローデットさんはニコニコのまま受け取った。
「それじゃあお願いします」
「いいですよー」
――と言いつつ、動こうとしないローデットさん。
え、なんだろう? ……もしかして足りないのかな? いつもの鑑定代と同じ額を渡したのだけど、電話代はもうちょっと割高だったりする?
「……お納めください」
「ありがとうございますー」
――と言いつつ、動こうとしないローデットさん。
まだ足りないのか。相場がわからん……。
「……お納めください」
「ありがとうございますー。じゃあちょっとだけ待っていてくださいねー」
ようやく動き出したローデットさん。どうやら電話代は、鑑定代の三倍らしい。
というか、この金額は元々決められていたものなのだろうか? ローデットさんの胸三寸な気がしてならない。
「お待たせしましたー」
「ありがとうございます」
ローデットさんはすぐにソファーへ戻ってきて、箱型の魔道具をテーブルに置いた。
今まで気付かなかったのだけど、箱は応接室に置きっぱなしだったようだ。
前に見せてもらったときは、応接室のさらに奥の部屋から取ってきたと思ったんだけど……たぶんあれから応接室に置きっぱなしだったんだろうな。
「それじゃあさっそく――あ、というかこれって……」
「はい?」
そうだった。この箱、充電してないじゃないか。
……え、もしかして自分で充電しなきゃいけないの?
いや、まぁ別にいいんだけどさ……。
「あぁそうだ、ちょっと開けてみていいですか?」
「? いいですよ?」
実際に充電して使用する前に、ちょっと中を確認してみたい。
中はいったいどうなっているんだろう? 何が入っているんだろう?
案外ローデットさんの小物入れ的な使われ方をされちゃいないだろうか?
というわけで、箱の上蓋を持ち上げてみると――
「水晶だ」
「そうですねー」
箱を開けると、中には水晶が入っていた。
軽くつんつん突いてみるが、動かない。箱に固定されているようだ。
どうやらこの水晶も、魔道具の一部らしい。
「へー。こんな感じなんですね。この箱――」
『はい。森と世界樹教会本部です』
「え?」
なんか知らない人の声が聞こえる。
「えっ? えっ?」
『はい?』
「森と世界樹教会本部?」
『はい』
「え、なんで……」
『はい?』
箱を開けただけなのに、教会本部とつながってしまった……。
いやまぁ元々の説明でも、箱を開けただけで通話できるという話ではあったんだけど。
「でも、魔力の補充をしていないって……」
「アレクさんが使いたいという話でしたので、補充しておきましたー」
「……ありがとうございます」
僕のために、ローデットさんが補充しておいてくれたらしい。
こんなときに限って仕事熱心……。
まいったな、何も考えていなかった。何も考えずに電話してしまった。
どうしよう、いったん通話を切ってしまおうか? いや、さすがにそれはよくないか……。
なんか今日の僕は、全体的に間が悪いな……。
「……あ、あの、もしもし?」
『はい? もしもし?』
「えぇと、その――」
『もしもしとは、なんでしょう?』
「…………」
そうか、この世界で『もしもし』は通じないのか……。
その可能性は考えていたはずなのに、うっかり前世の癖で『もしもし』を使ってしまった……。
『もしもしとは、いったい……?』
「…………」
僕も知らない。なんだろう『もしもし』って。
よくよく考えると、なんとなく珍妙な響きだよね。
「あっと、えぇっと……すみません、メイユ村のアレクシスと申します」
『もしもしとは……』
なんだか本部の人は『もしもし』が気になるようだ。とりあえず僕は気にしないことにして、用件を告げる。
「ユグドラシル様に、伝言をお願いしたいのですが」
『はい? 世界樹様に伝言ですか?』
「はい。アレクのレベルが20に上がったと、お伝えいただけますでしょうか」
『レベル20……? あ、あぁはい、伺っております。そういった通話があるかもしれないと』
「あ、そうなんですか」
そっかそっか。なるほど、さすがユグドラシルさんだ。
話がスムーズに進むように、あらかじめ電話係の人に伝えておいてくれたのか。
「ではその旨、ユグドラシル様にお伝えください」
『かしこまりました』
「よろしくお願いします」
よしよし。無事に用件も伝えられた。あとはユグドラシルさんを待つだけだ。
「それでは、失礼しま――」
『ところで、もしもしが気になるのですが……』
しつこいなこの人……。
next chapter:完徹




