3☆記念写真
そこはかつて結婚式場だった。
不況と時代の移り変わりによって、施設を活かした写真館になった。
「七五三の写真オーダー入りました」
カメラは時代物の一眼レフ。でも現像はパソコン。今の時代は、現像液で写真を現像するのを若い人は知らないだろう。
「はい、撮りますよ!」
被写体は女の子。笑わせようとするとかえってムスッとするので、自然体で撮ることにした。
数枚撮ってパソコンの画面を見てぎょっとする。
「これ、成人式用の振り袖の写真じゃないか!」
「えー?見せてください」
女の子の両親がパソコンを覗き込む。
「いや…、あのう、他の人の写真のデータかもです!」
職員が慌ててとりなそうとする。
「あら!?親戚の娘じゃないの!?」
「えっ?でも香織ちゃんはまだ十八才だぞ」
「変ねえ」
撮り直し!
職員が再び女の子を写す。
「今度は結婚式の写真だあ」
「見せてみせて」
「義姉さんにそっくり!」
「相手は?」
「全く知らない人よ」
パソコンの不具合に違いない!
職員は最後にもう一枚だけ念の為写真を取ると、家族写真が撮れた。
「これ!私だわ!!」
女の子の母親が年をとった自分を指差して言った。鼻の右横に大きなイボがあるのだ。
「じゃあ、こっちは、俺?娘の真由美はどれ?」
「孫を抱いてる人じゃない?」
どえー。
「すみません。本当にどうかしちゃったみたいで」
「この写真、全部買います」
「えっ?」
「この通りになるかどうか比べてみたいんです」
「しかし…」
冷や汗を拭う職員。
「こんなこと滅多にないよねー」
お客さん、滅多にないどころかありえんですよ。
商売なので、写真は売れた。




