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39話
「娘??」
愕然とする俺の背後からゆっくりと離れたマスターが……俺の座る場所とは反対に居る部長の方へと歩いて行く。
「待て! ワシは……」
「待て……だと?」
怒気をはらんだ口調とは裏腹に、非常にゆっくりと移動したマスターは部長の背もたれに手を掛け、その椅子を……最後のマス目に進めた。
「お前たちは……本当になにも学ばないんだな? 正直……ここまで想像力が無い人間だとは思わなかったよ」
部長の背後で背もたれに手を掛けたまま……耳元でそう告げた男の手に力が入る。
「ヒッ?!」
部長の隣に座る専務が短い悲鳴を挙げた。と、その声と同時に……
「もうよいのですかな?」
誰だ?
突然の問いかけ……
その声のした方向……塔屋の陰から黒いイブニングドレスを着た女が現れた。
「ああ……あんたの言う通りだったよ。そもそも人ひとりを死に追いやっても平然としている様な奴等だ。もし、誰か一人でも俺に気付いたならまだ話を聞く気にもなったかもしれんが……こいつらが垂れ流す言い訳を聞くのは……もうウンザリだ」




