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断罪された悪役令嬢は、逆行して完璧な悪女を目指す(第十章連載中)【書籍、コミカライズ、オーディオブック化】  作者: 楢山幕府
第九章

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20.悪役令嬢は情報を聞く

 広間一階へ行くと、ラウルたちの姿があった。

 一度、席について話し合うことにする。


「不便はないって話だったけど、皆して暇そうだったぞ」

「娯楽室があるといっても、できることが限られていますからね」


 おかげで商談が捗ったほどです、とスラフィムはにこやかだ。

 お互い腹の探り合いに興が乗ったらしい。

 信仰の違いから、国際会議ではヒリついた場面があったのを思えば、参加者がいかに時間を持て余しているのかが窺えた。

 同時に他国の人間にとって、コスタスとマリタの消息は、気に留めるほどのことではないのだ。


(対岸の火事なのでしょうね)


 以前シルヴェスターが口にしていたことを思いだす。

 逆に被害者が他国の人間だった場合、ここまで親身になれるかと問われれば、否だった。

 心配はするものの、主催者に安全のため動き回らないでほしいと頼まれたら、クラウディアも素直に従っただろう。

 シルヴェスターが部屋の状況をラウルたちに伝える。


「二人の部屋を確認してきたが、新たに得られた情報はない」


 詳細を聞いたほうも、特別ひらめくことはなかった。

 ラウルが頬杖をつく。


「わかるのは犯人が何か探していたことくらいか」

「別棟に見張りはおらず、部外者も侵入が簡単だった」

「危機感がないのも考えものだな」


 話が消えた二人の関係性に移る。


「幼馴染みだったんだろ?」

「とはいえ、子どもの頃の話だ。気になるとしたら二人の家業だが、どちらも家は継いでいない」


 近衛のコスタスの家は採鉱師で、修道者のマリタの家は石工頭領をしていた。


「ただ築城時のことについて、口伝が伝わっている二人ではある」


 二人だけが知る何かがあったのか。

 手がかりがない以上、各々気になっていることを挙げていくしかなかった。

 トリスタンが発言する。


「犯人はどうやってコスタスさんを御したんでしょう? 先にマリタさんが人質になっていたんですかね?」

「その可能性は大いにある」

「オレなら、まず相手にしたくないな」


 コスタスの腕っ節が強いことは、ガタイの良さから初見でもわかった。

 逆にマリタは痩身で、刃物などを用いれば、クラウディアでも捕まえられる。


「となると、犯人は男性とも限らないわけですね」


 うーん、とトリスタンは頭を捻る。

 犯人像の確定に至らない。


「わたくしが気になったのは、雨だから犯行がおこなわれたのか、という点です。天候が悪くなければ、本島から救援が来ますから」

「昨晩の雨の勢いからすると、船が出ない算段だったか。とはいえ、相手は自然だ。今日船が出なくとも、明日は出るかもしれぬ。犯人にとっては賭けだな」


 シルヴェスターの言うとおりだ。

 天候と犯行は切り離して考えていいかもしれない。


(雨であれ、晴れであれ、犯行はおこなわれた……事件があれば、狼煙が上げられることは犯人も知っていたはずよね?)


 救援があっても、すぐには犯人に辿り着けないという自負があったのか。

 実際、クラウディアたちも焦点を絞れないでいる。

 皆の口数が減る中、レステーアが関係はなさそうですけど、と視線を集める。


「ショワンウー王国の第二王女メイユイ殿下から伺った話です」


 情報を求めて部屋を訪ねた折、青い顔をして怯えていたという。


「深夜、お風呂へ行った帰りに、侍女と骸骨の笑い声を聞いたらしいんです。腹に響くような声で背筋が凍ったと」


 骸骨の笑い声で頭に浮かんだのは、地下墓地でのリーウェイのイタズラである。

 メイユイは骸骨の姿こそ見なかったものの、声はそれと信じて疑わなかった。


「メイユイ殿下は地下墓地に言及されて、この城塞には、きっとたくさんの骸骨が住み着いているのだとおっしゃっていました。早く国に帰りたいと涙ぐまれるお姿は見ていて切なかったです」


 演技ならばレステーアが見抜く。

 ミンユーと同様に、国の問題を抱えてやって来ていることを思うと、居たたまれない話だった。

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