第120話 それでもユグドラシルさんなら……。ユグドラシルさんならきっとなんとかしてくれる……!
名前:ナナ・アンブロティーヴィ・フォン・ラートリウス・D・マクミラン・テテステテス・ヴァネッサ・アコ・マーセリット・エル・ローズマリー・山田
種族:ダンジョン 年齢:0 性別:女
職業:木工師見習い
レベル:36
筋力値 23
魔力値 4
生命力 17
器用さ 46
素早さ 21
スキル
弓Lv1 水魔法Lv1 騎乗Lv1 木工Lv1 料理Lv1 ダンジョンLv1
称号
ダンジョンマスター
……さて、一体どこから突っ込めばいいのやら。ここまでくると、もう全項目が突っ込みどころに思えてきた。
なんかレベルも高いし、妙に低い『魔力値』も、妙に高い『器用さ』も気になる。
加えて所持スキルも『弓』スキルと『木工』スキルってのは……なんだか意味深。職業も木工師見習いだしなぁ。
そしてダンジョン関連の種族、スキル、称号か。……というか種族ダンジョンって何よ。
そもそも無駄に長い名前と、ゼロ歳児な部分だって、十分に突っ込みどころだ。
違和感がないのは、性別のところだけかもしれない。……まぁ種族がダンジョンなのだとすると、性別欄ですら疑問を感じてしまいそうだけど。
「あのー……これはいったい?」
「あー。そうですねぇ、なんですかねぇ……」
当然のことながら、ローデットさんもナナさんのステータスに疑問をもった。
どうしたもんかな。というか僕だって『これはいったい?』と聞きたいくらいなんだ。
ナナさんのステータスがローデットさんを驚かすことになるだろうとは予想していたが、ここまで奇抜なステータスだとは思わなかった。
「あー、なんといいますか、ねぇナナさん……ナナさん?」
「…………」
「えぇ……」
チラリと横目でナナさんを確認したら、スッと目をそらされた。
どうやらナナさんは、僕に丸投げするつもりらしい。
「えぇと…………。ナナさんのことは、少し秘密でして」
「秘密?」
「はい。ナナさんとダンジョンのことは、あまり他人に話さないように言われていまして――ユグドラシルさんに」
ナナさんに丸投げされたので、僕もユグドラシルさんに丸投げすることにした。
それにしても今日までで、いったいどれだけユグドラシルさんにぶん投げてしまったのだろう……。
あとでメモっておこう。そして謝ろう……。
「そうですかー、ユグドラシルさんに」
「そうなんです。話すことはできないんですよ、すみません」
「いえ、いいんですよー」
「そういうわけでして、僕がダンジョンマスターになったことと、ナナさんのちょっと変わったステータスのことは内緒にしていただけると」
「わかりましたー。アレクさんとナナさんのことは秘密ですね?」
「よろしくお願いします」
本当にお願いしますね?
お願いしますよローデットさん? 隔週で貢ぎ続けている太客なのですから、それくらいはお願いしますね?
「それにしてもこれは責任重大ですねー、うっかり喋らないように注意しないと。喋ってしまったら、お二人が大変な目に遭ってしまうかもしれませんしねー」
「え? そうなんですか?」
「だって、お二人はダンジョンマスターで、自由にダンジョンを作れるんですよね?」
「えぇ、まぁ」
残念ながら、もう自由にできるポイントが残っていないけれども。
「なら、自分好みのダンジョンを作るように、お二人に求める人が出てくるかもしれないじゃないですかー」
「あ、なるほど……」
「そうならないためにも、ダンジョンマスターのことは隠しておいた方がいいですねー」
確かにそうだ。ローデットさんの言う通り、もっと良いダンジョンを作れと迫られることがあるかもしれない。
……まぁアレクナナカッコカリダンジョンの現状からすると、それは言われても仕方ない気もするけど。
とにかく、そこに気付けたのはよかった。こうなると、むしろローデットさんにバレたのは、不幸中の幸いだったかもしれない。
「そうですね、それは気付きませんでした。ありがとうございますローデットさん」
「いいえー、私も珍しい鑑定結果を見ることができましたからー」
「そうですか」
まぁ僕もナナさんも、自分の鑑定結果をローデットさんに見せに来たってわけでもないのだけど……。
「この鑑定結果のことも聞きたかったんですけどねー、我慢しますー。……あ、ユグドラシルさんに直接聞くのはいいですよね?」
「え? えぇ、それはまぁ……」
「なら今度いらしたときに、直接聞いてみますー」
「それは、そうですね、それがよろしいかと……」
うん。まぁ仕方ない。きっとユグドラシルさんなら、上手いこと言ってくれるはずだ。
見た目は二十歳なのにゼロ歳の理由とか、種族がダンジョンの謎とか、無駄に長い名前とか、ちょっと僕には上手いこと説明できそうにない――
それでもユグドラシルさんなら……。ユグドラシルさんならきっとなんとかしてくれる……!
頑張ってくださいユグドラシルさん。そして、ごめんなさいユグドラシルさん。
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