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こっそり守る苦労人 〜黒き死神の心〜  作者: ルド
血に塗れた冬の悲劇。
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第9話 予兆。

(これで……繋がったか(・・・・・)?)


 未来に繋がるチカラ【天言】の異能使いこと、大野(おおの)英次(えいじ)は夢の中で未来視する。

 零と同じで特異な異能を所持しており、眠るように瞑想して少し先の未来を知ることが可能だが、様々な条件を割り振らなれば思うように発動出来ない。


 数秒先の未来であれば難しくないが、数時間先、あるいは丸一日、もしくは数日先まで見ようとすると条件付けが厳しく、その反動も大きかった。なので高レベルな瞑想を行うのは休日のみと決めていたが、やむおえない事情からその日は学校を休むことを選択した。


(あとで間違いなく怒られるな。零からもほどほどにしろって言われてたし、フォローはないだろうな)


 彼は零の知り合いとして、凪とは別枠のサポートに付いている。普段は零達と同じように学校に通っている何処にでもいる中学生であるが、影では外の異能機関との情報役を担っている。ある時は外側の仕事にも手を貸して、外部の機関とのバランスを常に整えていた。


 そんな彼はある情報を得ていた。

 明確な証拠はなかったが、機関が扱う情報と微かな痕跡、彼自身の直感が危険だと警告を発していた。……確証を得る為に零にも協力して貰っているが、細かな部分はまだ彼しか知らない。


(九条さんの話じゃあのクソッタレ(・・・・・)と話はしたそうだ。反応を聞く限り向こうも危険視しているようだ。……姿が見えないがやはり何処かに痕跡を見つけたか)


 思考を巡らせながら意識を集中させる。

 抱いている危機が果たしていつのか、判断が付かない英次は多少の反動を覚悟して瞑想を続ける。条件指定を甘くすればそれだけ多くの情報が頭に叩き込まれて、瞑想どころではなくなるが……。


(今度は当たりか?)


 しばらくすると英次の夢の世界から色が生まれた。

 余計な情報なく能力がうまく発動したのだと安堵すると、彼の視界に見慣れた景色が映し出された。


(ここは……学校か?)


 もうすぐ1年が経とうとしている学校の校庭。

 停止した世界で瞑想状態の彼は宙に浮いて、何やら屋台らしき小さなテントがいくつか見える。あっちこっちに学生以外の人達が集まっているのを見て英次は納得した。


(『冬祭』か……つまりここは24日の世界か)


 まさかそんな日の世界を見ることになるとは思わなかった。……もしかしたら条件付けを失敗したのかと、少し不安になりかけたが……。


(……どうやら、ここで間違いないようだ)


 辺りに視線を巡らせたことで、そんな不安だと一瞬で消えた。



 混乱している様子の人々がいる。


 倒れて燃えているいくつもの屋台。

 

 割れている校舎の窓ガラス。



 明らかに何か異常事態が起きている状況であった。


(一体何が起き――っ! なんだ!)


 どうにか探れないかと見回していたが、突如発生した異変に視線が顔ごと一箇所に固定される。


(あ、アレはなんだ? まさか、魔獣なのか?)


 異質な気配を感じた彼が目撃したのは、屋上から地上を見据えている『黒き双頭の龍』。

 大きな巨体と広がる漆黒の二翼。全身が真っ黒であるが、黒い瞳だけは何処か他よりもドス黒いモノが宿っている気がした。


(龍型の魔獣だと? 馬鹿な!? 何処からあんな――は?)


 双頭の龍に気を取られて気付くのに遅れていたが、龍の視線が地上ではなく、屋上で立っている2人を捉えていた。


(零? それにあれは……葵ちゃん!?)


 いや、厳密には4人の……恐ろしいことに知り合いが集まっていた。

 1人は自分である。焦った様子で兄妹の方へ何か叫んで駆けており、別の方向から狼狽している凪が額に血を流して倒れていた。必死に手を伸ばして2人を……いや、零を止めようとしていた。


(ど、どうして……こんなことが)


 信じられない光景が彼の思考を凍り付かせる。

 こんなものは間違っている。絶対何か能力が失敗したのだと思わずにはいられない。



 ――何か壊れたような歪んだ笑みと、殺意に満ちた瞳を宿した零が……全身ですがり付く妹の葵に向けて、黒色に帯びた手刀を放とうとしていた。



 背後に君臨する黒き龍が彼の心の表しているのか、学校を破壊しようと今にも暴れそうな勢いがあった。


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