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魔術で性別が反転した俺、美少女になる。~中途半端な魔術師はいらないと追放された結果、何かとうまくいきました~  作者: 柚月由貴
本編

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幕間ー国王陛下の独白

 その日、城内が騒然となった。

 王都と都市ノイシュタットを結ぶ街道上に魔族が現れたのだ。しかも、我が娘アイリスが狙われたとあれば、儂も気が気では無い。


 幸いにも魔族はその場で撃退され、娘も無事だった。戦ってくれた騎士達のことは強く労わなくてはならない。


 今後の対策のため、一部の者を集め会議を開いたが、進行は困窮した。魔族の狙いが分からないことが、一番の問題であった。

 魔族の目的として挙がった推測のうち、有力なのは二つ。一つは、魔族が何かを企み王都近郊に潜伏。たまたま、娘の乗る馬車が魔族と遭遇してしまった、という説。そして、二つ目は初めからこの国の重要人物たりえる者を狙っていた、という説。後者が正解だったなら、初めからアイリスを狙っていたということになる。絶対に許さん。


 どちらも有り得る上、そもそもそれが正解かも分からない。遭遇した魔族以外に、潜伏しているものがいるかも分からない。結局、王都周辺への警戒の強化、及び国の重要人物の不用な都市間移動の禁止、を対策とした。

 そして、もう一つ。魔族が現れたことは公表しないこととなった。

 国民全体に注意を促した方が良いのではという意見もあったが、今回は現れた場所が悪すぎる。国民に無用な不安を抱かせるわけにもいかない。であれば、内密に処理してしまおう、ということになり。魔族の事は王城内だけの話となった。


 不吉な報せに気が重くはなったが、朗報もあった。

 魔族の撃退に、若き魔術師が関与したというのだ。魔族を圧倒する実力を持ちながらも、まだ名が知られていない。次世代の英雄になりうる可能性を秘めた、人物の登場に会議の場は沸いた。


 優秀な人材は今後のために、是が非でも確保しておきたい。宰相と相談し、今のうちから取り込んでしまおうということで話がついた。

 アイリスが礼をすると話していたそうだから、それを利用する。一人の父ではなく一国の王として、若き魔術師と面会することに決めた。


 そうして迎えた謁見の日。我が右腕たる宰相。儂の息子。魔術師団長の三人と共に出迎える。一国の王として面会するため、今回はアイリスの同席は認めなかった。

 現れた人物を見て驚いた。


 若い、と言われてはいたが、その者は想像以上に幼かった。十歳前後であろうか。癖のない長い黒髪。緊張した面持ちで、こちらを見上げる顔は非常に整っており、人形のように見える。

 体も当然小さく、強そうには見えない。魔術師を見た目で判断してはいけないのは常識だが、左に待機しているメルエムは言うに及ばず、右に立つ、文官の宰相ですら勝ててしまいそうだ。


 この若さで、カリストも驚くような上級魔術を使ったのであれば、正しく本物の天才である。やはり、今のうちに取り込むべきだろう。

 養子として、適当な貴族に引き取らせるのも悪くないかもしれん。


 少しでも少女の情報を得るため、質問を重ねて再び驚いた。カノンと名乗った少女は、あのエルヴェの弟子であった。


 ソロの冒険者としては、最年少でAランクに至った天才魔術師。会ったことは無いが、噂はよく聞いていた。何せ彼は勇者一行と共に魔族と戦っていたのだ。

 元々実力の乏しかった勇者達を導き、Aランクにまで引き上げた彼ならば、他人を指導する才能もあったのかもしれない。

 先の戦いで激闘の末に亡くなったと聞いたが、本当に惜しい人材を失ったものだ。


 天才魔術師がその才を認め、鍛えた魔術師。カノンへの評価がまた一段階上がる。

 師匠が亡くなったとあれば、この先カノンを導く存在が、必要になるかもしれん。この才能を埋もれさせてはならん。


 そう思い、尋ねた所で三度目の驚きがきた。今はあのミリアム・トッドに師事しているという。近衛師団に所属し。普段は王都の近くでしか行動しない彼女と、どこで知り合ったというのか。これは早急に調査せねばなるまい。

 しかし、これは僥倖だ。何かあればミリアムを通じて話をすることができるだろう。近衛師団は王族直属の兵士である。ミリアムに連絡を取ることは造作も無い。上手くすれば、将来カノンも近衛師団に入れることができるやもしれん。


 さて、情報もそれなりに集まった。これからカノンに褒美を与えねばならない。本当は娘を助けてくれた礼といきたいが、ここは国王として褒美を与えたという事実が欲しい。止むを得ず、魔族討伐に対する報奨、という形を取る。


 今後の繋がりを深めることができ、幼い平民に与えられるような報奨にする必要がある。建前上、本人の希望は聞くが、内容によっては変えるつもりでいた。


 カノンの要望は学園の図書室であった。意外な望みではあったが好都合でもあった。

 図書室の閲覧許可を出すことは、例え王の儂にも無理だ。ならば、ここで学園生となることを推薦することは、なんらおかしくはない。

 儂の推薦となれば、自然と儂が後ろ盾となることもできよう。

 そう思い、特待生となることを進めたが、カノンは難色を示した。

 どうやら、魔術以外の学問については自信がないらしい。無理も無い。きっと、魔術にのみ心血を注いで学んできたのであろう。


 いまいち押し切れぬ状況で、宰相が臨時講師となることを提案してきた。

 臨時講師ならば、魔術のみが得手であろうと問題無いと言った。悪くない提案だった。


 カノンとの繋がりを深めるためにも、他の褒美に変更するつもりはもはや一切無い。


 学生か。臨時講師か。選択をカノンに迫った結果。最終的に、臨時講師を選んだ。


 これによって、カノンとの繋がりを作ることはできた。

 これからどのようにして彼女を取り込んでいくか、宰相とは密に話し合うとしよう。

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