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断罪された悪役令嬢は、逆行して完璧な悪女を目指す(第十章連載中)【書籍、コミカライズ、オーディオブック化】  作者: 楢山幕府
第四章

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09.悪役令嬢は現状を知る

 シルヴェスターは胸に置かれた手を握り、クラウディアと額を合わす。


「ディアに感謝を。いつも君の言葉、存在に私は救われている……いざ言葉にしてみると、どうしてもありきたりなものになってしまうな」

「十分ですわ」

「だがこれだと完全に気持ちを伝えられているとは思えぬのだ」


 顔が近付き、互いの鼻頭が重なる。

 口付けは軽く、唇が合わさる程度だった。

 それでも離れ際に余韻を残していく。

 まだ息が触れる距離。


「ディア、愛している」

「わたくしも愛していますわ、シル」


 次いで握られた手にキスを落とされた。

 上目遣いで濡れた黄金の瞳を向けられてドキリとする。

 ――濃厚な香りに包まれていた。

 今更ながらに香りが空間を彩ることを思い知らされる。

 クラウディア、シルヴェスター、それぞれの芳香が混ざり、満ちる。

 日の光は遠ざかり、夜の帳が下りていた。

 また手にキスが落とされる。

 指、そして甲へ。

 目が伏せられて黄金の瞳が隠されても、銀色の睫毛が思いをこぼす。

 薄暗い中でもはっきりと見て取れるシルヴェスターの滴るような美しさに頭がクラクラした。

 丁寧な口付けが伴う熱に煽られる。

 強く求められないのは、時間が有限だからだろう。その分、否も言えず、体の芯に火が灯り続ける。

 静寂が続く中、吐息を漏らしたのはどちらだったか。

 手が解放されたのを機に、クラウディアは喉を潤した。

 シルヴェスターも仕切り直すように紅茶を飲む。

 ついティーカップに付けられた唇へ目が行ってしまい、慌てて視線を逸らした。


「ウェンディ嬢のことも気になるが、まずはパルテ王国についてだな」

「はい、どうして今になって婚約者候補が増えることになったのでしょう?」


 情勢によっては他国の令嬢が婚約者候補に入ることもあるが、今代では自国の令嬢に対象が絞られていた。

 比較的、世界情勢が安定している間に、国内の体制を盤石にしようと考えられたからだ。


「パルテ王国内にて、我が国に対する敵対感情が高まっている。一触即発と言えるほどにだ」

「まさか……」


 一触即発、それは戦争も視野に入っているということだった。あまりの事態に続く言葉が出てこない。

 ハーランド王国とパルテ王国は長年友好関係を築いている。

 この突然の敵意にはシルヴェスターも苦心しているらしく、珍しく眉根にシワが寄っていた。


「私もまだ信じられない。予兆はあったが、あくまで予兆に過ぎない程度だった。こうも事態が急変するとは……民主制の落とし穴を学ばせてもらった気分だ」


 君主制であるハーランド王国では、国王が決定権を持つ。

 だからどれだけ国民感情が昂ぶろうが待ったをかけられた。

 もっといえば、その間にいる貴族が先に統制をおこなうので、いきなり国民感情が爆発するようなことはない。

 暴動が起きたところで、基本的に各領地内でことは治まるからだ。

 けれど民主制であるパルテ王国では事情が異なる。

 国民から選出された議会員に比べ、国王の意向は優遇されるものの決定権はない。

 有力家族が貴族と同じ働きを担っていても、法で定められている貴族制とは違う。もし私兵を動かして国民を統制しようとすれば、越権行為として有力家族のほうが罰せられた。


「パルテ国王をもってしても、国民感情を抑えることができませんの?」

「その段階にまで至ったようだ。ニアミリア嬢の同行が、事態の緊迫具合を表している。ここまで感情的にパルテ王国が動くのは想定外だ」


 パルテ王国民の不満の種は、パルテ王国がハーランド王国と紛争地帯の壁になっていることにあった。実際、南西部に位置する辺境伯は、今や名前だけの存在になりつつある。

 いくら防衛費をあてがわれていても、戦い、血を流すのはパルテ王国民だけだ。

 これではハーランド王国の属国と変わらないじゃないか、というのが国民の訴えだった。

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― 新着の感想 ―
[一言] 高級娼婦だったら隣国の様子も耳に入りそうだし、前は義妹が王妃になってるからたぶん逆行前にはなかったことだろうから例の生臭聖職者が民衆たきつけてるのかな?
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