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チートルーレット!~転生時に貰ったチートがとても酷いものだったので、田舎でのんびりスローライフを送ります~  作者: 宮本XP


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第129話 ユグドラシルさんごめんなさいリスト2


 引き続き、僕はフラフープを回す幼女に怒られていた。

 罪状は、ユグドラシルさんを『合法ロリ』と呼んでしまったことだ。

 

「以前もお主は、おかしな名前でわしを呼んでいたな?」


「すみません……」


「たしか――『ロリババア』じゃったか?」


「すみませ――え、それ僕言ってないです」


 確かにユグドラシルさんは『ロリババア』というカテゴリーに入ると思うけど、その呼び方はしていなかったはずだ。

 というか、どこから聞いたんだその呼び方は……。


「あぁ違ったか、えぇと『のじゃロリ』じゃったか?」


「はい、すみません……」


「のじゃロリも合法ロリもロリババアも、なんとなくバカにされている気がする。というか、ロリババアは明らかに悪口じゃろ」


「ロリババアと言ったことはないんですけど……。あと、合法ロリと言ったのはナナさんなのですが……」


 ちなみにそのナナさんだが、すでにここにはいない。

 合法ロリの話題が出てすぐに『あ、それじゃあ私は夕食の準備をしてきますね』などと言って、この場から逃げ出した。ずるいぞナナさん。


 思わず僕がナナさんを止めようとしたところ。ナナさんは『ユグドラシル様にハンバーグを召し上がっていただきましょう』なんて言い出した。

 ハンバーグは、ユグドラシルさんが来たら謝罪の意味も込めて食べてもらおうと二人で計画していたものだ。そうなると、ちょっと止めづらい。汚いなナナさん。


 おまけにナナさんは、『ここへ置いていただけることについて、お祖母様にお礼を言いたいのです』などと言い出した。これまた止めづらい。そんなの言われたら止められない。汚いな、さすが山田きたない。


「聞いておるかアレク」


「はい、すみません」


「あれほどお主が天界に呼ばれる瞬間が見たいと伝えておったのに……」


「はぁ」


 いつの間にか話題が移っていた……。まぁ、ロリの話題から移ったのはありがたい。


 しかし、転送の瞬間か……。

 確かに転送の瞬間が見たいと以前からユグドラシルさんは言っていたが、正直僕にはどうしようもないことだと思うのだけど……。


「次のチートルーレットはレベル20か、そのときにはわしを呼ぶように」


「いえ、呼びたいのは山々ですが……」


「『通話』の魔道具で呼ぶがよい」


「あー、あれですか」


 通話の魔道具。離れた場所の相手と会話できる魔道具――要は電話だ。


 鑑定の魔道具と同様に、教会に保管されているらしい。ちなみに通話できるのは決まった相手だけ――ペアリングされた魔道具間でのみ通話が可能という話だ。


「そうですね。では教会の鑑定でレベル20がわかったときは、通話してみようかと思います」


「うむ」


 僕はその魔道具を使ったことがないのだけど、どんな感じなんだろうね? 『もしもし』って言ってもいいのかな?


「あ、そういえば今回の件も通話で連絡がいったらしいですが?」


「うむ。ここの教会から、わしが普段いる教会へ通話がきたらしい。メイユ村とルクミーヌ村の間にダンジョンができたと」


「なるほど」


「そして、そのダンジョンにはわしの名前があったと」


「なるほど……」


 驚いただろうなぁユグドラシルさんは……。


「その報告を受けて、ユグドラシルさんはなんと?」


「『うむ』とだけ答えた」


 なんか万能だなそれ……。

 母にも『うむ』だけで通したらしいけど、それで何でも押し通せるのか……。


「メイユ村の近くと聞いたからのう。間違いなくお主の仕業(しわざ)じゃと思って、ここまで来たわけじゃ」


「そうですか……。あ、ちなみにダンジョンにはもう行かれましたか?」


「うむ。少し寄ってきたが……」


 そうか、もう見てきたのか。……けどまぁユグドラシルさんの様子からすると、あんまり絶賛(ぜっさん)してくれるって感じでもなさそうね。


「あれはいったい……なんなのじゃ?」


「なんなのじゃと聞かれましても」


「エリアも二つだけで、大ネズミとロックゴーレムしかおらんかったぞ」


「そうなんですよねぇ」


「そもそも、あれはゴーレムなのか?」


「えぇ、まぁ一応……」


「というか、何故あんなに人が集まっておるのじゃ?」


「田舎なので……」


 田舎のス◯バなので……。

 なんだかユグドラシルさんから怒涛(どとう)のツッコミを受けてしまった。やはりユグドラシルさん的にも不思議なダンジョンだったらしい。


「……まぁ、あのわけのわからんダンジョンを見て、間違いなくお主が絡んでいると、わしは確信したわけじゃが」


 それはどういう意味だろうか……。



 ◇



「安全安心か……」


「はい。そんなイメージで作っていこうかと」


 (ひざ)の位置でフラフープを回しているユグドラシルさんに、僕はダンジョンのコンセプトを説明した。

 というかフラフープって、膝で回せるんだね……。


「お主の考えはわかったが……誰も気付かんじゃろ」


「やっぱりそうですかねぇ」


 不殺大ネズミの方は、残念ながら気付かれることはないかもしれない。

 救助ゴーレムの方はどうだろう? 救助ゴーレムは全てのエリアに配備するつもりなので、ダンジョンが発展したらいずれ気付かれることもあるかな?


「ふむ。わしから発表しても構わんぞ?」


「発表?」


「『不殺』と『救助』じゃったか? 『あのダンジョンのモンスターは不殺モンスターで、ゴーレムは救助ゴーレム』じゃと、わしの方から発表しても構わんぞ?」


「それは、大変ありがたいですが……。いえ、やっぱりやめておきます」


「そうか?」


「こういうのは、探索している人が自分で見つけた方が楽しいと思うので。……まぁいつ見付けてくれるかはわかりませんけど」


 ユグドラシルさんからのありがたい申し出だが、さすがにこれ以上ユグドラシルさんに頼るのは申し訳ない。


 まぁここまで散々頼ったのだから、今更ユグドラシルさんへの借りが――『ユグドラシルさんごめんなさいリスト』の項目が一つ二つ増えても変わらないような気もするけど、とりあえずやめておこう。

 何でもかんでもユグドラシルさんに頼るのはよくない。このままでは本当にユグドラシルさんが、ユグドラえもんになってしまう――


 あぁ……。そういえば『ナナさんがユグドラシルさんのことを、ユグドラえもんと発言』をリストに載せるのを忘れていたな……。


「とりあえず、情報の開示はしない方向でお願いします」


「そうか、まぁわしは構わんが」


「お気持ちだけいただいておきます。ありがとうございますユグドラシルさん」


「うむ」


 僕が感謝を伝えると、ユグドラシルさんはフラフープを回しながら鷹揚(おうよう)にうなづいた。


 ……ちなみに現在ユグドラシルさんは、片足立ちになり、右足の膝のみでフラフープを回している。

 ユグドラシルさんのフラフープは、だんだん僕の知らない領域に踏み出し始めたな……。





 next chapter:歴史的なハンバーグ

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