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34話
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「おいおい……自分が何を言ってるか分かってるか? 俺は懺悔しろって言ったんだぜ? デタラメ吹かして誰かに責任をなすりつけようなんて思ってんなら……」
蝶ネクタイを投げ捨てたマスターが更に一つマス目を進めるべく男の椅子に手を掛けた。マス目は全部で三つ。あと一つ進めばもう猶予は無い。まさに崖っぷちってやつだ。
「ひっ……本当だ。聞いてくれ! あの日……彼女が死んだ日……俺は彼女が飛び降りた支店の前の喫茶店に来てたんだ! そこの部長から記事にした報酬を受け取る為にな。 こんな場所で接触するのはどうかと思ったが、その男は……」
そこまで言って部長へと視線を向けたライターのオッサンは言葉に詰まる……何を躊躇ってんだ?
「……そいつは……『行員の不祥事など日本では日常茶飯事だ。だいたいお前があの記事を書いた人間だと誰が知ってる? あの女もそうだ……あんな女一人破滅したところでいったい誰が困るんだ? まったく、下らん正義感でシャシャリ出て来おって……』と……そう言った後、俺に報酬の封筒を押し付けたそいつが、店から消えた直後だった。彼女が屋上から飛び降りたのは……」




