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チートルーレット!~転生時に貰ったチートがとても酷いものだったので、田舎でのんびりスローライフを送ります~  作者: 宮本XP


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第168話 レリーナちゃんとお花見


 ジスレアさんとのお花見会は、とても楽しかった。

 周りに大勢のお花見エルフがいたせいか、最終的にキャンプだか宴会みたいな雰囲気になっていたが、とても楽しいお花見だった。


 ――明けて今日。今日はレリーナちゃんとのお花見会だ。

 今日も楽しいお花見になればいいね。期待に胸が高鳴っているのだろうか? なんだか胸がドキドキする。


 とにかくそんなわけで、レリーナちゃんと一緒に2-1エリアまで来たわけだが――


「お兄ちゃん」


「ん? あぁ」


 レリーナちゃんが右手を差し出してきたので、僕はその手を左手で握った。


 モンスターが出現する森やダンジョンの中では、危険なので手はつながない約束だ。

 しかし2-1にはモンスターが出現しないので、ここへ来るとレリーナちゃんは僕の左手を求めてくる。


「えぇと、どっちかな?」


「こっちだよレリーナちゃん」


 手をつないだまま、僕らは桜の樹を目指して歩きだす。


「桜の樹まで、結構歩くのかな?」


「いや、そこまで遠くはないよ――って、あれ? なんで『桜』って名前を?」


「人から聞いたの」


「そうなんだ?」


 昨日お花見に来た人から聞いたんだろうか? 確かに昨日はジスレアさん含め何人かに、桜の名称や開花の情報を話した。

 それにしたって、昨日の今日でレリーナちゃんまで伝わるのか。相変わらずエルフの口コミは恐ろしいな……。


 とりあえずレリーナちゃんにも改めて桜のことを話しながら、二人で歩いていると――


「お兄ちゃん、あれって……」


「うん? うあ……」


 しばらくすると、桜の樹が見えてきた。――それと同時に、桜に群がる大量のお花見エルフ達も見えてきた。


「すごい人だね、お兄ちゃん」


「すごいね……。昨日来たときにはここまでじゃなかったんだけど……」


 なんかもう、ちょっとした集落っぽくなっているお花見会場だ。

 各々(おのおの)が魔物の皮を地面に敷き、料理を作って食べていたり、寝転んでいたり、リバーシで遊んでいる人達なんかもいる。


 どうも昨日僕とジスレアさんがやったお花見がベースになってしまったようだ。

 もしかしたら僕は、おかしな文化をエルフ界に根付かせてしまったのだろうか……?


「どうしたもんかな。もうちょっと近くで見たいよね?」


「私はここでもいいけど?」


「うーん」


 とりあえずお花見会場の一番端っこまで来た。

 一応ここでも見られることは見られるけど、肝心の桜からは少し離れてしまっている。


 ……やっぱりもうちょっと桜を増やした方がよかっただろうか。

 実は昨日の現場を確認してから、僕とナナさんは桜の本数を増やしてみた。六本から十二本へ倍増したんだけど、まだ足りなかったようだ。


 ちなみに、この桜の名称は『ナナ桜』というらしい。

 案外コスト的にはリーズナブルなナナ桜。とはいえ、あんまりポンポン増やしたらありがたみがなくなるかと思い、ひとまず十二本にしたんだけど……。


「でもここからだと、さすがに――え? あ、すみませんすみません」


「ありがとうございます」


 僕が迷っていると、お花見エルフの人達にお花見会場の中央まで誘導された。

 それからみんながちょっとずつ移動して、僕たちのスペースをあけてくれた。


 移動している最中、『あれ、昨日は確か――』なんて声が聞こえてきたので、視線で黙らせた。『あ、また別の娘を連れて――』なんて声も聞こえたので、再び黙らせる。

 結果的に、いろんな人にガンを飛ばしながら割り込んだみたいになってしまった。


 そもそも、後から来て横入りしている時点で申し訳ないよね……。次来るときは、朝早くから場所取りしようかな……。


「綺麗だねお兄ちゃん」


「そうだねぇ」


 桜の樹を見上げて喜んでいるレリーナちゃん。喜んでもらえて何よりだ。


「ちょっと待っていてねレリーナちゃん」


「うん」


 みんながあけてくれたスペースに、大ネズミの皮を二枚敷く。


「はい、どうぞ」


「ありがとうお兄ちゃん」


 二人で大ネズミの皮に腰を下ろしてから、僕はお花見の準備を始める。

 昨日と同じように、マジックバッグから『IHの魔道具』と鍋と水筒を取り出した。


「それじゃあお茶を入れるね」


 僕は『IHの魔道具』に鍋を置き、水を入れてから魔道具を起動させる。

 それからポットとハーブティー用の草を取り出した。


「そういえばこのお茶。いつも家で飲んでいるやつなんだけど、なんかいろいろブレンドしているんだって」


「ブレンド?」


「うん。いろんな葉っぱを、美味しくなるように計算して混ぜているそうだよ?」


「へー、そうなんだ」


 昨日、僕とジスレアさんには鑑定できなかったハーブティーの正体。微妙に気になったので、家に帰ってから母に聞いてみた。


 母(いわ)く、現在の茶葉は――『ミリアムスペシャル747』らしい。


 『何を言っているんだこの人は』などと思ってしまった僕だけど、どうやら複数の茶葉をブレンドしており、その結果完成した茶葉に『ミリアムスペシャル』という名称を付けているらしい。

 種類や配合を調整し、日々アップデートを重ねるミリアムスペシャル。そのバージョンが、現時点で『747』なのだそうだ。


 ちなみに僕が生まれてからの十三年間で、『ミリアムスペシャル722』から『ミリアムスペシャル747』までアップグレードされていたとのことだ。

 正直僕は、あんまり気が付かなかった。いわれてみると、『なんかいつものと違うような……?』って感覚を覚えたことが、確かに何度かあったような気もするけど……。


「とりあえずお湯を沸かすから、待っていてね?」


「うん。――あ、お兄ちゃん」


「うん?」


「私、クッキーを焼いてきたの」


「ふぇ?」


 レリーナちゃんは、クッキーを焼いてきてくれたらしい。


「……クッキーを、焼いてきてくれたの?」


「うん」


「クッキーを……」


 クッキー……。いや、うん。嬉しい。嬉しいよ? 嬉しいんだけど……何故クッキーを焼いてきてくれたのだろう?


 今回レリーナちゃんには、詳しくお花見計画の説明をしていない。

 珍しい樹を見に行こうと誘っただけなんだ。『大ネズミの皮を敷いて、その上でお菓子を食べよう』なんて話はしていない。

 それなのにレリーナちゃんは、今日クッキーを作ってきてくれたらしい……。


 ……偶然だろうか?

 だがしかし、『クッキー』だ。昨日、僕とジスレアさんが食べたのと同じ『クッキー』を、レリーナちゃんは焼いてきてくれたのだ……。



 ――まぁ、そうなんだろうな。

 すべてレリーナちゃんには伝わっているんだろう。昨日僕とジスレアさんがここへ来たことも、一緒にクッキーを食べたことも、きっとすべて伝わっているんだろう……。


 わかるさ。これくらいのこと、(かん)のいい僕にはわかる。

 まぁわかるだけで、どうしようもないんだけど……。





 next chapter:修羅場

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[良い点] 次回予告が怖い アトレリーナーちゃんは女の子だな
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