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チートルーレット!~転生時に貰ったチートがとても酷いものだったので、田舎でのんびりスローライフを送ります~  作者: 宮本XP


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第177話 ダンジョンマラソン


 レリーナちゃんを守ろうと思っていたはずなのに、いつの間にか守られていた。


 守ってくれていたレリーナちゃんに感謝しつつも、やっぱりそんな自分の不甲斐なさを(なげ)きつつ、とぼとぼと3-3エリアを進む。


 ……よく考えると、レリーナちゃんからは守られることよりも襲われることの方が多い気がするなと思い直しつつも、僕はレリーナちゃんと3-3エリアを進んだ。


「あ」


「ん? どうしたのレリーナちゃん?」


「麻痺させたらいいんじゃないかな?」


「麻痺?」


「モンスターを麻痺させて、動けなくさせたら安全でしょ? それから剣で叩けばいいんじゃない?」


「ふぁぁ……」


 そうか……。それは確かに……!


「すごい、すごいよレリーナちゃん! その通りだ! レリーナちゃんは天才だね!」


「そうかな。えへへ、そんなことないけど」


「すごいすごい」


「えへへ」


 僕の称賛を浴び、ふにゃふにゃと笑うレリーナちゃん。


 いやぁ、すごいなレリーナちゃん。僕はまったく気付かなかった。

 なるほど、途中で剣に切り替えればいいのか。そうだそうだ、それで安全に『剣』スキルのレベル上げができるじゃないか。


「あ、お兄ちゃん。ウルフだよ」


「ん? あぁ本当だ」


 僕らの前方に、のそのそと歩く大型犬っぽいモンスターを発見した。


「さっそく試してみようよ、お兄ちゃん」


「あぁ、さっきの麻痺と剣作戦?」


「うん。私が麻痺させるね?」


「え?」


 レリーナちゃんは僕の言葉も待たずに、矢が届く距離まで駆け出した。

 射程距離までウルフに接近したレリーナちゃんは足を止め、未だこちらへ気付いていないウルフ目掛け――


「『毒矢』」


「キャン!」


 レリーナちゃんが放った『毒矢』を受け、ウルフが(もだえ)え始めた。


「さぁ、お兄ちゃん!」


「えっと……」


 え、このあと僕が剣で斬りかかるの? レリーナちゃんが無力化したウルフを、僕が剣で仕留めるの?

 なんだこれは。なんだこの接待プレイは……。


 これではまるで――――初狩りだ。


「どうしたの? さぁ、お兄ちゃん!」


「えぇ……」


 あのときの忌まわしき記憶が(よみがえ)る。

 忌まわしき『なんちゃってヤラセハンティング』の記憶が、僕の脳裏に甦る……。


「お兄ちゃんどうしたの? 『毒矢』の麻痺は、お兄ちゃんの『パラライズアロー』ほど長く続かないんだけど……」


「いや、でもこれは…………え、そうなの?」


「何が?」


「『パラライズアロー』の方が、効果が長いの?」


「うん」


 あ、そうなんだ。

 よかったなぁ『パラライズアロー』君。どうやら君は、完全なる下位互換ではないらしいぞ?


「とにかく――さぁ、お兄ちゃん!」


「えっと、うん……」


 レリーナちゃんに(うなが)され、僕は渋々マジックバッグから世界樹の剣を取り出した。

 そして、悶えているウルフに向かって駆け出す。


 あぁ、ヤラセハンティング……。レリーナちゃんに介護されて、ヤラセハンティング……。



 ◇



 3-3エリアにて、ウルフとの連戦を終えた僕とレリーナちゃん。

 肉体的にはなんのダメージもないが、なんだか精神的には結構なダメージを受けた気がする。


 そんな3-3エリアの攻略を終え、僕らは3-4エリアに到着した。


 そして、そのまま3-4エリアの最奥へ進む。

 3-4にはモンスターは配置されていないので、足止めされることもない。


 まぁ暇そうにぼーっと(たたず)んでいる二体の救助ゴーレムも、一応モンスターといえばモンスターではあるが、彼らは僕らの行く手を(はば)むような真似はしない。


 なんとなく『お疲れ様』と、心の中でねぎらいの言葉をかけてから素通りして、最奥の扉までたどり着いた。


 最奥の扉には――


『ダンジョンコアを壊さないように。――世界樹ユグドラシル』


 ――との文字が刻まれている。


「まだみたいだね」


「そうだねぇ」


 この先はダンジョンコアのエリア。

 つまり、現在『世界樹様の迷宮』は3-4まで。3-4までしか完成していない。4-1エリアは未実装である。


「早く作ってくれたらいいのに」


「…………」


 レリーナちゃんから厳しい言葉が飛んできた。


 いや、作りたいのは山々なんですけどね? まだちょっと構想とか、ダンジョンポイントの問題がありましてですね……。


 とはいえ、ダンジョンユーザーからの貴重なご意見ご感想だ。真摯(しんし)に受け止め、今後の参考にさせていただこう。


「じゃあレリーナちゃん――ワープしようか?」


「うん」


 二体の救助ゴーレムがぼーっとしているだけの3-4エリアに、唯一存在するギミック――ワープ装置。


 この装置の前に、僕とレリーナちゃんは立った。

 大理石っぽい素材でできた台座には、『1-4』『2-4』『3-4』の文字が並んでいる。この文字のどれかに触れながら魔力を流すと、そのエリアにワープできる仕組みだ。


 便利な装置ではあるが……このワープ装置を設置するか否かで、実はナナさんと結構揉めた過去がある。


 やはり僕としては、ワープなんてわけがわからない移動方法には少し躊躇(ちゅうちょ)してしまう気持ちがある。

 ――というかぶっちゃけ怖かった。怖かったので、ワープはやめようとナナさんに提案した。


 しかしナナさんも譲らず、『ダンジョンでワープ装置は基本です。それを設置しないなんてとんでもない』『まさか怖いのですか?』『軟弱者!』『素早さたったの5』『ハーレム主人公』『ヒカリゴケ』と(ののし)られた。


 もう後半部分はワープ装置と関係のない罵倒(ばとう)じゃないか……。というか『ヒカリゴケ』って……。


 さておき、よく考えたら僕もチートルーレットを回すときはワープしている。こんなダンジョン間のちょっとしたワープどころではなく、世界を股にかけたワープをしているのだ。

 そう考えると、そこまで恐れることはないのかな……そう思い直すに至り、ワープ設置を許可した。


 そんなわけで各階層の最終エリアには、ワープ装置が設置されている。


「このワープは楽でいいよね」


「そうだねぇ」


「最初はちょっと怖かったけど」


「あ、そうなんだ?」


 そうか。やっぱりレリーナちゃんもちょっと怖かったのか。


 じゃあ、お兄ちゃんとして、ワープ時にはレリーナちゃんの手をつないで安心させてあげようか――そんなことをふと思ったのだけど、すでに僕の手はレリーナちゃんに握られていたことに、今更ながら気が付いた。


 どうやら3-4エリアに侵入した瞬間から、僕の左手は捕獲されていたらしい。

 いやまぁ、別にいいんだけどね……。


「とりあえず1-4にワープして、それから1-3かな?」


「うん、そんな感じで」


 ワープ装置にも採用されている、このエリア番号。

 僕とナナさんが便宜上使っていたものだったけど、ダンジョンにも正式採用してみた。全エリアの扉付近に、エリア番号を振ったプレートを設置したのだ。

 

 なので、レリーナちゃんも今いるこのエリアが3-4エリアで、1-3エリアがボアのいるエリアだと認識してくれている。会話がしやすくて良い。


「じゃあ行くよレリーナちゃん」


「うん。お願いお兄ちゃん」


 レリーナちゃんに確認をとってから、僕はワープ装置の台座に書かれた『1-4』の文字に触れ、魔力を流す。

 すぐにワープ装置は起動し、僕と僕の手を握っているレリーナちゃんを、1-4へ転送した――



 1-4に到着し、僕らはそこから1-3へ向かった。

 すると、1-4でのんびりしていた探索エルフ達が『そろそろお遊戯会?』と色めきだって付いてこようとしたので、『まだですー、まだやらないですー』と声を上げながら、僕らは1-3へ。


 1-3であらかたボアを討伐したら、再び1-4へUターン。

 そこから1-4、2-1、2-2、2-3……と進み、3-4まで進んだところで、再び1-4へワープするつもりだ。


 このようにモンスターを倒しながら、繰り返しダンジョン内を進む――そんなダンジョンマラソンを、今日は敢行(かんこう)する予定である。


 このダンジョンマラソンによって、サクッとレベルを20に上げてしまおうという計画だ。


 ちなみにだが、麻痺と剣作戦はやらないことにした。

 レリーナちゃんは少し残念がっていたが、あれは僕の精神がもたない。あの作戦は、今度一人のときにやることにしよう。


 というわけで戦闘はいつも通り、初手『パラライズアロー』の安定行動。

 『パラライズアロー』と『毒矢』を放ち、敵を無力化してから矢で追撃。安全にモンスターを討伐していく。


 ……ふと思ったのだけど、こうやっていつも僕は初手『パラライズアロー』で敵の動きを止め、それから固定砲台と化している。

 この戦法を毎回選択しているせいで、僕の『素早さ』はクソザコナメクジなんじゃないだろうか……?


「どうしたのお兄ちゃん?」


「いや、なんでもないよ……」


 この頃同じ戦法を使い始めたレリーナちゃん。

 レリーナちゃんまでクソザコナメクジになってしまわないか、お兄ちゃんはちょっと心配。





 next chapter:ダンジョンマラソン七日目

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